最終回 イートインの松さん
アルバイトを始めてから2か月がたった。
そして俺の噂が立っていた。
アルバイトの松さんはいつもなぜかイートインにいて、水筒片手にパソコンを触っている。
持ち物にブランド物はなく、弁当や水筒を持参する質素な人。
車は十数年も乗っているカローラツーリングのシルバー。
巡回に来る上層部を何故か会話しており、できる仕事も幅が何故か広い。
そんな俺のことを「イートインの松さん」呼んでいた。
「計画通りだな」
夏さんから噂を聞いたが、決して資産家のサイドファイアとした認識ではなく、質素なアルバイトである。
資産家とは遠い存在として認識されているようだ。
そして、元々この企業に社員として働いていた人がアルバイトとしても戻ってくるのも多いのでそこも違和感なく受け入れられている。
しかし、そこはあまり興味がないようで元社員ぐらいな認識だ。
この生活になってからメリットのほうが多いからである。
40代となり終わりを意識し始めるときに、一緒に入れる時間の増加。
お金には余裕がでてきるのでお金による喧嘩の減少。
仕事の時のパートナーの姿がわかるし、仕事の悩みを深く理解できる。
一緒にいる時間が長い分価値観のすり合わせが容易。
などと無理やりメリットを提示したが、一番最初に上げた、一緒に入れる時間の増加のこれに尽きる。
なんで40代という最後のチャンスと言っても過言じゃないときにバリバリに働かないと行けないかがわからない。
終わりも見えて、体の調子も味覚や視力もかわる。
そもそも、事件や事故、病気などで明日を過ごせる確率は、年を重ねるにつれて低下するはずだ。
それならパートナーとの時間をともに過ごすために、若い時の資産を使うのは当然であろう。
「その一心で、ここまで資産を貯めるための節約頑張れたんだ」
周りの意見なんて関係ない。
夏さんとあとどれだけ楽しく過ごせるか、コレだけが俺の心のエンジンであった。
これがイートインに居続ける俺の理由だ。
今日も夏さんと一緒に通勤して一緒に働く。
休みの日は共に同じ趣味や、動画、ゲームなどを行う。
くだらないことを言い合い、笑い合う。
お互い元気の時間はもう出会った頃から数えると折り返しなのかもしれない。
正常な思考で、会話できるのもいつまでかわからない。
いつかは認知が歪み、忘れられるし、どちらかが先に死ぬかもわからない。
そんな未来にの恐怖に、怯えるのもまたイートインに居続ける理由だ。
「夏さん」
「ありがとう。俺が今日まで過ごせたのは夏さんのお陰だよ」
「ありがとう。もう会うことはできないけど、思い出はわすれないように小説に書くね」
「ありがとう。今まで同じ趣味を楽しんでくれて」
「ありがとう。夏さんがいなくても前を向けるよう頑張るね」
もう夏さんの声を聞くことは叶わない。
大事なものは失うまで気づかないことは知っていた。
でも、大事な時間を共に過ごせる保証はどこにもない。
明日突然消えるかもだし、どんなことがあるかわからない。
「みんなはどう考えて生きているのかな?」
大事な人と過ごす時間を増やすように頑張れているのかな?
俺にはできなかった未来、大事な人と長い時を生きる。
そんな、目標を花芽げている人はいるのかな?
今まで長く一緒にいたからこそ、もっと長い時間を過ごしたいと思うのは人間の性なのかもしれない。
どうしたら、「もっと長く一緒にいられたか?」なんて失うまで考えることは、あったが考えが足りなかった。
もう夏さんがいなくなったが、夏さんの後が残っている部屋を見る。
そこにいるはずの、日常の風景から気持ちは大きくなる。
後悔が膨れ上がる。
そんな未来になってから、好きな人との後悔を語りたくない。
足りないパズルで無理やり作る、思い出なんで俺には耐えられない。
パズルのピースを増やすそんな未来を作れるのは、20代からのNISAだと思う。
昔からやっておけばお金にも苦労せず、パズルに必要なお金と時間を揃える事ができるのだ。
「ごめん……パズルピースを揃えきれなかった」
この後悔は俺が死ぬときまで続くと思う。
これまでの足りないピースで作るしかない思い出を胸に、これからを生きていく。
本当にありがとう。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
この物語は僕の「未来予想図」になるはずでした。現実はバッドエンドになってしまいましたが、この小説を書くことで、僕自身の5年間の思い出を一つの形として残すことができました。
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