【1-3】能力の目覚め【third stage】
俺は昔、仲の良かった親友――とまでは言えないが、そいつにこう言われたことがある。
「お前ってさ、ゲームとか大好きじゃん?もしも実際にゲームの中の物が現れたらお前、どうする?」
――俺はこう答えた。
「…ははっ、そんなの、決まってるだろ?俺はそんなことが起きたら、確実に『困る』自信があるぜ」
そう、俺は困っていた。
そりゃぁ確かに念願の『プロミネンスソード』が手に入ったよ。
三次元でな!
でも、ゲーム内で欲しかったなぁ!
「――あぁ、なんだ、夢か。そうだ夢か」
机の角に頭を打ち付けてみた。
いたっ。
「……はぁ」
俺は確かに起きていた。
星が綺麗だなぁ。ははっ。
悟りか何かを開いた俺は、ちょっと剣を眺めてみるために、顔を剣に近づけた。
例の剣は、焦げ茶色の革で頑丈そうに作られた鞘に包まれている。
恐る恐る柄を手にとって、鞘に手をかけ、ゆっくりと引きぬいてみた。鞘は案外簡単に抜け、中から深く茜色に光る刀身が出てきた。
『プロミネンスソード』は、その名の通り太陽のプロミネンスの如く炎を纏い、高熱を帯びる上位クラスの宝剣類だ。もともとの攻撃力の高さと、付属した炎属性の高さ故に、この剣を欲する者も多い。俺もそのひとりだ。
そして、惹かれたのは強いだけではない。
片手で使う用の剣らしく、軽めに設計され、両刃で輝く刀身の先端は後半に掛けて急に収縮している。鍔は楕円形の焦げた緋色をしていて、刀身と鍔には、故意に炎を纏わせることができるため、特に鍔は控えめにくっついている。ちなみに今は何も纏っていない。
この剣の面白いところは、剣として接近戦で使用するだけでなく、剣に纏った炎を球状にして炎弾にして、魔法杖のような使い方もできるということだ。
剣を手にとってジロジロ見ていると、急に頭が痛み出した。
その痛みは段々と加速していった。
「――うっ……?何……だ……これ……ッ!」
これは……既視…感…?そんなわけあるか……ッ!
剣を投げ落とし、床にガクンと座り込む。
頭痛。頭痛、頭痛――。鋭い痛みが頭の奥を襲う。
それから数分。やっと痛みが引いてきたところで、ようやく冷静になれることができた。
「なんだったんだ……」
とりあえず状況の整理。一度に色々起こりすぎ。
一に、俺はこのゲームをプレイしていた。
ニに、いきなりテレビ画面が光った。
三、ゲーム内の架空の剣である『プロミネンスソード』が突如テレビから出てきた―――って最後明らかにおかしい!おかしいよ!
「もうわけがわからない……」
もうどうでもいい。どうとでもなれ。どうにかなる。
ほっぽった剣はそのままに、俺はベッドに倒れるようにして寝た。
すぐに眠気はやってきた。