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第三十一話「細やかな宴」

 タオル越しでも分かるエリカの豊満な肉体に見とれていると、彼女は恥ずかしそう俯いた。それからタオルを身に付けたまま浴槽に入ると、ローラを俺から引き離して、俺の胸に顔を埋めた。


「ギルベルト。ローラばっかりずるいわ……。私も人間になったのだから、一緒にお風呂に入りたいの」

「だけど……。恥ずかしすぎる……」

「どうして……? ローラは大丈夫なのに私は一緒に入ったらだめなの?」

「そういう訳じゃないけど、ローラは体を洗う意味とか分かってないし……」

「それじゃ私も分からない! ギルベルトに助けて貰った時から、私はギルベルトとずっと一緒に居たいと思った。だけど私はレッサーミノタウロスだから、体が大きいから、人間のギルベルトと一緒にいられないと思ったの……。だけど、指環が私を人間に変えてくれた……!」

「……」

「これからも私の事を守ってくれるのでしょう?」

「勿論だよ。エリカ」

「それならローラばっかり構わないで。少しは私の事も見てよ……!」

「ごめん……。エリカの気持ちに気がつけなくて」


 エリカが目に涙を浮かべて俯いたので、俺はエリカの頭を撫でた。彼女が顔を上げて俺を見つめると、俺はエリカの美貌に胸が高鳴った。モンスター娘とは何と美しいのだろう。艶のある紫色の髪は、どんな人間の髪よりも美しく、ずっと撫でていたくなる感触だ。


 体は俺よりも遥かに引き締まっており、タオル越しでも分かる豊かな胸に目が行く。タオルは水分を吸って彼女の体に纏わりつき、エリカの豊満な肉体をはっきりと浮かび上がらせている。エリカは俺を見上げると、俺の唇に唇を重ねた。


「エリカ……?」

「これが私の気持ち。初めて会った時から好きだったよ。振られたくないから告白はしないわ。これからもずっと一緒に居たいからね」

「ローラも一緒に居る!」


 ローラもエリカの真似をして俺の唇に唇を重ねると、俺は恥ずかしくなって浴槽に潜った。一体何が起こっているのだろうか? 女性経験が無い俺には刺激が強すぎる……。


 浴槽から出ていつも通りローラの体を洗う。彼女の大きな胸を洗う時には、あまりの恥ずかしさに浴室から飛び出したくなるが、それでも放っておけばローラが自分の体を洗う事はないので、何とか興奮を抑えながらローラの肉付きの良い体を洗うのである。


 それからローラの美しい金色の髪を丁寧に洗うと、ローラは楽しそう浴室を出た。エリカと二人きりになった俺は、体を隠しながら体を洗い始めた。エリカを見ない様に目を瞑っていると、俺の背中には大きくて柔らかい何かが当たった。


 振り返ると、エリカが裸で俺を抱き締めていたのだ。レッサーミノタウロスとは随分積極的な種族なのだな。それからエリカはタオルに石けんを付け、俺の背中を洗ってくれた。


 俺が浴室を出ようとすると、エリカは恥ずかしそうに俺を手を掴んだ。


「私の体も洗って頂戴……。どうしてローラにだけ優しいの……?」

「わかったよ……」


 俺は恥ずかしさを堪えながら、ゆっくりとエリカの体を洗った。全身の筋肉が非常に大きく、まるで屈強な戦士の背中を見ている様だ。エリカは幼い頃から戦士達と共に戦いに身を置いていたからか、極限までに筋肉が成長しているのだ。


 浴室を出ると、ローラは楽しそうに石像を作って遊んでいた。今回はシャルロッテを作っている様だ。頭部から猫耳が生えた小さな石像は、シャルロッテの容姿とは遥かにかけ離れており、どこからどう見ても猫にしか見えないのだ。ローラの目にはシャルロッテが猫に見えているのだろうか……。


「これどう? 白猫ちゃん! 可愛いでしょう?」

「うん。良く出来ているよ」

「ギルベルトにあげる!」

「ありがとう。俺はローラが作る石像が好きなんだ」


 俺はローラにお礼を言ってから、バシリウス様とシャルロッテの石像をマジックバッグに仕舞った。それからローラの長い髪を乾かし、ローラに金のローブを着させると、エリカが私の髪も乾かして欲しいと言ったので、俺はエリカの長い髪を乾かし始めた。火の魔力を弱めて放出し、ゆっくりと髪を乾かす。頭部から生える二本の黒い角には光沢があり、角を見ると、エリカが人間では無い事を思い出すのだ。


 頭部から角が生えたエリカがヘルゲンに入れば、人間達はどう思うのだろうか。魔法都市ヘルゲンは魔術師が多く暮らしているからか、魔術師の従魔等が町を歩いている事はあるが、それでも頭部から二本の角が生えた人間はまだ見た事がない。


