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015日本に来て二日目の朝

「ユーリ」


 呼ばれて、目覚める。アナスタシアかよ、おはよう。


「おはよう、ユーリ。ナギちゃんもさっき起きたから起こしに来るかも。だらしない顔なんとかしなきゃ!」


 ああ、そうか。ここ日本か。ちょっと違う日本だけど。懐かしいような違うような複雑な気持ちを胸に、頭をリセットする。


 てか出てくんなアナスタシア。昨日も勝手に声かけてきただろ。やめろっつっただろ。


「はーい」


 拗ねたような返事で姿を消すアナスタシア。この不思議存在さえいなければ、異世界転移とか巻き込まれずに済んだのかも知れない。


 ほら。不思議が不思議を呼ぶことってあるじゃん。俺のコレは医学的には幻聴、幻視らしいけどな。


 ひょっとしたら異世界なら原因とか、この現象自体を説明できる奴もいるかも、とは思ったが、誰からも反応はないし、そもそもそれどころでもなかった。


 この日本なら、わかる奴もいるかもな。多分、異世界転移の鍵もこいつが握っている気がする。


「ち、違うよぉ!」


 本人はそう言うが。てか出て来るなって。


 ユーリにあてがわれた部屋は、衣装部屋だったらしい。所狭しと並んでいた衣装は闇のメイドにして病みのメイド、柏ミネが片付けた。


 ユーリの寝ていた簡易ベッドは、元々ミネが使っていたが、硬くて寝られないという理由で使われなくなった。マット引けば心地よいのに贅沢なメイドである。


「コンコン、おはようー」


「ノックしろ、口で言うなよ」


 ガチャリと扉を開くナギに言い放つ。


「両手塞がってて」


 見ると両手に包丁とタマネギが握られている。


「置いてこいよ」


「目が覚めてないようだったら使おうと思って」


「……タマネギで目覚めるのか?聞いたことないけど」


「私もないけど、タマネギの汁を目の下あたりに塗るのが、古来より伝わるエルフの方法だってミネが」


「騙されるな。多分嘘だ。てかあのメイドエルフは俺に恨みでもあるのか?」


「まあ起きてるならいいよ。ご飯できたから」


「ナギちゃん、昨日は遅くまで勉強してたのに朝ご飯まで作るなんて、ヒロイン昇格間違いなしだよね」


 さらっとスルーするナギ。突然口を挟むアナスタシアの方は無視してナギについて部屋を出る。


 パンとスープとサラダが並ぶ食卓。実に健康的な食事だ。パンと干し肉とクズ野菜の煮汁で旅をしていた身にはご馳走である。


「悪いな。次の朝ご飯、俺も手伝うから」


「いーよ、適当料理だからすぐ出来ちゃうし……ユーリは料理出来るの?」


「魔物の料理ならよく作ってたよ。血抜きして捌いて内臓取って特製の味噌を……」


「……こ、今度ね」


「……ゆー何某が……食事前にグロ話題……許さない……」


「俺の特製異世界料理が何故グロ話題だ!?」


 先に席についている失礼なメイドをひと睨みして、ユーリも着席する。


「まあまあ、じゃあ頂きましょう」


「いただきます」


「……いただき……ます……」


 柔らかいパンと新鮮な野菜に感動しながら食事を平らげる。


「ナギ、料理うまいな」


「や、そんなことはないよ。簡単手抜き料理だから」


「そうか?……あ、そういや、今日は学校は?」


 ネットの情報では、国立第一魔術学院だかに通っていると書いてあったので聞いてみる。


「今日は日曜だよ?」


「……穀潰しは……日付の感覚が……ないって噂は……本当だった……」


「この世界に呼ばれて二日目でわからなかったんだよ!」


「今日は訓練と仕事だよ」


「ほー……」


「ほーじゃないよ。ユーリも参加するんだから」


「え?俺も?」


「ユーリも《メダリオン》の二軍なんだから訓練と仕事は毎日あるよ!」


「おおう……時間に縛られるとか超久しぶりだな……」


「……惰眠を貪る……穀潰し……やはり昨日のうちに……始末しておけば……」


 怖い怖い怖い怖い……。


「冗談だよ。頑張るよ。睨むなよ……」


 ミネの呟きに屈するユーリだった。

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