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宇宙放浪者ヘドロ!  作者: 村上さゞれ
第1章 海洋衛星カリスト編

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24_金髪縦ロール女(爆発、炎上、大爆笑!)


「爆笑ですわ――!!」



 ……と、そのとき、遠くから魚市場に響きわたる場違いな女の声。

 なんだと思い向かってみると、見るからにご令嬢といった格好をした金髪縦ロール(ツインテ―ルをらせん状に巻いた髪型)にした女が羽のついた扇子せんすをパタパタとあおぎながら、魚人の中年っぽい男と青年に絡んでいる。


「たしかに俺たちは運び屋だが、お前のことなんざ知らねぇ! 他の業者と間違えてるんじゃないのか!?」

「そう言って前金だけもってトンズラする気ですわね! まァ――なんと小癪こしゃくなやつ! いくらお天道様が許しても、わたくしが許しませんことよ――!」


 まずい。

 見ただけで分かる。あいつは関わってはいけないタイプの人種だ。ああいう道端で騒ぐような輩は関わるとロクなことにならないと相場が決まっている。間違いない。


「よし、ちょっと回り道をして帰ろう」

「ん、なんじゃ? そっちからだと遠回りじゃが、いいのか?」

「お待ちなさいそこの三人組! ちょっとこちらに来なさいですわ――!」


 ビシィ――! と音が鳴る勢いで指をさされたせいで、金髪縦ロール女を輪のように囲っていた野次馬たちの視線が一斉にこちらに向き、俺たちの周囲から人がさーっといなくなる。必然的に注目の的となった俺たちは逃げることができず、金髪縦ロール女と対面することになる。


「あなたッ、その格好からして傭兵でしょう。であるならば、わたくしの置かれた立場が分かるはず。違くて?」

「はい、違います。僕らは関係ないのでさようなら」

「お待ちなさい! セバスチャン、あの者を捕えなさい!」

「はっ!」

「ちょまっ……はっや!? テック使って拘束しにくるのは反則だろ!?」


 直後、金髪縦ロール女のそばにいた老紳士が『瞬歩』と見間違えるほどの速度で詰めてくると、俺の片腕を拘束して半強制的に連行されてしまう。逮捕術にも似た技術に、俺はこの老紳士は只者ただものではないと察してしまう。


「お前らも見てないで助けろよ。俺、連行されてんだけど……」

わらわは面白そうなものに巻き込まれるのは嫌いじゃないからのぅ」

「あらあら、私もご主人様だけが困るぶんには構いませんよ?」


 俺の愚痴に対して淡白な返しをほざくふたりをよそに、金髪縦ロール女は老紳士が連れてきた俺を前にすると羽つきの扇子をパッと開き、口元を隠しながら話し始める。


「わたくし、実はこの星系ですこし追われる立場でして――ああ、なにも賞金がかかってるわけではなくてよ? ただ、すこし身内に裏切られたというか……それでこの星系から脱出する最中で、ちょうどこの時間に『運び屋』兼『操縦士』の方と合流するつもりだったのだけれど」

「だから、違うと言っているだろう! オレたちは別の配達物を運んでる最中なんだ、邪魔しないでくれ!」


 密輸業者らしき魚人の男が怒りを露わにするように口から泡を飛ばす。

 それに対し、金髪縦ロール女は「はぁ~~」とクソデカため息を漏らすと、頭を横にふる。


「このありさまなのですわ。まったく、事前に連絡しておいた時刻と場所はここだというのに、これだから企業コーポに属していないやからというのは!」

「オレたちはまた別の業者でお前のことなんて知らないんだって! さっさとわかったら……あっ、ガキこら! 積み込みの邪魔をするな! それにお前らも見せもんじゃねぇぞ、散れ散れ!」


 何やら運び屋らしき男の足元には大量の金属製の箱が積まれており、それを現在進行形でどこかに積み込んでいるところらしい。リンがそれに触れようとすると、男が焦ったような口調で制止し、まわりの野次馬たちを解散させようとする。

 俺も何度か禁制品を密輸する運び屋はやったことがあるが、こんな人目についてしまってはもう通報されてバレるまで時間の問題だろう。何を運んでいるかは知らないが、厄介な連中に目をつけられたのが運の尽きか。と、そのとき――


「あ」


 それは誰が言った台詞セリフだったか。

 リンがいじくっていたせいで、積まれていた金属製の箱が地面に落ち、その拍子にどう見てもロケットランチャーなるものがボロっと現れたのだ。基本的にカリストは傭兵であれば武器の所持が認められてはいるが、しかし、さすがに爆発物はダメといった威力制限がある。その観点から見れば、これは――


「あらあら、これはゴーストガンならぬゴーストランチャーですね。非合法の工房でつくられた未登録の銃火器。おおかた、この星の貧民街のギャングにでも流す予定だったのでしょう」


 冷静なメロウの分析に、周囲で見ていた野次馬たちが騒ぎだす。


「そ、そうだ、こいつら手配書で見たことがある! 難民に武器を渡して宝石店とか銀行を襲撃させて、その金を回収してる宙賊の仲間だ!」

「そういえば、この前の隕石落下警報が出たときも、こいつら船でどこか行ってたな!」

「うぴょぴょぴょぴょう! ちまたじゃ有名な運び屋ッギョ!」


 ニュクティモスの住民たちが口々に叫ぶなか、ついに堪忍袋の緒が切れたらしい運び屋の魚人男が箱から出たロケットランチャーを肩にかつぐと、金髪縦ロール女に向けてトリガーを引く。


「こうなったら仕方ねぇ! くたばれ、クソあまァ! 死ねぇぇぇええ!!」


 直後、放たれた弾頭がわずか一秒未満のスピードで金髪縦ロール女へと飛来する。


「はいですわ――!!」


 だが、金髪縦ロール女は避けることなくカンフーの構えをとると、そのままロケットの先端に手の甲をあて華麗に受け流したのだ。いくら距離が近くて最大速度に乗る前の初速に近いスピードとはいえ、水の流れを変えるが如く、あまりにも自然な動きは達人の域に達していた。

 かくしてロケットの弾頭は受け流されるがまま野次馬のさらに後方へと飛んでいくと、俺の船が停めてある格納庫ハンガーへと向かっていき――


「「「あ」」」


 誰もが呆気にとられていた。

 宇宙船というのは燃料のせいもあってか超特大の爆弾を積んでいるようなものなのだ。しかもジェネレーターが停止していてシールドも展開していない無防備な状態ともなれば、ちょっとした外部からの刺激で――



 ――――――。



 その瞬間、俺の宇宙船が停めてあった格納庫ハンガーでつんざくほどの爆発が起きた。

 ドォン――と衝撃波が発生し、肌がビリビリと痺れる。続いて膨れ上がる爆炎と黒煙がキノコ雲のようにもうもうと昇っていき、俺は遅まきながら何が起きたかを察し、絶望で顔を歪ませるのだった。


「うわああああああ!? 俺の船―――――ッッッッ!!」



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