転
大学からの帰宅途中、ナツキはある人物に話しかけられた。レドナ・プリスコ。どこの留学生かは忘れたが、同じ大学に通う男子だ。
「何の用でしょう?」
少し笑みを浮かべ聞くナツキ。笑いだすレドナ・プリスコ。
「いえ、少し、お相手を」
「・・・・・・なんの?」
警戒するナツキ。顔をゆがめるレドナ。
「ちょっとした舞踏会の、ですよ!!」
その瞬間、街が爆発する。轟音を上げる街の中を、一人の男は笑って立っている。その背後に現れる機械の化け物たち。
「こんな、街中で・・・!許さない!」
「ほう、どうすると?」
「来なさい、エクシオン!」
はるか上空より飛来する戦の女神。その衝撃波で周囲の機械を蹴散らす。
「いいですよ、フフフ・・・」
レドナはまだ嗤う。
「じゃあ、僕も行きますよ。アイケンアイザー!!」
大地が膨れ上がり、そこから這い出てくる機械。
「行きますよ、アイケンアイザー!」
「させるものか!」
降り注ぐ閃光。
「ギャザッシュシャワー!」
再び降り注ぐ閃光が機械を駆逐する。
「ミライ!」
「・・・待たせたわね」
「俺も居るぜ!」
ミライ、コウガがカイザリオン、アークセイバーを駆ってきたのだ。状況は三対一。しかし、レドナのアイケンアイザーは後退する気配を見せない。
「まだ、これからですよ、ショーは・・・!」
不格好なアイケンアイザーはその身体で突進してくる。エクシオンが回避する。そして、アークセイバーの攻撃がアイケンアイザーを襲った。
「うほぁぁ?!」
レドナは驚いた声を上げる。アイケンアイザーは倒れこむ。
「何故、僕がぁ・・・」
「諦めなさい」
ミライが呟く。
「いやだ、いやだぁ、い、や、だーーーーーーーーーーーー!!!」
立ち上がり、咆哮するアイケンアイザー。膨れ上がるその機体。
「何が起きてるんだ・・・?」
「進化、している・・・」
ミライ、コウガが呟く。
「僕は、負けないよぉ・・・」
二倍に膨れ上がった巨体を揺らすアイケンアイザー。
「これで、皆死ぬよぉ」
集束する光が三機を捕らえる。
「そうは、させん」
乱入する影。
「誰だ?!」
「・・・答える義理はない!」
黒い、ジャッジクロスがそこに居た。黒いそれは背に携えた何十もの刀剣を空に投げる。剣がアイケンアイザーを囲むように突き刺さる。
「剣示結界!」
光の刀が地より突き出て、アイケンアイザーを貫き、押さえる。
「全てを、斬る・・・黒竜刀、白竜刀!!」
ふた振りの刀を振りかざして切り裂く。アイケンアイザーの血が降り注ぐ。
「うぎゃああああぁぁあぁぁああああ!!だ、脱出する!!」
爆発する巨体。肉片が空を舞う。
「切り捨て御免・・・」
そう言って消え去る黒いジャッジクロス。
「いったい・・・?」
三人は何があったのかを解せないでいた。
黒いジャッジクロス。それはベルナールのもとを訪れていた。
「・・・お前、か」
「久しぶりだな、ベルナール」
ずかずかと、部屋に入り込み、近くの椅子に座る。
「・・・あれが今の戦力、か」
「すくない、だろう」
「夜剣廻は?」
「・・・」
肩をすくめるベルナール。
「どこにいるのか、ね」
「・・・」
「おい」
「ん」
「肉体はあと、どのぐらいだ?」
「わからない。けど、長くはないね」
「そうか。・・・・・・なぁ、親父」
「うれしいね。こんな僕を父と呼んでくれるのかい?」
「・・・」
「フフフ・・・やさしいね、顔に似合わず」
「・・・親父」
「ありがとう、でも、心配はいらないよ。だから、彼らを、頼む」
「承知、した」
「少し、疲れたな。悪いけど、眠らせてもらうよ。お休み、カイン」
「あぁ・・・いい夢を・・・」