黒鳥の舞
ベルナールの言葉を聞き、コウガは憤怒する。
「ッ、サイガ・・・!」
カウンセラー室に響く拳の音。へこむテーブル。深刻な顔をする面々。
「敵は強大だ。予想よりはるかにね」
「そうね。今までにないほどの戦力を持っている。この戦いで、全てを終わらせるつもりかしら?」
ベルナール、ミライが言う。
「そんなこと、させない・・・」
静かに闘志を燃やす廻。
「ごめん、廻。俺、先にカタをつけたいことがある」
先の話でサイガ、という人物がコウガの追う人物であり、越えなければならない「壁」なのだろう。本来関係のない自分に協力してくれるコウガに感謝している廻はただ頷いた。
それをみてコウガは部屋を出る。サイガがどこに居るかは分からないが、近くで見ていることはわかっていた。
「待っていろ、サイガ・・・!」
あちこち歩いたものの、サイガの気配はなかった。夕日も沈みかけ、今日は諦めようとしたその時、奴は現れた。
「わざわざ、死にに来ましたか・・・」
振り返ると黒髪の男が立っている。
「サイガ・・・」
「久しいですね、コウガ。ですが、ここであなたも終わりです」
歪みだす空間。
「よろしいですよ、奏」
『承知した』
そして世界を移動するコウガとサイガ。
そこは霊皇界であった。気が辺りを満たし、木々が生い茂る文明とは程遠い地。
「ここで、決着をつけさせてあげましょう」
腕を構えるサイガ。そして飛び掛かる。
「獣心装を使うまでもありません。拳のみで戦いましょうか」
「・・・・・・」
それを交わし、カウンターを仕掛けるコウガ。それを受け止めて右の拳でコウガを殴る。吹き飛ぶコウガ。
「実力の差が大きく出ますね、やはり」
「くっそ・・・・・・」
血を吐き出すコウガ。口を拭う。
「それでは、お友達も救えませんよ?」
「黙れっ!」
飛び掛かるコウガ。正面から受け止め肘を打ち込む。
「かはぁっ!」
「甘い」
そして何度も技を叩きこむサイガ。
「撃、双、天、凝、印、刹、僻、龍、鵬!」
そして最後の一撃が襲う。
「鳳凰!!」
そこに割り込む影。
「悪いけど、そこまで」
クラーク・ベルナールだった。サイガは軽やかなステップで離れる。
「・・・」
「無事か、コウガ!」
「廻・・・」
廻にミライまでもいた。
「どういうおつもりで?」
サイガが聞く。
「仲間なんでな。やっぱり放っておけないんだよね」
ベルナールが言うと、頷く廻。
「仲間、ですか。素晴らしいですね。では、」
サイガの影より現れる巨鳥。
「仲間もろとも嬲り、喰い殺して差し上げましょう、コウガ!!」
「カイザリオン!」
「アークセイバー!」
「エクシオン!」
三機の機体が現れる。そしてその上空に舞い上がる黒き鳥。
「鎧神慨装の力も見せていただきましょう。では参る・・・」
「もう一機居るんだよね」
頭上より降りかかるギロチンの刃。それを交わす黒鳥。
「このアークスタッドに迫るとは・・・!」
「新たな我が機体を刮目せよ。審判の刃、ジャッジクロス」
立っていたのは白いのっぺらぼう。特徴も何も存在しないような真っ白な機体。
「おもしろく、なりそうですね」
サイガの血は湧きあがっていた。こうして強者たちと戦えることこそ、彼の真の喜びであるかのごとく。
黒鳥が空を舞う。