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第二十四話「因縁」

 バシリウス様に体を揺すられて俺とローラはすぐに目を覚ました。辺りにはまるで高速で森を駆ける生き物の足音がしており、足音は次第に俺達に近づいて来ている。


「これからケンタウロスとの戦いが始まる。奴等は常に俺達の命を狙う宿敵なのだ」

「ケンタウロスですか……」

「うむ。下半身が馬で上半身は人間の様な見た目をしておる。執拗に俺達を襲い、森に住む者を排除しようとする悪質な連中だ。ギルベルトとローラは安全な場所で隠れているが良い。これは俺達の戦いなのだからな」

「水臭い事を言わないで下さい。俺とローラは既に皆さんの仲間だと思っているのですから」

「そうか! それならギルベルトの戦い方を拝見させて貰うとしよう」


 レッサーミノタウロスの戦士達がロングボウを構え、高速で駆けるケンタウロスに注意しながら森を見つめている。三十人程の戦士達が円形に並び、中央に女子供を配置して陣形を組んでいる。


 バシリウス様は巨大なラウンドシールドを左手で構え、ランスを右手で握り締めている。不意に敵が現れたとしても、バシリウス様の巨大なランスが敵を貫くだろう。俺はローラを円の中心で待機させ、鉄の玉を持ってバシリウス様の隣に立った。


 ラルフとエリカは棍棒を持って周囲を見渡している。次第にケンタウロスの気配が強くなった瞬間、森の奥から無数の槍が飛んで来た。バシリウス様は瞬時に反応し、ラウンドシールドで槍を弾いた。


 まるで動く壁の様な巨大なラウンドシールドが槍を吹き飛ばしたが、全ての槍を防ぐ事は出来なかった。バシリウス様が防御しきれなかった三本の槍が一撃で戦士達の心臓を貫いた。ローラは瞬時に回復魔法を唱えたが、既に事切れた戦士達を蘇らせる事は出来なかった……。


 俺は仲間を失った悲しみを感じながらも、次第に怒りが湧いてきた。どうして俺はバシリウス様の様に反応出来なかったのだろう。ケンタウロスの槍は三メートル程で、人間の俺には到底防ぐ事も出来ないほど巨大な物だが、きっと槍を防ぐ方法も世の中には存在するのだろう。


 ヴェロニカ様なら氷の壁を作り出し、仲間を守ったに違いない。俺が防御魔法を覚えていたら、三人の戦士を守る事だって出来たかもしれない。


「狼狽えるな! すぐに反撃をしろ!」


 バシリウス様が叫ぶと、ロングボウを構えた戦士達が一斉に矢を放った。敵の正確な居場所は分からないが、槍が飛んで来た方向に次々と矢が放たれると、森の奥でケンタウロスの悲鳴が聞こえた。


 それからすぐに棍棒を構えたケンタウロスの集団が戦士達の前に姿を現した。体はレッサーミノタウロスよりも若干小さいが、下半身が馬だからか、非常に機動性は高く、周囲を周りながら棍棒を構え、俺達の出方を伺っている様だ。


 俺はレッサーミノタウロスを殺された恨みを晴らすべく、鉄の玉を全力で投げた。ケンタウロスは得意げな表情を浮かべて瞬時に玉を回避し、俺を馬鹿にする様に笑い出すと、鉄の玉が遥か彼方で方向を変えた。


 仲間達とは移動の間にお互いの戦い方を説明し合ったからか、戦士達は鉄の玉を見つめながら笑みを浮かべている。ケンタウロスが憤慨して棍棒を振り上げた瞬間、ケンタウロスの背中には鉄の玉の強烈な一撃が当たった。


 ケンタウロスが背後からの攻撃に狼狽した瞬間、俺は左手に炎を作り上げ、全力で炎の塊を飛ばした。ケンタウロスは火を恐れて瞬時に後退した時、俺はブロードソードを抜いて切りかかった。背の低い人間の俺が必死にブロードソードで攻撃を仕掛けても、高速で森を駆けるケンタウロスを捉える事は出来なかった。体の大きさが違うから、胴体に攻撃が届かないのだ。


 ラルフは棍棒でケンタウロスの頭部を殴りつけ、バシリウス様はラウンドシールドで仲間達を守りながら、六メートルを超える巨大なランスでケンタウロスに強烈な突きを放った。


 バシリウス様の突きは木々をなぎ倒し、得意顔で森を駆ける一体のケンタウロスの胴体を捉えた。ランスの一撃を受けたケンタウロスが命を落とすと、仲間のケンタウロスはバシリウス様を取り囲んで次々と棍棒の攻撃を放った。


