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変わる日常

 劇的に何かが変わったわけではない。あれほどの騒ぎがあったのに、僕の日常は何も変わらなかった。何かの力が、あの怪物の存在の記憶、痕跡を消しているのか、とも思う。僕の前に出てきたあの存在。疑問に思う僕。そして、ふと思い出すのはベルナールの顔。

 あいつなら、何か知っているかもしれない。通学路を歩きながら廻は考えていた。お陰でナツキの話を聞いておらず、彼女の怒りを呼び覚ますこととなった。

「いいんだいいんだ。廻は私のこと、きらいなんだ」

どこの子供かと思う。全く、彼女は僕相手だとどうしてこう甘えるのか。だが、惚れた弱みで、僕もついつい甘やかす。この日常が変わっていないことに安堵する。そうだ。この日常を守るんだ。ナツキを不幸に合わせてはいけない。

 そんな決意の朝。




 放課後、カウンセラー室に向かう廻。友人の中臣に茶を勧められたが断った。彼のお茶は本格的すぎる。凝り性な彼にそんなことを言っても無駄だが。くだらないことを考えていると部屋はもう、目の前だった。ノックするのを迷っていると、中から声がした。

「廻くん、早く入っておいで」

ベルナールの声。まるで僕が来るのを予測していたようだ。扉を開けて中に入る。テーブルの上にはまだ湯気の出ている二つのコーヒー。深く椅子に座すベルナール。その顔には笑みがある。

「そろそろ、来ると思っていてね。さ、座ってくれ」

取り敢えず座る廻。身を乗り出すベルナール。

「それで、何を聞きたいのかな?」

「全てを」

「それは無理だね。答えは自分で見つけるものだ。でも、少しだけなら教えてあげようか」



「まず、この世界は幾つもある次元世界の一つ。次元世界は無限にあり、一つ一つが似た、だが、どこかが違う世界なんだ。例えば、ここに似た世界があるとする。文化も習慣も、なんら変わらない。でも、僕がいないとする。これだけでそれは違う世界なんだ。可能性の世界。これは幾つもある」

「つまり、他の世界にも僕がいるし、いない世界もあるということですか」

「そういうことだね。そんな世界を自由に渡り歩くものを『超越者』という。君の見た怪物もそれさ。でも、彼らはあるもの、それが何かはわからないけど、それを使ってこの世界に来た。次元を破壊しようとする未知の機械。僕もその詳細を知らないがね」

コーヒーを飲み干すベルナール。

「しかし、彼らの侵攻は止めなければならない。この世界を壊されたくなければ」

「どのようにして?」

「それが君の乗ったであろう存在、さ」

「どうして、そんなことを先生が知っているので?」

「さぁねぇ」

とぼけるベルナール。

「ま、それは置いといて。君の乗ったあれは鎧神慨装、って言ってね。何の制約もなしに単独で次元を超えられるシロモノ・・・まぁ、反則技なのさ。あれは人を選ぶ機械でね、意思を持っているんだ。そして、君は選ばれたのさ、その魔人にね」

「それはどこにいるんですか・・・?」

「どこかの次元じゃないかな。あれはそういうのだ。今日みんな何事もないかのように過ごしているだろう?あれは世界の修正力さ。大いなる意思のもとで行われているんだってさ。そして、その鎧神慨装もその意思が作りだした救世の器」

「・・・・・・・」

「名前はカイザリオン。次元世界を司る、皇帝さ」




 扉を開け、退室する廻にまたおいで、とにこやかに笑うベルナール。謎は深まるばかりだった。



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