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名を失った巫女は、夜の守護神に拾われる  作者: 絹ごし春雨


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1/5

一話

「名を捨てなさい。

尊い方にお仕えなさい。

汚れを置きなさい」


まるで、自分が汚いものになったかのようだった。


宝珠、いや、不思議な石の前に立つと、自分が誰なのかがわからなくなっていく。


過去が遠くなっていく。


ズキリ、と胸が痛んだ。


離れたかった。理不尽な家族からも、曖昧に笑う婚約者からも。


裏切られた自分からも。


光が収束すると、私の名前は失われていた。



神殿の奥、気配を感じた。

何か、いる。

緊張と、安心と、これが、神か。


私の唇からは、知らず息が漏れかけ、

自然と手を組んで祈りの姿勢を取った。



しばらく祈れば、心が静まるかと思ったのに、気配が沈黙すれば、胸の奥に、思い出してはいけないはずの名前が浮かんだ。


ああ、私は、囚われている。




「ルナが可哀想でしょう」

妹のルナが、婚約破棄された。


真っ赤な目で泣いているルナの頭を、私は静かに撫でていた。

なんと声をかければいいかわからなかった。


その時両親が言ったのだ。


「ユリウス様に頼みましょう。そうしたら安心だわ」


ユリウスは私の婚約者だった。

意味がわからなくて、いや、分かりたくなかった。


「エリシアはしっかりしているから、大丈夫よね」


その信頼は、どこから来るのだ。


不安に顔を歪めかけて、ルナの前だからと堪えた。


手は、震えていたと思う。

でも、それがきっといけなかった。


現れたユリウスは、曖昧な笑顔で承諾し、さっさと婚約を解消した。


「エリシアなら僕がいなくても大丈夫だよ」


無責任すぎる。

殴ってやればよかった。


傷ついた、のだと思う。

だって私は、呆然として、殴れなかったんだから。


何を持って“大丈夫”と言うのか。

私だって。



胸が空虚になり、ふっと現実に引き戻される。

いけない。


仕事を、しなくては。

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