 ヘルゲンで上手く暮らしていけるだろうか。レッサーミノタウロスとして生きてきたエリカが人間の町で暮らす事になれば、文化の違いに戸惑い、同種族が居ない事に寂しさを感じるかもしれない。俺がエリカを支えなければならないんだ。俺を信じて付いて来てくれているのだからな。


 それに、エリカは自分の意思で人間化した。自分自身がローラの様に人間になりたいと望み、モンスターとしての生き方を捨てて人間になる事を選んだのだ。それは俺と一緒に居たいから。俺はエリカの好意に答える事は出来ないだろうが、それでも彼女に幸せな生活に送って貰える様に努力するつもりだ。


 旅で得たアイテムをヘルゲンで売れば暫くは生活費に困らないだろう。ローラやエリカの服や装備を新調しようか。エリカのための新しい服が必要だ。現在は俺の服を着ているから、胸の部分がかなり窮屈そうだ。


「ギルベルト、私は葡萄酒が飲みたいわ」

「ローラも飲む!」

「ローラはまだ幼いから駄目だよ」

「どうしてローラは葡萄酒を飲んだら駄目なの……?」

「人間は十五歳を迎えないとお酒は飲めないんだ」

「ローラは人間じゃないもん。年齢なんて知らないもん」


 ローラの正確な年齢を知る事は出来ない。スライムは生まれてからの日数を計算する習慣を持っていないからだ。レッサーミノタウロスのエリカは年齢を数えながら生きていたからか、自分の年齢を正確に把握している。


 ローラが飲みたいというのだから、少しだけ飲ませてみても良いか……。ローラは石のゴブレットを作り出すと、目を輝かせてゴブレットを両手で握った。俺はマジックバッグから聖者のゴブレットを取り出し、葡萄酒を作り出してエリカとローラに分けた。


 ローラは恐る恐る葡萄酒を口に含むと、一気に葡萄酒を飲み干してしまった。もしかするとお酒に強い体質なのだろうか? ローラが野草や昆虫等を食べてお腹を下した事は無い。ゴールデンスライムのローラは人間とは異なる消化能力を持っているのだろう。


 食事量もラルフやバシリウス様よりも多かった。大量の食事を摂取しても、すぐにお腹を空かせるのだ。その割には体には無駄な脂肪は殆ど無い。一体どういう体質をしているのだろうか。


 俺はもう一度ローラのゴブレットに葡萄酒を注ぐと、ローラはまたしても葡萄酒を一気に飲み干した。それから俺はローラに葡萄酒を注ぎ続け、ローラは十五杯もの葡萄酒を飲んだ。これだけ飲んでも頬が少し赤く染まるだけで、全くお酒に酔っている様子は無い。


 俺とエリカはローラの酒豪ぶりに驚きながらも、魔法都市でのこれからの生活を語り合った。エリカは十八年間洞窟で暮らしていたから、人間の町で買い物をしたり石畳や木造の建物を見るのは楽しみだと言った。


 それからローラは五杯葡萄酒をお代わりすると、少しだけ酔いが回ったのか、可愛らしく俺の膝の上に座り、パンを食べたいとねだった。俺は聖者の袋を開けて聖者グレゴリウス様からパンを頂き、ローラに渡した。


 ローラは葡萄酒を二十杯飲んでいるにも拘らず、次々とパンを食べ、何度もお代わりをねだったので、グレゴリウス様は一度に大量のパンを分けてくれた。ローラはグレゴリウス様に何かお礼がしたいと言ったので、俺は石像が良いのではないかと提案した。ローラはグレゴリウス様のために白猫の石像を作ると、グレゴリウス様はローラの贈り物を大いに喜んだ。


 俺達は深夜までお酒を飲み、これからの生活についてあれこれ想像を膨らませながら語り合うと、ローラが疲れて眠ってしまったので、宴はお開きにする事にした。部屋の隅にある石のベッドにローラを寝かせて毛布をかけると、俺はいつも通りローラの隣に横になった。エリカは恥ずかしそうにゆっくりと俺達のベッドに入ると、俺の腕を抱きしめた。腕には彼女の豊かな胸が触れている。なんと大きくて柔らかいのだろうか。


 今日は興奮して眠れそうにないな……。暫く目を瞑っていると、ローラは寝ぼけて俺の顔を抱きしめた。俺の顔にはローラの豊かな胸が触れており、流石に恥ずかしかったのでローラを引き離して目を瞑った。


 浴室で見たエリカとローラの裸体を想像しない様に、思考を切り替える事にした。頭の中でバシリウス様の戦い方を何度も再現し、彼との激しい訓練を思い出す。俺も今回の旅で少しは強くなれたのだろうか。


 早くヘルゲンに戻り、シャルロッテと合流したい。それからレッサーミノタウロスとバシリウス様のために土地を提供してくれたヴェロニカ様や、旅支度を手伝ってくれたアンネさんにお礼を言わなければならないな。


 魔法都市での新たな生活を想像していると、俺はいつの間にか眠りに落ちていた……。 

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