恐ろしい提案
ある日、下界の惨状を見て神様が言った。
「これからはあらゆる人間に予め希望する寿命の年数を尋ねて生み落とすようにしよう」
すると天使は慌てて言った。
「神様。それではきっと多くの者が不死ないし不死に近い年数の寿命を選んでしまうのでは?」
「何か問題でもあるのかね?」
有無を言わさぬその笑顔に天使は黙る他なかった。
そして、天使の懸念通りほぼ全ての人間が不死に限りなく近い寿命を希望した。
人間がこんなにも長命になれば下界はこれまで以上に荒れるだろうと天使は恐れた。
しかし、その恐れは杞憂に終わった。
ある時期から人間はほとんど活動をしなくなったのだ。
まるで、植物のように。
下界の様子を見てきた天使が神様に質問をした。
「神様。何故、人間達はあんなにも放心しているのでしょうか?」
すると神様は微笑んだ。
「彼らが希望した時間と人間が脳に記憶出来る時間が釣り合っていないからだ。ごらん、人間達の頭は膨大な情報でパンクして指先一つ動かすことが出来ていない。自らを支配者だと勘違いするような愚かな命に相応しい末路ではないか?」
子供のように笑う神様に天使は言葉を失うばかりだった。