転
死を予感し、二な目をつむった。ただ一人廻のみがそれに足掻く。
(兄貴・・・ナツキ・・・っ!!)
手を伸ばせば、届く。世界はこんなにも近いのだから。感覚的に糸を手繰り寄せ掴む。ただそれだけ。エクシオンとジャッジクロスを‘掴む’。
(行ける!)
光が満ちる前にカイザリオンと二体はその世界より離脱する。
コウガ、ミライ、ベルナールが一斉に目を開けると、そこは高校だった。あの戦いの影などない、平和な世界。生きていることはわかる。どうやって生き延びたのかは、わからない。
「・・・廻?」
そこには、廻だけがいなかった。どこを探してもいない。次元世界、世界各地を思い当たる場所は全て探した。だが、見つからなかった。
夜剣廻の失踪。
「どこにいる、廻・・・!」
二人の息子に居なくなられた夜剣夫妻は日に日に痩せこけていった。その顔に望みはない。
だが、ナツキ・エリクセンは信じていた。ただ、廻の帰還を。そんなナツキを不憫そうに見る面々。
「こうしてはいられない。奴らを、この世界を奴らから、守らないと・・・!」
悔しげなコウガの声。
「カイザリオンは残っている。今は廻なしで戦うしかない・・・」
操者なきカイザリオン。どこか、寂しげに見える。
「私がカイザリオンに乗るわ。うまく使えるかは分からないけど」
ミライが言う。地震はなさげである。
「エクシオンは?」
「・・・本来の持ち主に・・・渡すわ」
そう言ってナツキに意味深な瞳を送るミライ。その瞳の中の感情を読み取ることはできない。ベルナールも、コウガも。
こうして、一学期は過ぎていく。廻のいない世界。しかし、それでも、時は過ぎていく。残酷なまでに。そうして風化する夜剣廻の記憶。ただ少しの人間たちの中に、彼がいた、という記憶が残るのみ。
廻のいない世界を眺める夜剣奏。そして、サイガ・レイテ―。
「これからどうする?」
「お前は治療に専念しろ。俺は廻を探す」
「・・・奴がいなければ、次元の統一は不可、か」
「そうだ」
「・・・あの二人は?」
「リアはあの方のもとに居るが、もう一人は知らん。リアも、な」
「・・・そうか」
「傷が治るのは、当分先だな」
「それまでに、奴がどれだけ強くなっているかな?」
「一度負けているだろうに・・・」
「あれは鎧神慨装に負けただけ。コウガが勝ったわけではない」
「ふん・・・」
次元の歪みが開く。
「何処に行く?」
「奴を、探す」
「何故?」
「悲願の成就のために」