∬中央の守護者 共通①
「いたか!?」
「いません!」
早朝の人気が少ない時刻、男達は息を切らせながら必死に駆け回る。
高官の一人娘が失踪した事が、今朝判明したからだ。
「お嬢サマにも困ったもんだ。もうすぐ豪商と祝言だってのに……」
「相手が相手だからなあ。ともかく見つからなきゃ俺たちが困る」
――――男達は捜索を再開した。
「ふう……もう行ったみたいだな」
「そうね兄様」
消えた高官の娘は彼等が話している近くで従兄と身を潜めていたのである。
「早くワコク領の門を潜らなければ……」
幼い頃に許嫁となった豪商は80才で、彼女の従兄であるレーセは釣り合う身分の高官の息子である為結婚を考えた。
しかしこのチャイカ国領では従兄は結婚出来ない。
そのために従兄婚、貴族は兄妹でも結婚可能のワコクへの亡命を図るのだ。
「レーセ兄様」
娘は足を止め、思い詰めた顔をした。
「なんだ?」
「巻き込んでごめんなさい」
「オレ様が逃げるついでだ。お前は気にするな」
「わざわざ足の遅い私をつれて?」
「第一高官なんざガラじゃねえからな」
レーセは笑い飛ばし、手を差し出す。
「見つけたぞ!!」
「ちっ!!」
二人は使いに見つかり、追いかけられて逃亡を図る。
「おい、こちらへ来い」
見慣れない装束の男が、ミノタウルスの乗り物から二人に声をかけ保護する。
「危ないところをありがとうございました」
「気にするな、我も似たような立場だ」
どうやら彼も追われる身らしい。
「駆け落ちか?」
「まあそんなところだ。アンタは見たところ異国者らしいがこの荒れた領地に観光か?」
チャイカ領地は長らく皇や守護者が不在。当地する者もまともに働かない。
貧富の差が激しく、この貴族層から外は荒れているのだ。
「目的がある故に、従妹との婚姻から逃亡してきたのだ」
なんとも皮肉な話である。
「目的?」
「いや、ワコクの三種の神器だ」
三種の神器と言われてもあまりピンとこない。
「なぜワコクのすごいアイテムがチャイカに?」
「盗まれてな。各地を周り、最後がここだった」
エスカラルヴァ剣、マーガタァマ、カガーミィというらしい。
「なんでそんな世界をゆるがしかねない情報を知り合って間もないオレ達に?」
「今はひとつも持ってないからに決まっておろう。情報を流して誰かが見つければ捜索も楽だからな」
つまりは私たちに噂を流させている?
「ここで会ったのも何かの縁だ。我の名は氏神鷹弥である」
「私は圭日よ」
「レーセ・ラチェンだ」