決断
俺は深く深呼吸をした。
すぅ…
はぁ…
横に止まってる車のバックミラーで自分の姿をチラッと確認。
おいおい、表情が少し硬いぞ、まなぶ。
…まだ硬い、もっとリラックスだ、まなぶ。
Tバックの位置が少しずれてるじゃないか、危ない危ない。
よし、大丈夫だな。
俺はもう、ただの変態ゲキクサTバック野郎じゃない。ちなみにかなり薄毛ではある。
だがそれも今日これまで。
立派な大人になる。
カッコいい男は手短に、ただ相手に要件だけを淡々と伝える。
最も合理的かつ、スマートなやり方だ。
言うことは決まっている。
…よし。
「んーそうですなぁ・・・小生はやっぱり、今の経験知的にもいきなり極太マッキーというのはまだ怖いとは思いましたな!なので、まず割り箸で手合わせをお願いしたいですなぁっ!あ、これは今後の展望に期待することも含めておりますぞ!!それと割り箸はくっついたまんまを希望させていただきたい所存!なんたって1本よりも、2本しっかりくっついてる方が気持ちよさに天と地ほどの差がありますからなぁ!!さらにさらに、ゆくゆくはマッキーの方にも挑戦してみちゃおぅかなぁ〜・・・なーぁんちゃって!!!」
…彼女からの反応はない。
しまった!ちょっと表情が固かったか!?
情けない自分に若干腹を立てながらも、世の男たちがキメ言葉を送る際に使うであろう、片膝を落とし右腕を女性へ差し出す、俗に言う『男がプロポーズをする時の姿勢』はキープ、持っているのは指輪ではなく奇跡的に偶然持っていた割り箸。
…彼女からの反応はまだない。
…クソ!こんなことなら髪の毛セットしてくればよかった!
昨日育毛剤もう少し多く飲んでおけばよかった!!
目を見ると興奮でおかしくなってしまうから確認ができない!!
どうすればいいのだ!!!
と、色々と頭の中がめちゃくちゃになっている俺に
ゆっくりと彼女は詰め寄ってきた。