終章 : 透き通るほどの碧い空
克明に過ぎる季節と共に、散っていく淡い白い花。
言葉と共に重ねた手。
あれ程似てると思った君が、其の中で融けることはなかった。
――――――『逝こう、一緒に。何処までも』
其の手を取った彼の日から、また、少しだけ時と季節は移り変わって。
僕はまた、こうしてひとりで風を見ている。
散り逝く桜、流れ行く水。
儚く映るひとつひとつに、君が、自然と重なっていく。
世界に逆らい続けた僕に、またひとつ、罰でも与えたつもりだろうか。
否応無しに与えられた、追悼の為の多大な時に。吐き気が絶えることは無かった。
唯一無二の願望の、達成を強く噛み締めた時。
変化は万に一つも無いと、只、其れだけが脳裏の中に刻まれた。
幻のような景色の中で、今はただ、佇む中で過ぎる時。
失くしていた此の虚無感を、何処か懐かしく考えながら。
+ + + +
――――――あの人と同じ場所に行きたい。
きっと君は、そう願っただろう。
考えるまでも無かったから、彼女は彼の隣に埋めた。
葬儀、なんてものは挙げずに、ただ僕だけが十字を切って。
永遠になるかも分からない、きっと永遠になるのであろう、幾度目かの別れを告げた。
『御免。約束、守れなかった』
与えてやれない墓標の代わり、白い風車を突き刺して。
目に入った“彼”に笑い掛ける。
からからと。虚しく回った風車。
―――――赦されてしまったような気がした。
あの、皮肉めいた微笑みで。“此方の方が辛いだろう”と。
――――――嗚呼、辛いよ。………だから、
「今度は、殺して呉れればいい」
――――――出来るなら、二度と再び出会わぬうちに。
声は虚空に吸い込まれて、
帰って来た此の虚無の土地。
今はもう。
手を延ばす先には何も無い。
−Fin−




