表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙放浪者ヘドロ!  作者: 村上さゞれ
第1章 海洋衛星カリスト編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/55

17_メインベルト(小惑星帯で釣りをするみたいです)

「ひえぇぇああああ、助けてください助けてください! 襲われてます! 宙賊に集団で襲われてますぅ!!」

「だから言ったんじゃ、こんな船で大丈夫かと!」

「あびぼばべぶば⁉ ああ――! 死ぬ死ぬ死ぬ!! 来るんじゃなかったぁぁぁ!!」


 俺とリンは宇宙船の操縦室の中で、宙賊どもから襲撃を受け、今まさに逃げている最中だった。一応、シールドを展開してはいるものの、相手の銃座から放たれるレーザー弾がみるみるうちに飽和状態にしていき、装甲板に直撃を食らい始める。


『さっさと諦めてエンジンを停止しちまいなぁ!』

『ひゃっは――!! おどおどれ! 死のワルツだァ!!』


 通信機からは現在進行形で攻撃している宙賊どもの叫び声が聞こえてくるが、俺は致命傷だけは食らわないよう反応の鈍い操縦桿そうじゅうかんを動かし、右に左に逃げ続ける。事前にマーカーにつけていたとある地点まで、あと二百キロメートル。


『ん? …………っ! ま、まずい。この反応は――』

「へァ――(計画通り……)」


 そうしてついに有視界距離にあるものが入ってきた瞬間、操縦室のフロントガラスに反射して映る自分の顔がこれでもかと凶悪な笑みを浮かべる。続けて、通信機に新たな信号が加わり、ザザ――とノイズが走る。


『十二時方向にブラックリスト登録のある宇宙船確認! 艦隊、砲撃開始――――!!』

『な、なに――⁉』


 直後、高エネルギーのビーム砲が飛来し、俺たちを襲っていた宙族の小型船のうち三隻が黒煙を上げる。そのあまりの威力に、俺はシールドが禿げた状態の船を小惑星の裏に避難させると、物陰から勝ちを確信して顔を歪ませる。


「はっは――ァア! ……ったく、これだから最近の宙賊ってのはよ! 喧嘩を売る相手には気をつけろよなぁ!」


 援護射撃をしてくれたのは、そう、周辺宙域をパトロールしていた銀河警察機構の艦隊である。

 突然現れた強力な敵に宙賊が右往左往するなか、俺は艦隊のビーム砲の餌食えじきになる彼らを見て下卑げびた笑みを浮かべる。


 俺たちは太陽系の火星軌道と木星軌道との間にドーナツ状に存在する小惑星帯『メインベルト』に来ていた。どうやら宙賊の拠点というのは、発見されて拠点が破壊されてもいいように、小規模なものをここ暗礁宙域に点々と築き、小惑星の資源を掘削しにきた採掘船などを襲うとのことだった。

 また、その拠点の数というのが実に数百を超えるらしく――巧妙にステルスされた基地ということもあってか――膨大な小惑星すべてをソナーであぶりだすわけにもいかず、銀河警察機構も手を焼いているらしい。

 そこで、俺たちは事前に哨戒しょうかい中の銀河警察機構の艦隊にマークをつけると、すこし離れた場所でSOS信号を出し、宙賊どもをおびき寄せて艦隊のところまでひっぱっていったのだ。なにも自分で倒す必要はない。虎の威を借りる狐作戦こそ序盤最強の戦術なのである。


「な、なんというかおぬし、やってることがサンドワームの威を借る羽虫じゃのぅ……」

「しょーがないだろ、こちとら最弱の宇宙船なんだから。宙賊を倒すにはこれしかないんだよ」


 復活リスポーンが絶対にできないということは、当然それだけ戦い方にも制限がでてくる。ちまちま採掘船で小惑星を掘削してもよかったのだが、それだと万が一宙賊に目をつけられたとき逃げ切れずに死ぬ可能性が高い。