 ケンタウロスは執拗にバシリウス様を狙ったが、彼の巨大なラウンドシールドを前にして、ケンタウロスは攻撃を躊躇した、瞬間、丸太の様に太く、先端が非常に鋭利なランスがケンタウロスの心臓を貫いた。何と精密で力強い攻撃なのだろうか。


 俺はバシリウス様の邪魔にならない様に、ファイアの魔法を駆使して、ケンタウロスを退けた。ローラは鉄の玉を使ってケンタウロスに着実にダメージを与え、戦士が傷を終えば瞬時にヒールの魔法で回復をした。戦士達は即死しなければローラの魔法によって傷が一瞬で癒える事を知ったのか、敵からの攻撃を恐れずに、勇敢に棍棒を振り回してケンタウロスを殴りつけた。


 ローラは周囲を見渡しながら、援護が必要な仲間には鉄の玉で遠距離から援護し、仲間が怪我を負えば、ヒールの魔法を唱えて仲間を癒やした。もはやパーティーの運命はローラが握っているといっても過言ではない。ローラは右手に持った鉄の玉を投げ、左手で聖属性の魔法を放出して次々と仲間を回復しているのだ。


 ローラの驚異的な回復魔法があるからか、ケンタウロスがレッサーミノタウロスに深手を負わせても、戦士達は命を落とす事は無かった。


 俺とバシリウス様のコンビネーションは完璧だった。俺が炎を使ってケンタウロスを退けた瞬間、バシリウス様の巨大なランスが敵を貫く。敵が攻撃を仕掛ければ、バシリウス様がラウンドシールドで攻撃を弾き、ラルフかエリカが棍棒の強烈な一撃をケンタウロスの頭部に放った。


 ブロードソードはケンタウロス相手に戦うにはあまりにも短い。しかし、鉄の玉をローラ渡しているから、俺はこの剣でどうにかケンタウロスにダメージを与えなければならない……。何かブロードソードを活かす方法はないかと考えた時、俺は名案を思いついた。木に登ってから、ケンタウロスの背中に飛び乗り、敵に密着した状態で斬りつければ良いのだと。


 敵の背中に着地出来なければ、その時は地面に落下して大怪我を負うだろうが、今は怪我を恐れながら戦っていられる状態ではない。ケンタウロスの数はレッサーミノタウロスの戦士の数よりも遥かに多いのだが。俺が戦力になれたら、より多くの仲間を救う事が出来るのだ。


 俺はすぐに木をよじ登った。幼い頃から森に入り、自然の中で遊んでいた俺には木を登る事など容易い。森を駆けるケンタウロスの中から、俺が待機する木に最も近い者の背中に飛び乗ろう。


 俺は自分の真下に立派なヘルムを被ったケンタウロスを見つけたので、瞬時にブロードソードを引き抜いて飛び降りた。ケンタウロスの大きな背中に着地するや否や、俺はブロードソードを敵の背中に深々を突き立てた。


 ケンタウロスは突然の攻撃に戸惑いながらも、俺を振り下ろすために高速で森を駆けた。俺はブロードソードの柄を握り、何とか振り落とされない様に耐えている。握力が限界を迎えそうになったが、ガントレットの持つ力によって俺の筋力は上昇しているからだろうか、ケンタウロスがどれだけ俺を振り落とそうとしても、俺はブロードソードを放す事は無かった。


 右手でブロードソードを握りながら、左手を敵の後頭部に向けて炎を放出する。


『ファイア!』


 全身から魔力を掻き集め、一撃で敵を殺す勢いで炎を放つと、ケンタウロスの後頭部が焼け、背後からの攻撃に狼狽したケンタウロスは目の前の木に激突した。俺は激突の瞬間にブロードソードから手を放してしまい、体は宙を舞った。


 このまま地面に激突すれば、ローラの回復も間に合わず、一撃で命を落とすだろう。何と短い人生だったのだろうか。だが、俺はただ死の瞬間を待つつもりはない。最後の一撃を放って敵に少しでもダメージを与えてやる。


 両手をケンタウロスに向け、生命を燃やして全ての魔力を放出した。爆発的な炎が両手から飛び出すと、ケンタウロスの体は轟音を立てて一気に燃え上がった。俺は全身の力を失い、地面に向けて真っ逆さまに落ちた。仲間を守りながら死ねるのなら、冒険者として最高の最期だろう……。


 瞬間、一体のレッサーミノタウロスが俺の体を地面ギリギリの場所で掴んだ。巨大な手が開くと、そこには笑みを浮かべたエリカが居た。助かったのか……。流石に今回は死んだと思ったが、エリカが咄嗟に反応してくれたから、俺は死なずに済んだのだ。


 全身が炎に包まれたケンタウロスが命を落とすと、残るケンタウロスはすぐに撤退を始めた……。

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