四話
王都から連絡があったのは、しばらくしてからだった。
妹の婚礼の式。祝いに出席しなさいと。
私は、欠席と記して手紙を出した。
妹は悪くない。けど、元婚約者を許したわけじゃない。
祝えないのに出席はしなくていい。
自分を偽らないこと。
大切にしてもいいことを、私はヴァル様から教わった。
巫女装束はだいぶ身体に馴染んだ。
私は、私を私に戻してくれたヴァル様にお仕えする。
そんなある日、両親が神殿にやってきた。
「どうして出席しないんだエリシア」
「そうよ、そんな子じゃないでしょう」
私は二人を冷めた目で見た。
久しぶりに感じる怒り。
「私は、エリシアではありません」
精一杯淡々と言うと、両親はたじろいだ。
「何を言っているの?」
「私は神殿に入るために、名を失いました」
あなたたちの、せいで。
言葉にしなかった言葉は、聞こえてしまっただろうか。
「娘」
ふと聞き覚えがありすぎる声が聞こえて見れば、人型のヴァル様が立っていた。
巫女でもない人間の前に姿を見せるなんて、異例だ。
「人間よ。私の巫女を連れて行ってもらっては、困る」
私の前に、両親から庇うように立って。
両親は、ヴァル様の神々しさに一気に真っ青になった。
「申し訳ありません」
慌てて頭を下げ、帰って行く。
「これで、良かったか?」
聞かれて
「はい」
助けてくれた、と胸が温かくなる。
ヴァル様は優しい。
困るくらいに。
「娘……わかっていないな」
ヴァル様は面白そうにこちらを見た。
「後で庭へ」
ひっそりと落とされた言葉が甘く響いて、私の身体は震えた。