 そのとき、ついに四隻いた宙賊船のうち最後の一隻が味方を見捨てるとハイパードライブで宙域から離脱し、銀河警察機構の艦隊が後ろで見ているなか俺はガッツポーズを決める。


「あっ、どーもすみません。残骸はこちらで処理しておきますので、銀河警察機構の皆さまはパトロール頑張ってください~」

『…………、……ああ、気をつけてくれ』


 一瞬、利用されたことに対する間があった気がするが、ぺこぺこと頭を下げると艦隊はゆっくりと俺たちが乗る宇宙船の上を通過していく。

 俺は浮遊する宙賊船の残骸のそばに宇宙船を停めると、操縦席から立ち上がった。


「艦隊が近くにいるうちに分解しないと、他の宙賊が寄ってくる。あと三回はこれやるつもりだから、覚悟しておけよ」

「アイヤー、それはいいんじゃが、おぬしがいないといざというとき宇宙船を動かせないぞ」

「動かす必要なんてないぞ。ジェネレーターの出力を最低まで落とせばデブリに紛れられるからな。他の宙賊どもにバレたらそんときはそんときだ。宇宙船の解体も回収ボットとかあれば楽だったんだろうが、残念ながら金のない俺たちは手作業でひっぺがすしかないんだよ」

「じゃあ、わらわは待ってる間なにしてればいいんじゃ?」

「お前の役目はこの宇宙船に残ってレーダーとにらめっこすること。船外活動なんてやったことないだろうし、宇宙船からジェネレーター抜く方法とか分からないだろ? だから、他の宙賊が来たときに備えてレーダーを見ててほしいんだ」


 俺は宇宙服のヘルメットを装着すると、エアロックの方まで歩いていく。

 爆散したデブリが自分に直撃しないことを祈って、俺は気密扉を閉めると減圧を開始し、完全に空気がなくなったことを示すランプが赤から緑に変わると二枚目の気密扉を開けて船外に出た。周囲に小惑星が浮かんでいるとはいえ、その隙間に無限の暗闇があることで、ついそこに落ちていきそうな錯覚をしてしまう。


『もし、他の宙賊が来たらどうするんじゃ?』

「そんときは俺を爆速で回収して、他のデブリに紛れてこっそりと宙域から離脱――って感じかな。とりあえず、あの艦隊がこの宙域からいなくなる数十分の間は大丈夫だから、心配しなくてもいいぞ」


 俺は宇宙服の噴出口からガスを出して、宙賊船のエアロックの前まで浮遊していく。しかし先の攻防で完全に気密扉がひしゃげてしまったらしく、仕方なく俺はガスを吹かして操縦室の方まで移動する。

 すると、フロントガラスのうち一枚が完全に割れており、操縦室の中で凍りついた遺体が浮いているのを確認し、そこから侵入することに。ゴブリンっぽい種族のほとけさんに心の中で手を合わせながら、機関室を目指して船内を移動していく。


『それにしても、さ、寒いのぅ。操縦室の室温が五度とは……』

「仕方ないだろ。ジェネレーターけっぱだと他の宙賊が寄ってくるんだよ。最低限の生命維持装置は起動してるし、一応、毛布があるからそれにくるまってな」


 宙賊船の中は完全に空気が抜けているらしく、生存者はいないようだった。俺は機関室のジェネレーターやら酸素生成装置やらを物色していく。


「小型漁船の低出力ジェネレーターを改造したやつに、深部鉱山用の酸素生成装置、水循環装置は……ゲッ、藻類でしだす初期型かよ。安物ばっかだな。こりゃあひっぺがしても大した金にならないぞ……」

