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第二十七話「ガチャの可能性」

 ローラの神聖な魔力が天地創造の杖の力を引き出しているのか、ローラが持つ杖は金色の光を纏っており、ローラが杖を地面に向けて魔力を放出すると、森が一斉に成長を始めた。背の低い木は瞬く間に伸び、枯れた草は青々と生命力溢れる姿に成長した。


「ローラの性質に合った杖だからだろうか、天地創造の杖はローラを持ち主だと認めているのだろうな」

「まるで森が生まれ変わったみたいですね」

「ギルベルト、この杖が力を貸してくれるみたい」

「ローラはその杖でこれから何をしたいと思う?」

「ローラはギルベルトを助ける冒険者になるの。それから皆を守れる力が欲しい!」


 ローラが宣言すると、杖はローラの考えに従う様に優しく輝き出した。杖の魔力がローラの体に流れると、ローラの体からは普段とは異なる魔力を感じる事に気がついた。ギルドカードを見て確認してみようか。


『LV.10 冒険者 ギルベルト・カーティス』

属性:【火】

魔法:ファイア

装備:錬金術師の指環 守護の指環 守護の指環 騎士のガントレット 鋼鉄のライトメイル ブロードソード 鉄の玉 マジックバッグ

加護:ベルギウスの加護(魔石ガチャ・モンスター封印) バシリウスの加護(火・雷属性魔法習得速度上昇)

効果:物理防御力上昇 力上昇


『LV.22 創造の魔術師 ローラ』

属性:【聖】【地】

魔法:ホーリー ヒール キュア リジェネレーション アース ストーン

装備:天地創造の杖 金のローブ レザーブーツ 猫耳

効果:聖・地属性魔法効果上昇


『LV.65 戦士 バシリウス』

属性:【火】【雷】

魔法:ファイア ファイアボール エンチャント・ファイア サンダー サンダーボルト エンチャント・サンダー

装備:ランス ラウンドシールド


 アイテムを装備した状態でギルドカードを確認すれば、アイテムの名称を知る事が出来るのか。どうやら鋼鉄製のガントレットは騎士のガントレットという名前だったらしい。そして、ローラの職業も変わっている。創造の魔術師か。ギルドカードがローラの力を感じ取り、カードの内容を書き換えたのだろう。


 新たにリジェネレーションとアース、ストーンの魔法を習得した様だ。きっと天地創造の杖がローラに魔法を与えたのだろう。リジェネレーションは対象を持続的に回復させる魔法。アースは土を作り出し、ストーンは石を作り出す魔法だ。


 それから、バシリウス様のステータスが俺のギルドカードに追加されている。バシリウス様が俺の召喚獣になったからだろう。彼はレベル六十五だったのか。道理で驚異的な強さを持っている訳だ。


 マジックアイテムの効果により、新たな属性や魔法を習得出来るという事を知れたのは最高の収穫だ。幻獣クラスの魔石を入手出来れば、新たな魔法や属性を習得し、一気に冒険者として強くなれる可能性がある。


「ギルベルト。もう暫く宴を楽しんだら仮眠を取り、移動を再開しよう」

「はい、バシリウス様」


 それから俺は手に入れた魔石を全てアイテムに変える事にした。魔石ガチャとは天地創造の杖の様な非常に価値のあるマジックアイテムを作り出す事も出来るのか。現在所持している魔石は、ケンタウロスロードの魔石、ケンタウロスの魔石が十五個、レッサーミノタウロスの魔石が三個。それからゴブリンの魔石が十五個だ。


 レッサーミノタウロスの魔石ではレベルの新米鍛冶師シリーズを回す事が出来る。まずはレッサーミノタウロスの魔石を使用してガチャを回す事にした。ローラがガチャを回したいとねだったので、俺は魔石を渡してローラに回して貰う事にした。


 ローラがガチャを三回回すと、全てノーマルカプセルが出た。カプセルの中身は、ライトメイルとグラディウス、それから三十センチ程の木製の杖が一本。


 変形しきっていた鋼鉄のライトメイルを脱ぎ、新品のライトメイルを装備した。それから予備の武器としてグラディウスを腰に差した。木製の杖をギルドカードで確認してみると、ムーンロッドという名前のアイテムだった。ヘルゲンに戻ったらシャルロッテに杖を贈る事にしよう。


