【1-1】能力の目覚め【faststage】
「――おいおい、本当に成功しちまったのか?これ――」
気が付けば、まるでゲームのキャラクターのような美少女が、そこにはいた。
「やっほー!こんにちわー!…って、アレ?ここどこ?」
「……わぉ……。」
それは歓喜の声ではなかった。
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「おおおおおお、ついに手に入ったぞ!」
梱包されている袋を、テンションに任せて引き千切る。
この半狂乱の息子を我が両親が見たらどう思うのだろうか。
しかしながら、今現在親は、海外へ旅行へ行っているため、この場で居合わせることはない。
つまり、俺は家に一人というわけだ。
「……フハ……フハハハハハハハハ……」
変な笑いが止まらない。
何故俺が、ゲームが届いただけでこんなにテンションが上がるのか、それは俺がゲームが大好きであり、このゲームが念願のブツであったからという理由に他ならない。ゲームは俺の全てであり俺の存在意義であり(以下略
「さてっ……早速やりますか……っと」
そうだ。今日は学校であった。この羅昏燐夜にかかれば仮病の一つや二つやってのけることは簡単ではあるのだが―――。
「リンくーん、学校いこーよー」
ヤツだ。
「いや、俺ちょっといそがs」
ドーン!
轟音が響き渡る。紛れも無い、俺の部屋の扉が開かれている。
鍵閉めたのに。
「リンくーん、はーやーくー」
魔王(城ヶ崎衿)、登場。
こうなってしまっては俺でも手に負えん、おまけに放っておくと…考えただけでも恐ろしい…!
「お、おう……」
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俺たちが通う『丹路字高校』通称虹高は、俺の家から徒歩10分程度の場所にある。見た目的には小奇麗な少し頭の良さ気な高校ともとれるが、中を見てみれば無駄に凝った装飾やらが沢山あり、清楚で謙虚な見た目をぶち壊している。
一応俺と衿は同じ1年2組のクラスなので、教室に入るところまで一緒ということになっている。
と、いっても俺からすれば半強制的に
連れて行かれるようなものなので決してそんなに嬉しくは無いが。
「イェエエエエエエエエエエエエエイ元気してるかーいお二人さんよォォォォ!」
「あ、ああ」「う、うん」
こいつはいつも真っ先に話かけてくるやつ、こんな時では鬱陶しいが以外と真面目で良いやつだ。
だが、うざい時はとことんうざいキャラを演じるようなので、俺たちもいつも反応に困る訳だ。コイツのいっつもニヤニヤしながらハイテンションでひたすら喋り捲まくるというキャラはコイツ曰く自分で作っているそうだ。なんでそんなことすんだよ、面倒くさい。
キーンコーンカーンコーン
朝の騒がしい学校にチャイムが鳴り響く。朝のホームルームが始まる時刻だ。
ガラガラと横引きのドアを開け、黒い縁の眼鏡とぼっさぼさの髪の毛が特徴でそのせいか、生徒達からは比較的地味な先生の分類に入ってるらしい先生が登場した。俺は先生の詳細はどうでもいいが。
「おい、颯丞珪蛇、席につきなさい」
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「ふぅ、終わった……。」
最後の授業が終わり、今はまさに放課後。
「今から俺らの至福の時間が始まろうとしているッ…!集え、同志たちよ!」
俺のその言葉を聞いた『同志』たちは、椅子をガタッと鳴らして立ち、俺の机の周りに集まってきた。
いつも放課後はこんな感じでしばらく皆で集まって話すのだ。まぁ、話すと言っても毎回適当に議題を決めて討論したりするだけだが。
「ふ…集まったな。今日の議題は――そうだな、最近の恋愛ゲームについて!」
因みに俺が議題を出すときは大抵ゲームのことばかりだ。だってそれしか興味ないもん。
「それなら俺が、いいモノを知ってるぜ!」
一人が名乗り出た。興味有り気にそいつのほうへ向き、気取って尋ねた。
「ほう、それはどういったものなのかね?」
「実は今ここに…ってアレ?ないんだけど!?一瞬にして消えた!え?忍なの?忍の仕業なの!?」
いや、お前のリアクションに驚きだよ俺は。
「学校に不要物は持ち込み禁止ですよ?」
異常なまでにニコニコしながらこちらを見ている彼女は、委員長である秋雨汐乃さん。
背中の真ん中辺りまである長い黒髪をなびかせ、やはりニコニコしている。
あんまりジロジロ見ていると俺まで制裁されそうだから目を逸らそう。
制裁された彼は床にうつ伏せになって倒れている。
「さて……面倒なことになりそうだから帰るかな……」
「待ってよーリンくーん」
帰ろうとすると、破壊神・衿は、友達との話を切り上げてついて来た。
まぁいいや、帰りは特に何も起こらないだろう。