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第四話「魔石ガチャ」

 魔石持ちのスライムが四体居たのか、教会の床には小さな魔石が四つ落ちている。半透明の魔石を拾ってマジックバッグに仕舞う。ゴールデンスライムは俺達を仲間だと認識しているのか、スライムから救ってくれた事に対して何度も頭を下げている。


 俺はゴールデンスライムの頭を撫でると、小さな金色の体をした液体状のモンスターは俺を見上げて微笑んだ。仲間になりたいのだろうか、可愛らしい笑みを浮かべてプルプルと震えている。スライムと戦闘時には瞬時に傷を癒やしてくれたし、ゴールデンスライムが仲間になってくれるなら、良い回復役になるに違いない。


「俺達の仲間になるかい?」

「……」


 ゴールデンスライムが楽しそうに何度も頷くと、俺はすべすべした金色の肌を撫でた。瞬間、左手の中指に嵌めている指環が光り始めた。モンスターに反応しているのだろうか。ゴールデンスライムが指環に触れると、指環とゴールデンスライムの体が共鳴するように輝き始めた。


 強い光が視界を奪うと、次の瞬間、俺の目の前には裸体の美少女が居た。何が起こっているんだ……? 金色の髪にエメラルド色の瞳。年齢は十三歳程だろうか、一糸まとわぬ姿の少女は俺を見上げると、満面の笑みを浮かべて俺の体に抱きついた。


「助けてくれてありがとう……」

「え……?」

「ギルベルト。もしかして、その子ってゴールデンスライム?」

「魔力の雰囲気が同じだし、ゴールデンスライムが姿を消した瞬間、この子が現れていた……」

『今のがモンスターの封印だよ。見事迫害されているモンスターを封印してくれたね。その指環は、モンスターの世界では生きづらい種族を保護するために作られたのさ。ギルベルは封印したモンスターの主人として、人間化したモンスターを育てる義務があるんだ』

「義務? モンスターが人間になるなんて聞いてないよ」

『だけど、いい仲間が出来たんじゃないかな? 回復魔法も使えるし、何よりギルベルトの事を気に入っているみたいだし』


 脳内にガチャの声が響くと、ゴールデンスライムが微笑んで俺を見上げた。身長は百五十五センチ程だろうか。豊かな胸が俺の体に触れている。女性経験が無い俺には恥ずかしすぎる……。俺はレザーメイルを脱いで彼女に着せると、彼女は微笑んで俺に頭を下げた。


「仲間にするの?」

「ああ。どうやら俺が養わなければならないらしいんだ」

「どうしてギルベルトが養わなければならないの?」

『迫害されているモンスターを保護する代わりにガチャを使わせる。錬金術師の指環はモンスター保護のために作られたマジックアイテムなんだ。冒険者はガチャを使えて、世界からは迫害されているモンスターが減る。素晴らしい仕組みだろう?』

「確かに。様々なアイテムが出て来るガチャを利用出来るなら、モンスターを数体養っても良いかもしれないね。それに、この子は俺に懐いてみるみたいだし」


 ゴールデンスライムは満面の笑みを浮かべ、俺を抱きしめている。きっと長い間、スライムから虐められていたのだろう。


「俺はギルベルト・カーティスだよ。この子はシャルロッテ・フランツだ」

「私は……。ゴールデンスライム。名前はまだない……」

「それじゃ名前を付けようか。ローラという名前はどうだろうか?」

「ローラ……。いい名前……!」


 ローラは可愛らしい笑みを浮かべて俺を見上げると、シャルロッテが頬を膨らませて俺を見つめた。俺はローラの頭を撫でると、ローラは嬉しそうに微笑んだ。何と愛らしい子だろうか。見た目は人間と良く似ているが、透き通る様な肌に艶のある金色の髪は人間離れした美しさた。頬に触れてみると陶器の様になめらかだ。ゴールデンスライム特有の肌なのだろうか。


「それで、今日はまだ狩りを続けるつもり?」

「勿論。ローラの回復魔法のお陰で怪我も回復したし。スライムを狩りながら魔石を集めよう」

「ローラは何をしたら良いの?」

「ローラは回復魔法を使って俺達を回復してくれるかな?」

「任せて! ギルベルトとシャルロッテはローラが守る!」

「ありがとう。頼りにしているよ」


 俺はローラの頭を撫でると、彼女は可愛らしい笑みを浮かべて頷いた。何だか素敵な仲間が出来て今日は運が良い日だ。魔法都市ヘルゲンに来たのは正解だったみたいだ。一日で仲間が二人も増えるとは。駆け出しの冒険者である俺の仲間になってくれる人間などそう居ないだろう。


