二択
あまりに唐突な質問に不意を打たれた俺は
ついその子と目を合わせてしまった。
美人だ。
なんだこれは、夢か。
ほっぺをつねったが夢ではない。
現実だという事を理解した瞬間、俺の脳天に稲妻が落ちた。
心臓が爆発しそうになった。
身体中の血流が全速力で股間へ向かう音がする。
興奮してめまいを起こすほどだった。
あとちょっと遅れて勃起した。
1年ほど前に俺はアナルデビューを果たした。
そしてその快楽の波に溺れ、ゆっくりとセルフ開発をしている毎日。
その俺の性癖を完全に理解している女が目の前にいるという現実。
突然現れた女神。
突然迫られた選択。
…選択?
…あれ?どんな選択なんだったっけ。
興奮が先に走ってしまって内容を全て忘れてしまった。
俺は一旦冷静に、開いた口を一度閉じ、渇き切った唇に舌で潤いを与えた。
そして生唾を一度ゆっくりと飲み込んだあと
「す、すまない。今…貴殿はなんと仰ったか…?」
勇気を振り絞って聞いてみる。
すると彼女はすぐさまこう答えた。
「だから、あなたは割り箸と極太マッキーだったら、どっちを挿れられたい?って聞いてるの」
…割り箸と、
…極太マッキー?
ハッ…
ハハッ…
…そうか
そうか、分かったぞ。
あいにく俺は昔から感だけは鋭いんだ。
間違いない。
これはあれだ。
日頃から頑張って生きている俺へのご褒美だ。
そうか、ついに俺にもきたのか。
苦節43年。
今まで頑張ってきてよかった。
辛い時も歯を食いしばってきて本当によかった。
実は俺、死ぬ一歩手前だったんだ。
何が悪いのかは分からんが、35歳から始めた初の就職活動で、64社から不採用通知を言い渡され、奇跡的に受かった会社を4日で飛んだあの日から、重い足を何度再就職へ運んでも、超高確率で不採用になる。
ついこの間まで、アメリカザリガニのオスとメスを8時間ひたすら仕分けするアルバイトをしていたのだが、それも2日でクビになった。
だが結果としてはクビになってよかった。
そもそもザリガニはキモい、しかも臭い。
なんであんなものを仕分けしなきゃいけないんだ。
むしろクビにされてなかったら次の日には辞めてたくらいだ。
クビのきっかけになった日、疲れたから俺は勝手に休憩をとっていたんだが、それが発端となって班長と揉めた。
その時班長から
「ザリガニよりもお前の方が臭い、お前は工業廃水と太った黒人のおばさんがつけてる香水を混ぜたような臭いがする。」
と言われ、ブチ切れて殴りかかったのが決定打だったみたいだ。
御年69歳の班長とのタイマンにも負けたが、まぁ別にどうって事ない。
俺はもっとビッグになる、タフガイなんだよ、俺は。
だが今そんなことはどうでもいい。
こんなチャンス逃すわけにはいかない。
男らしく、カッコよくこの選択をくぐり抜け、この目の前のモード系美人に俺のアナルを見てもらう。
そしてイジくり倒してもらうんだ。
そのことだけを考えろ。
今は全ての邪念を取っ払い、この目の前で起きてる奇跡だけにフォーカスをしろ。