『なんじゃ、たいしたものを積んでなかったのか? これじゃあわらわが大金持ちになるのはまだまだ先になりそうじゃの』

「ちぇっ、仕方ない。貨物室に何か積んでないか見てみるか……」


 俺は宇宙服の手首に内臓されている懐中電灯をかざしながら、貨物室の方へと歩いていく。そのとき、再びリンが通信を繋いでくる。


『ん、レーダーに反応ありじゃ。な、なんか来ておるぞ……?』

「まじか、もう増援が来たのか!?」

『いや、待て。反応はひとつだけじゃ。だが、なんじゃこの大きさ。ちょっとした大型船くらいのサイズじゃぞ……』


 俺は急いで宙賊船の通路の小窓にへばりつくと、反応のあった方へと視線を向ける。


「なんだ、あれ……」


 やがて小惑星を避けるようにして近づいてきたのは、縦一列にオレンジ色に発光するライト群だった。一瞬、どこかの旅客機のナビゲーションライト(*主翼の先端などに点いているもの)かとも思ったが、それが不規則に点滅しているのを見て、俺は思わず顔をしかめる。


「まずい。宇宙アメーバだ」


 直後、小惑星の陰から卵型の異形の生物がぬるりと姿を現す。どういう理屈かは分からないが、鞭毛べんもうを使って推進力を得ているその生物の名は『宇宙アメーバ』、イカみたいな見た目のキモイ宇宙生物である。

 SPACE CITIZENにも存在したその生物はガス惑星の大気等を主食としているらしく、一部攻撃的な個体も多いと聞く。俺もゲームでは数回しか会ったことがないが、そのときはどれも交戦することなくやり過ごした記憶がある。


「うげぇ……太陽系にもいるのかよ、こいつ。……ってか、なんで一匹だけなんだ? もしかして迷子か?」


 普段であれば群れをつくって星系間を移動する習性があるはずなので、俺は周囲に他の個体がいないか船窓から外を覗き込んで確認する。しかし、どうやらその一匹だけらしく、宇宙アメーバは徐々にこちらに近づいてくる。


「間違ってもジェネレーターとか点けるなよ。あいつは放射線だとか電磁波とかも食べるからな。熱源が大好物なんだ」

『うむ、分かっておる。じゃが、万が一、食われたらレーザー弾で反撃してやるわ』


 幸い、宇宙アメーバは俺のいる宙賊船とリンのいる宇宙船を通り過ぎると、代わりにブスブスと電気系統から火花を散らす他の二隻の宙賊船に目をつけたらしく、捕食行動に移る。まるでイカのように鞭毛を使って船を捕まえたかと思うと、股間にある口に持っていきそのまま咀嚼する。ジェネレーターが完全に破壊されたのか、盛大に爆発が口の中で起きるが、大したダメージはないとばかりにもう一隻も食べ始める。

 宇宙が真空でなければバリバリとかボリボリといった擬音が鳴っていたであろう光景だが、どうにかやり過ごすと俺はため息を吐くのだった。ありがたいことに宇宙アメーバはこちらには興味を示さず、艦隊のいる方向とはまた別に舵を切ると、そのまま小惑星を避けながら去っていく。


「トホホ……せっかく倒したのに、他の二隻喰われちった」


 時間がないこともあってか、俺は船窓から顔を逸らすと宙賊船の貨物室の自動扉に手をかけ、電気系統がダウンして動かなくなったそれを無理やりこじ開けて中に入る。


「おお、結構ため込んでるじゃーん」


 俺は強盗のような喜び方をすると貨物室内の物資を漁り始める。採掘船をいくつか襲った後なのか、鉱石類がほとんどで一部ポリマーや半導体といった工業材料、医薬品、銃火器、電気家電などがぎゅうぎゅう詰めになっている。

 と、そのとき、鉱石類に埋もれた棺桶かんおけのようなものを見つけ、無重力状態なことをいいことに掘り出してみることに。ぽいぽいと重い鉱石を脇にどけて出てきたのは、人がひとり入りそうな脱出ポットだった。


「なんだこれ。冷凍休眠ポッド? なんでこんなのが宙賊の船に……」


 最悪、何世紀も漂流する可能性がある脱出ポッドは、中に入った人間を冷凍休眠させると聞く。どうにもきな臭いが、このまま放置するのも問題になりそうなので一応回収することにする。


「ま、とりあえず金になりそうなものはぜんぶ回収しておくか……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