【3-2】私はリムだよー♪【脱走の理由】
ふぅ、やっと投稿
―――俺は廊下を走っていた。
「……なんでアイツのために……」
『それはお前が……』
頭のどこかでそう声が聞こえた気がしたが、無視して走り続けた。
「お、衿!」
廊下の端の階段近くで衿を見つけた俺はすぐさま駆け寄って、事情を説明した。
「―――おっけー、じゃぁ二手に分かれよっか」
「あぁ、見つけたら連絡してくれ」
――――――――――――――――――――――
廊下、階段、教室、職員室辺り、玄関周り。
結構な場所を探しまわったが、リムらしき人影は見つけることが出来なかった。
昼休みの時間はもう半分くらい過ぎてしまっただろうか。
もう校舎内にはいない、と判断した俺は外へ出て探すことを決めた。
グラウンドはまずない。木々の影や正面玄関の周辺などを探したが、まだ見つからなかった。
「あと探してないところは……。―――っと」
校舎裏。
掃除も手入れも何もされていない、雑草が生い茂る無法地帯。
通常はガラの悪い連中がたむろしたりするだけの場所で、二組のベンチがある以外用も物もないようなところだ、だが。
居た。
ベンチに青く透き通った髪を靡かせている、ヤツが。
「おいこら、リム。何してんだよお前、ここ学校だぞ?」
ようやく振り向いたリムは頬を膨らませていた。どうやらご機嫌斜め(?)のようだった。
「ほら、帰るぞ」
正確にはまだ俺は学業があるから帰れよ、なのだが。
そうつまらないことを考えつつ、彼女の腕を掴んだが、それはあっさり振りほどかれてしまった。力が強い……!
「むー、やだー!帰らないよっ!」
「おい、待てって……―――」
リムはバッと立ち上がって、また逃げてしまった。
再び鬼ごっこの始まりかとおもったが、それはすぐ終わることになった。
リムは飛ぶようにして校舎裏の窓から校舎へ入った。
流石に同じ真似は出来ないので、すぐにそこから中を覗くと、
「いいにおーい」
そこは、学食の食堂だった。
流石に昼休みも終わりに差し掛かっていたので、生徒達は食事も終わって専らグループで駄弁っている時間だった。
迂回して玄関から中へ入って食堂のドアを開けると、そこには嬉しそうに食堂内を見回しながらキャッキャと言っているリムがいた。
そして、こちらに気付くや否や、目をキラキラと輝かせて何かを訴えんとする。
その純真さに、思わず見とれてしまった。不覚。
「お前、お腹すいてたのか?」
頷いた。そりゃぁもう深く。
「しっかたねぇなぁ、食ったらとりあえず教室にいくぞ」
「うん!」
自分自身まだ昼を食べていなくて丁度空腹だったので、リムと食べることになった。
ちなみに、この学校の学食はとても美味い。
――――――――――――――――――――――――
とりあえず教室とはいったものの、着いてどうしたものかと思っていると、戻ってきた担任と意気投合したリムは、残りの半日だけ学校に居座る権利を見事獲得した。
それは全クラス共通の承諾だったらしい。美少女に弱いとは、大人気ねぇ大人だ。
「ふぅ……、なんとかなったか」
席に着いて一息つくと、教室が騒がしくなった。リムを囲んで話が盛り上がっているのだ。
その光景をみながら、小ざかしい、と薄ら笑いを浮かべていると、
「今日半日とは言わず、いっそこの学校に入ってきてしまえば楽しいですよね、燐夜さん」
「―――うぉっ!?」
気配を感じ取ることが出来ないまま、俺の席の前には汐乃さんが存在していた。まさに言葉の通り呆気にとられた。この人、暗殺者か……?
「リンくーん」
こいつはむしろ気配がコすぎる。暗殺には向かないな、良かった。
気を取り直して、言った。
「……いくら先公達が美少女好きでもそれは流石に出来ないだろ。まぁ飯はなんとか出来なくは無いと思うけど」
「だねー」
今の会話を知ってか知らずかは分からないが、衿が相槌った。
この時すでに、俺はこれから先の事態を、予測していてもおかしくなかった。いや、汐乃さんの恐ろしさを正しく認識すべきだった。
「え?できますよ。私に任せてくだされば。私の父は顔が広いですから、ここの校長くらいならなんとかなります」
「「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」
声が重なった。勿論それは歓喜の声では無かったと思う。