海を渡って
大きな欠伸をして燈は時計を確認した。到着予定時刻まであと2時間もある。
もう6時間以上座わりっぱなしだ。想像はしてたけど空の旅はなかなか退屈だ。
今は早朝の4時。結局一睡もできなかった。夜中に日本を出国してからずっと眠かったし寝るつもりだったのだ。
でも寝ようとすると首が痛くなるので熟睡する事は叶わなかった。
座ったまま寝るのには向いてないらしい。叔父さんの家に着いたら速攻で寝ようと決意を固めた。
事の発端は叔父さんからのメールだった。
私が大学で英語を専攻してるので夏休みを利用してこっちに勉強兼遊びに来ないかというものだった。
両親からの後押しもあり、私は1ヶ月間オーストラリアに行くことにしたのだった。
最初は飛行機に1人で乗るのが不安すぎてちょっと行くのを躊躇ったけど、この機会を逃したら次いつ行けるかわからないのでやっぱり行くことにしたのだった。
「やっとついた〜。」
長かったなぁ。帰りのことを考えると憂鬱である。なんて今から帰りのことを考えても仕方ない。
スーツケースを受け取って叔父さんとの集合場所まで行くとなんだか叔父らしき人物を見つけた。
が、隣にものすごくグラマラスな金髪美女がいる。あれが叔父さんなわけがない。
スッと目をそらそうとした時、目が合ってしまった。
「あーかりー!」
やっぱり叔父さんだった。私の知ってる叔父さんから更にチャラさ加減が倍増したような気がする。こんなはっちゃけた人だったっけ?最後にあったのが五年くらい前だかなぁ。五年まあれば変わっちゃうよね。
叔父さんがすごい勢いで走ってくるのを見て反射的に逃げたくなるのを踏みとどまった。
「会いたかったよ〜!元気にしてたか〜?」
と言うとあろうことか私の頬にキスをした。
この人完全にかぶれてるな。外国かぶれだ。
キスは日本人には適用されないと思う。ちょっと気持ち悪いんですけど。
私はそっとハンカチで頬を拭いた。
「久しぶり。ともくん。」
ちなみにこの呼び方は、昔強制された。おじさんと呼ばれると老けたように感じるから嫌なのだそうだ。ぶっちゃけどうでもいい。それより
「あの女の人ほっといていいの?彼女じゃないの?」
「え?誰のこと?俺今彼女いないけど。」
「さっき一緒にいたでしょ?ほら!今もこっち見てるよ。あの金髪の綺麗な人。」
「あー、さっきナンパしてきた人か。もう断ったから平気平気。それよりも、帰るぞー。疲れてるんじゃないのか?」
ナンパか〜い。空港でナンパかい。お姉さん。そしてあんな綺麗な人にナンパされて平然としてる叔父さんもちょっとムカつくなぁ。あ、ちなみに私が心の中で叔父さんって言ってる事は内緒だからね!バレたら海に沈められそう。
セクシー金髪美女にぺこりと頭を下げて叔父さんのあとを追った。
そんなこんなで私は叔父さんの家に着くと何も考えずに眠りを貪るのだった。