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あそびの社のよもやま話  作者: 華蘭藤
第一章 霜月の旅人
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06.遼かな大地

「ったた……、ここは……?」


 フィが目を覚ましたのは、どこかの緑の中だった。

 おそらくはあのまま森に落ち、どうにか木々のこんもりと繁った葉がクッション代わりになったのだろう。

 フィは身を起こそうとする。

 が、バランスを崩し、地面に落ちた。


「うぅ……また魔法を失敗しちゃったみたいですね……」


 半べそをかきながら、フィはあたりを見回す。

 見覚えのない森の中。少なくとも砂漠ではない。

 どうやら、【転移】の魔法自体は成功したらしい。

 転移先が上空だったという問題点はあったけれども。


「とはいえ、ギリギリかけられた風の魔法は成功されられたみたいですね。あれだけの高さから落ちて怪我一つないとは。さすがわたくし!」


 フィは苦し紛れみたいな顔で胸を張る。

 それから、すぐにしょんぼりとした姿勢に戻った。


「言っててつらくなりました……。それにしても、オクルくん、ここはどこなんでしょうか?」


 フィのいる場所は、木々の間にできた、小さな広場のような場所だった。

 上には枝が茂り、あたりは薄暗い。

 問いかけたのに返事がないことに気づき、フィは再びあたりを見回した。


「……オクルくん? ま、まさかこんなうっそうと茂る森の中で迷子ですか!? どこにいっちゃったんですかオクルくーーーん!?」


 ようやく近くにオクルがいないことを察し、フィは立ち上がり、オクルの名を呼ぶ。

 焦るフィには、もしも近くに追手がいたら、なんて考える余裕もなかった。


 オロオロしているフィの頬に、ポツリと冷たいものが一滴。


「ほえ?」


 それを契機と、天井の木の葉を突き破るように、フィを濁流が襲う。


「あばばばばばばばば」


 いくらかすればそれは止んだが、フィはずぶ濡れでその場に座り込んだ。


「さ、散々です……。わたくしが何をしたって言うのでしょうか……」


 色々やりはしたが。

 うなだれるフィの耳に、カサリと葉をかき分けてくる足音が届いた。


「ま、まだ何か!?」


 足音はどんどん近づいてくる。

 合間に、チリンと、どこかで聞いたような鈴の音が鳴る。

 明らかにオクルのものではないその音に、フィは身を固くする。


「だっ、誰ですか!?」


 杖と間違えて、手近にあった木の枝をつかみ、音のする方に向けて、フィは音の主を威嚇する。

 音の主は、どうやらため息をついたらしい。

 わざとらしく植物をかきわけて、音をたてながら近づいてくる。


 赤い番傘。それが伸びた蔓をかき分けた。

 その番傘の持ち主に、フィは目を疑った。


「……ねこ?」


 白い装束に身を包んだ、人だった。

 しかし、普通の人ではない。

 その頭にはこれまた白い猫耳がそびえ、ゆるりと白い尻尾が動いている。

 金色の瞳がフィを捉える。

 右手には番傘、左手には刀を持ち、フィから数歩離れたところで、それは止まった。


暗雲(あんうん)の中に一筋(ひとすじ)の光、まれびと(きた)りて(もり)は繁栄す、と。あなた方の事情は(おおむ)先刻(せんこく)承知しております。ここに追手は参りませぬ。少しの間でも、ゆるりとお過ごしくださいませ」

「あんう……???」


 なにやら難しいことを言っている猫人に、フィは目を回す。

 猫人はその様子に、困ったような顔をしてから、フィに傘を差しだした。


(ふう)はあなたの敵ではありませぬ、と申せば伝わるでしょうか? ともあれ、そのままでは風邪をめされましょう。我が屋敷へご案内いたします。立てますか?」

「は、はい」


 フィはぼんやりしながら、その猫人についていくのだった。

【花の壱・夏の終わり】了

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