 それからゴブリンの魔石を全て使用してガチャを回した。守護の指環が二つ、ホワイトベアの着ぐるみが一着。 ガーゴイル人形が三つ。スケルトンの置物が四つ。 ホワイトベアのぬいぐるみの二つ。猫耳が二つ出た。最後に金色に輝くスーパーレアカプセルが出た。カプセルの中身はマジックバッグだったので、俺は大切に仕舞っておく事にした。


 守護の指環はローラに装備させる事にした。少しでもローラの防御力が上がれば、安全の旅が出来るからだ。ローラは白銀製の二つの指環を左手の中指に嵌めると、初めて宝飾品を身に付けたからか、満面の笑みを浮かべて俺に抱きついた。俺はローラの頭を撫でると、そんな様子を見ていたエリカは寂しそうに俯いた。


 エリカは森での移動の最中でも常に俺達の傍に居てくれる。ゴブリンやスケルトンが俺達に近づけば、棍棒の強烈な一撃を放って敵を駆逐してくれる。特に会話をする事はなく、彼女は恥ずかしがり屋なのか、俺が話しかけてもすぐにバシリウス様の後ろに隠れてしまう。


『おやおや。ギルベルトはエリカの事も気になるのかな?』

「わざわざ念話で話さなくても良いよ」

『ガチャにはギルベルトの考えなんてお見通しなんだからね』


 俺はガチャの声を無視して、ケンタウロスロードの魔石を投入すると、ガチャの体には光の文字が浮かんだ。『LV.4 中級鍛冶師シリーズ』と表示されている。レベル3を飛ばしてレベル4のガチャを回す事が出来るのか。ケンタウロスロードの魔石が持つ力が強いからだろう。


 早速レバーを回してみると、金色に輝くスーパーレアカプセルが飛び出した。今日は何と運が良いのだろうか。すぐにカプセルを開けると、中からは何の変哲もない羽衣が現れた。白い糸から出来た羽衣を纏うと、俺は次の瞬間、まるで背が縮んだ様に視線が低くなった。


「何が起こっているんだ? ギルベルトはどこだ?」

「バシリウス様。ギルベルトならここだよ」

「馬鹿な……。ギルベルトは変化の魔法を使用したのか? どこからどう見てもガーゴイルにしか見えないのだが」

「これはガーゴイルの羽衣。羽衣を纏うとガーゴイルに変化出来るのさ。変化を終えたいと心で思えば人間に戻る事が出来るからね」


 俺は何が何だか分からずに心で人間に戻りたいと願うと、次の瞬間、いつもの自分の体に戻っていた。自在にガーゴイルに変化出来る羽衣か。ガーゴイルの羽衣があれば、ヘルゲンまで戻る時間を大幅に短縮出来るな。ガーゴイルになった状態でローラを抱いて空を飛べば良いのだから。


 試しにラルフがガーゴイルの羽衣を纏うと、次の瞬間、体長三メートルを超える巨大なガーゴイルが現れた。通常のガーゴイルは体長五十センチ程だが、巨体のラルフが羽衣を使用したからだろうか、現実ではあり得ない大きさのガーゴイルが生まれたのだ。


 ガーゴイルになったラルフは楽しそうに空を飛ぶと、暫く上空を旋回してから地上に着地した。ラルフは羽衣の力を解除してレッサーミノタウロスに戻ると、興奮した面持ちで羽衣を渡してくれた。


「これは素晴らしいマジックアイテムだな。まさか俺が空を飛ぶ事になるとは……」

「魔石ガチャとは誠に不思議なものだな。变化の効果を持つマジックアイテムをも作り出して仕舞うのだからな」

「そうですね。無限の可能性を秘めているのだと思います」


 俺はガーゴイルの羽衣やガチャで得たアイテムをマジックアイテムに仕舞うと、次にケンタウロスの魔石を使用してガチャを回す事にした……。

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