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宇宙放浪者ヘドロ!  作者: 村上さゞれ
第1章 海洋衛星カリスト編

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18_脱出ポッド(お宝発見かと思いきや)

「おい」

「…………」

「なに寝てんだ」


 副操縦席で背もたれを最大まで倒して、よだれを垂らしながら爆睡するガキの鼻をつまむと、もう反対の手で口を封じる。


「ふっ、ふがふが……」

「…………」

「ふがっ、ふがっ、ふがっ⁉」


 直後、息ができずリンの顔が赤く染まり、かと思えば青へと変わっていき、紫色になったところで覚醒して座席からずり落ちる。


「な、なにするんじゃ! 危うく窒息死するところじゃったぞ!」

「お前、なんでレーダーを見てないんだ?」

「うっ、反応があれば警報が鳴るから、つい――」


 こいつ雪山とかで遭難したら真っ先に死ぬタイプだろうな、と思いつつも厚手の服を買ってやらなかったこちらにも不手際はあることに俺はすこし後ろめたさを感じながら後頭部をぼりぼりと掻く。


「まぁ、いいや。ちょっと面白いものを拾ったんでな。貨物室まで来てくれ」

「べくしっ……うぅ、これでは風邪をひいてしまうぞ」


 大量の毛布にくるまりながらミノムシのように移動するリンをつれて、俺たちは自分の船の貨物室に入る。そこには宙族船から運んだ戦利品がずらりと並んでいた。


「ぶっこ抜いたシールド発生装置に、ジェネレーター、鉱石類、その他もろもろを売ってだいたい三万エーテルってところかな」

「おお! けっこう儲かるんじゃな!」

「そりゃ命賭けてるからな。けど、それはひとまず置いといて、こっちを見てほしいんだ」


 そう言って、俺は貨物室の箱に目を向ける。


「なんじゃこれ?」

「脱出ポッド……だと思う。俺も初めて見るからわからないけど」

「ふーん、特に興味ないのぅ」

「まぁ、大富豪が入ってるかもしれないしな。そうなりゃ謝礼をたんまりふんだく――じゃなくて、もらえるかもしれない。夢があるだろ?」

「おお!」


 よく見ると箱の縁にシリアルナンバーのような番号が書いてあるが、バーコードリーダーは持ち合わせていないので中身は分からない。最悪、ミイラ化した遺体とご対面しなくてはならなくなることに顔をしかめながらも、俺はポッドに手をかけた。


「とりあえず開けてみるか」


 直後、ブブ――という音とともに液晶パネルに【CAUTION‼】の文字が表示され、『暗証番号を入力してください』という機械音声が流れる。どうやらロックを解除するためには金庫のように箱にくっついているパネルを操作する必要があるらしい。どうにか開かないか四苦八苦するも開かず、俺はそばにあったバールを手にとると金具部分に噛ませた。


「暗証番号を記入してくださいだぁ? このバールが暗証番号だ、喰らえこのやろう!」

「そうじゃやってしまえ! わらわの金はこれでいただきじゃ!」


 ギ、ギギギ――と金具が悲鳴をあげるなか、ついにバキと金具がへし折れ、箱が盛大に開く。その瞬間、中から出た白い煙がいっきに貨物室に充満し、俺たちはゲホゲホとむせる。毒ガスでないことに安堵しつつも、煙を手で払うと、箱の中を涙目のまま確かめる。


「なんだ、女……?」


 そこにはメイド服を着た女がいた。

 クリーム色で羊のようなボサボサの長い髪を腰までろし、はちきれんばかりの双丘を胸にたずさえ、こめかみには機械人形アンドロイド特有のLEDリングが埋め込まれている。そう、中に入っていたのはメイドロイドだった。

 直後、メイドロイドの目が『ぎょろ――』とまぶたの下で動いたかと思うと、こめかみのLEDリングが赤から黄色へ、そして緑色に発光していく。やがて唐突に瞼をぱちりと開いたかと思うと、メイドロイドはむくりと上体を起こし、こちらを向く。


所有者オーナー認証……失敗。適性ユーザーではありません。不正アクセスの可能性があります。人格モデルを再設定の上、再起動を実施します」


 瞳を高速で赤く点滅させたかと思うと、ついには箱から立ち上がり、俺たちを見下ろしてくる。俺が平均的な日本人男性の身長(171cm)と同じなので、アンドロイドの身長はそれよりもすこし大きい(180cm)くらいか。


「再起動……完了。輸送艦が襲撃に遭い、貨物が強奪された記録を確認。生体データからIDを読み取り、男を傭兵と断定。臨時の所有者オーナーとして設定します。はじめまして、私の名はメロウ。ゲツアン社によって生み出された第十五世代のアンドロイドです」

「……お、おお、なんか凄いのぅ。ここまで精巧な造りのロボットは初めて見たぞ」


 リンが物珍しそうにアンドロイドの全身を観察する中、俺はあまりに美しい顔から胸、足先にかけての造形に思わず鼻の下を伸ばしてしまう。てか、おっぱいでっか~~。

 口の斜め下にある艶ぼくろといい、目が細い糸目タイプの美人というのもおつなもので、心なしか心臓がドキドキするし、もしかしたらこれが恋というやつなのかもしれない。

 思わず自分の胸を手で押さえる俺に、アンドロイドはにこりと微笑んできて――



「おい、クソオス。さっきから胸をちらちら見て興奮しやがって。いますぐ去勢してやろうか」



 ――そして、あまりにも満開の向日葵ひまわりのような笑みでとんでもないことを口走ったアンドロイドに、俺は目を白黒させた。……前言撤回。やっぱり造り物はダメだ。シリコンでできた偽乳ニセチチになんて一瞬でもれるんじゃなかった。

 アンドロイドが実はセクサロイドで、ミサンドリスト(*男嫌い)思想に染まった真性のマゾ向けの鬼畜仕様のドSだなんて、このときの俺は思いもしなかった。

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