表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄?ええ、すべて私の計画通りです  作者: めめめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6話 盤上の再会

帝都の門が開く。


王国の旗を掲げた馬車列がゆっくりと入城した。


先頭に立つのは、レオンハルト。


王子としての威厳を保とうとしている。

だが、その顔色は明らかに疲れていた。


帝国大広間。


謁見の間には、既に皇帝カイゼルが座している。


その右隣。


リュシエンヌが立っている。


対等の位置。


公然の距離。


扉が開く。


王子が入室した瞬間、空気が変わる。


視線がぶつかる。


一拍。


「……久しいな」


レオンハルトの声は低い。


以前よりも、柔らかい。


リュシエンヌは一礼する。


「ご無沙汰しております、殿下」


形式通り。


温度はない。


だが王子の視線は、彼女から離れない。


「……変わらぬな」


その言葉に、わずかな未練が混じる。


カイゼルは動かない。


ただ観察している。


「本日は交易の再調整について参った」


王子は本題へ入る。


だが、その目は時折リュシエンヌへ向かう。


「王国は混乱している」


声がわずかに掠れる。


「貴女がいなくなってから」


静寂。


広間の空気が重くなる。


リュシエンヌの心臓が一瞬だけ跳ねる。


だが表情は変えない。


「王国の問題は、王国で解決なさるべきかと」


冷静。


距離。


線引き。


王子の拳が震える。


「私は、誤った判断をした」


その告白は、広間を震わせた。


「戻ってくれ」


明確な言葉。


一歩、踏み出す。


「王国に必要なのは貴女だ」


沈黙。


その瞬間。


カイゼルがゆっくりと立ち上がる。


階段を下りる。


足音が静かに響く。


リュシエンヌの隣へ。


自然な動き。


だが明確な立ち位置。


「必要?」


低い声。


「貴国は彼女を断罪した」


王子は睨む。


「それは誤解だった」


「では、誤解で捨てたのか」


言葉が詰まる。


カイゼルの手が、そっとリュシエンヌの腰の後ろへ回る。


触れてはいない。


だが、守る位置。


宣言の位置。


「彼女は帝国の統括官だ」


冷たい声。


「我が国の中枢」


王子の視線が、その距離に落ちる。


初めて見る位置。


自分の隣ではなかった場所。


「リュシエンヌ」


名を呼ぶ。


その声には、かつての情が混じる。


リュシエンヌの胸が、わずかに揺れる。


だが。


その背後にある温度。


カイゼルの存在。


「……殿下」


静かな声。


「わたくしは、帝国の人間です」


決定的な一言。


王子の表情が崩れる。


「まだ……」


言いかける。


その瞬間。


カイゼルが一歩、前へ出る。


「彼女は選ばれた」


視線は王子へ。


「そして、私も選んだ」


その声には、はっきりとした独占の色。


三人の間に、見えない火花が散る。


リュシエンヌは理解する。


盤は、もはや単純ではない。


王子は未練で動く。


皇帝は感情を自覚し始めている。


そして自分は——


初めて、計算が乱れそうになっている。


広間の空気が凍る。


三角関係が、静かに始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