皇帝の精霊 共通①
夜い夜の街、人気の無い歩道には鈴の音だけが存在した。
「化物だ化物に違いねえ!!」
関所の門番はその場から逃げ出した。
その場に誰もいないのに、開いた門が閉じられた。
程無くして夜は開ける。
■
「はあ……きっとここならあの人に会える」
私はある人を探しながら一年で7つの国をめぐり、次で最後となった。
皇帝が統治するチャイカという国は元いたワコクと交流が深い。
「あれはチャイカ人の衣装かしら?こんな朝に珍しいなあ……」
すぐ目の前に荷物を抱えた女が道を歩いていた。薄い笠とほっかむりのようなものをして台車をつかっている。
しかしインダでもアラビンでもない衣服からおそらくは里帰りかなにかだろう。
「うおっ」
私は通りがかりの男にぶつかるが、奴はケントウ違いの方向を見た。
「おいおいぶつかりやがって謝りもしねーのか!!」
さっきの女が私の代わりにぶつかったと疑われてしまった。
――私の姿は普通の人間には見えない。
だが姿は視覚に無くても、気配とぶつかったという感覚は与えてしまうのである。
「きゃああ!!」
ナラズ者の拳が女に迫る。
「か弱い女人たちへ手を上げるとは、男の風上にもおけんやつだ!」
黒髪の男がナラズ者をのした。
「怪我はないか?」
「ありがとうございました!」
女は礼をいって去った。
「……貴方私が見えるの?」
「は?」