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【白い髪の少年と黒の女性】

 ――ポタ――ポタ、と、規則正しく赤い雫が灰色の地面へと落ちていく。


 赤い雫の出所は、地面へと踞る雪のような白髪の少年の身体からだった。

 黒く矢じりのような細い杭。それが少年の身体を貫き、地面と少年を繋いでいる。


 少年の身体を貫いている杭の数は数えきれない。

 頭意外、上半身も下半身も漆黒の杭で埋め尽くされている。


「どう……してだぁ……」


 痛みからだろう。息も絶え絶えに、浅い呼吸を繰り返す少年は顔を上げた。

 正面、一メートル先には漆黒の女性が恍惚とした表情で、痛みに苦しむ少年を見下ろしている。


「どうしてって……そんな事、ワタシに聞かれても困ります。――だって、ワタシもボク達も俺達もわたし達も、こうしなきゃ、落ち着かないって言うのですから」


 投げ掛けた問いは、漆黒の女性のその姿のように、深淵への回答へと上塗りされる。


「意味……わかんねぇ……」


 少年は、落胆とも軽蔑とも取れる溜め息を吐いた。

 しかし、漆黒の女性は恍惚とした表情を崩さず、


「えぇ。えぇ。意味わかんなくていいのです。それが正常です。それが道理です。――貴方を本当は殺したくないけど、ワタシは殺さないといけないんです」


「だったらなんで――」


 と、言いかけて少年は首を振る。

 きつく口を結び、空のような水色の瞳を漆黒の女性へと向けた。


「要するにお前は、敵だって事でいいんだよなぁ」


「はい、そうです。貴方を殺す敵です。それとも貴方がワタシを殺してくれますか?」


 杭で穿たれた少年は、現在の状況でも何処か躊躇いがあるようだった。しかし、その漆黒の女性の淡々とした物言いに、顔をしわくちゃに歪ませて眦を吊り上げる。そして――


「そうか……そうかよ! ――じゃぁ、どうせ死ぬんだったらよぉ……」


 少年は立ち上がる。

 身体に刺さった杭が肉を裂き、赤い命が止めどなく流れ出るが、それでも構わないと、


「最後は派手に暴れて死んでやらあ!!!」


 雄叫びを上げながら、腰の後ろに納めているナイフを抜いた。

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