 勿論、ローラは人間ではなくゴールデンスライムだが。人間化したローラはどこからどう見ても人間にしか見えないが、彼女の美貌にはどこか美しいモンスターの様な雰囲気を感じる。暫くローラに見とれていると、シャルロッテが俺の服を掴んだ。


「ローラばかり見つめちゃって。ギルベルトは本当にモンスターが好きなのね」

「何だかこの子は特別な気がするんだよ」

『それは人間と共存出来る可能性を持っているモンスターだからだよ。モンスターの大半は人間と敵対していて、人間を襲うだけの害のある生き物だ。しかし、ゴールデンスライムの様に人間に敵意を持たないモンスターも居るんだよ』

「これから俺はそういったモンスターを救えば良いんだね」

『そうだよ。モンスターを救う代わりガチャを回せるという訳さ。そして、モンスターを封印すれば僕自身も強くなれるんだ。モンスターを封印する過程でモンスターの力を授かるんだ』

「ガチャが強くなったらどうなるんだい?」

『単純な事だよ。ガチャのレアカプセルが増えるんだ。魔石を四つ手に入れただろう? 試しに新しくなった僕を試してみてよ』


 指環は優しく輝くと、目の前には正方形の箱が現れた。初めて見た時は古ぼけた金属の箱だったが、今では金属の表面が美しく研磨されており、日差しを反射させて光り輝いている。レバーには宝石が散りばめられており、少しずつだがガチャ自体が豪華になりつつある。


『魔石の持つ力で僕自身が強化されるんだ。さぁ、ここに魔石を入れるんだ。新しいガチャを試してよ!』


 マジックバッグから魔石を四つ取り出すと、シャルロッテとローラが微笑みながら俺を見上げた。二人共ガチャを回したいのだろう。俺は彼女達に魔石を二つずつ渡すと、シャルロッテはモフモフした猫耳を立てて満面の笑みを浮かべた。ローラも美しいがシャルロッテもまた美しい。小さな白猫の様で愛らしいのだ。いつか彼女のモフモフした猫耳に触れてみたい……。


「私が先に回すわね!」


 シャルロッテは小さな魔石をガチャに投入し、レバーを回した。まるで口の様に開いたガチャの下部の穴からは透明なカプセルが出てきた。それからシャルロッテはもう一度魔石を入れ、ガチャを回すと、銀色のカプセルが出てきた。


 透明はノーマルカプセル、銀色がレアカプセルだろうか。ガチャの説明によると、金色のカプセルはスーパーレアカプセル、虹色のカプセルは最上級のレジェンドカプセル。カプセルは全部で四種類なのだとか。マジックバッグは金のカプセルに入っていたから、スーパーレアという訳だ。


 『LV.1 新米冒険者シリーズ』でのスーパーレアの更に上にレジェンドカプセルが存在するという事は、スライムやスケルトンの魔石を集めれば、マジックバッグよりも高価なアイテムを入手出来るという訳だろう。


 シャルロッテがノーマルカプセルを開けると、中からは白い毛の猫耳が出てきた。頭に装着するタイプの猫耳で、ローラが欲しいといったので、俺はローラの頭に猫耳を付けてあげた。新米冒険者シリーズにはぬいぐるみや猫耳の様に、実際の冒険には必要ないアイテムが入っているのだな……。ガチャの説明によると『過酷な冒険に癒やしを与えるため』なのだとか。


 それからシャルロッテが銀のレアカプセルと開くと、大きな白い着ぐるみが出てきた。ホワイトベアの着ぐるみだろうか、このアイテムがいつ冒険の役に立つのだろうか。試しにシャルロッテが着てみると、中は裏起毛になっており、モフモフしていて保温効果が高いのだとか。ガチャの説明によると、ホワイトベアの着ぐるみは冬の野営時に役に立つらしい。


 続いてローラが魔石を投入し、レバーを回すと、虹色に輝く美しいカプセルが地面に落ちた……。

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