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戦う理由

 兄の失踪。両親の記憶からはすっぽりと、「兄」の存在が消えていた。あの時、あの場に居た者以外の記憶から、兄の記憶は無くなっていた。ナツキさえも。

「彼自身の力によるものです」

謎の少女、ミライ。何故か廻の家に住んでいる。両親も何も言わない。響は廻の知らないことを話してもらうために、ベルナールも来ている。当然ながらコウガもいた。


「まず、何から?」

「・・・あなたはいったい?」

少女の問いに答えた廻。

「私はミライ・Y・ハヤミ。他次元からいました」

「何故、鎧神慨装を持っている?」

「何も鎧神慨装が一つしかない、というわけではありませんよ。過去、現在、未来。どの時点においても複数の鎧神慨装が存在しています」

「兄貴との関係は?」

「前の世界、ベルナールさんもいらっしゃった世界で少し」

ベルナールを向く少女。白髪の男は特に何も言わない。

「私も、あなたたちと似た存在ではあります。螺旋を止めるために奔走している点でも、同じ鎧神慨装の担い手としても」

「兄貴は自分のことを『ヤツルギ カイ』って言っていた。あの意味は?」

廻の質問。

「それには僕が答えるよ」

ベルナールが話し出す。

「彼の本名は夜剣 廻。世界によってはナイトブレイドとも呼ばれている。こことは違う世界、違う次元のヤツルギ カイ。ゆえに君と彼は同一の存在であった、というわけだ」

「兄貴と、僕が?」

「うん、そう。彼の世界は滅びてしまってね。それ以来、同じ存在を助けて滅びの連鎖を止めようとしてきたんだけれども…」

「彼は敵の手に堕ち、自らが憎むべき存在となってしまったのです」

少女が話し出す。

「元々、あなたたち『夜剣 廻』には暗黒面が存在します。いえ、全ての人間の中に。しかし、彼の中には余りにも多くの闇があったのです。他の次元でも、墜ちたヤツルギ カイはいましたが、あれほどの力を持った者はいなかったのです」

「なーんか、誰かが実験している気がするな、それ」

コウガが言う。頷く少女。

「破壊者ヴァーウル。全てはこの謎の存在の始めたこと。いつ始まり、終わりを迎えるのか知れない戦い、なのです。その中心に居るのは、夜剣 廻。あなたです」

「・・・・・・何故、僕なんだ?」

「あなたが、鎧神慨装の、カイザリオンの担い手だから」

「あなたがやればいいだろう」

「私では無理なんです、そうしたくても。この螺旋を終えることのできる人物はあなただけなのです」

果てしない戦い。その戦いを終わらせるのも、始めるのも夜剣廻なのだ。宿命。運命。そのようなものがあるとしたら、このようなことを言うのだな、と廻は思った。

「少し、考えさせてください」

そう言って家を出る廻。


 街の中を歩く。いつもの光景。戦いのない、穏やかな日常。そこに居る人々の平凡な顔。戦いがうそのように感じられる。うろうろしていると、彼女に会った。

 ナツキ・エリクセン。

「あ、廻!」

廻の姿を認めると走り寄ってくる少女。

「今日はどうしたの?最近、何かに悩んでいるようだし・・・」

心配そうに見つめてくるナツキ。その瞳を覗き込む廻。知らないうちに彼女の背を超えていた。

「ナツキは、さ。もし、自分にしかできなくて、でもそれで、多くの人を死なせてしまうかも知れないとしたら、それをやるか?」

なんとなく聞く廻。

「・・・私は、ね。できないと思う。多分。だって怖いもん。自分がかわいいんだよ、やっぱり。でもね。廻のためならできると思うよ。きっと、そういうものなんだよ。身近な人を守りたいから、みんな何でもできる。仕事だって何だって、それは言えることだと思う。廻の悩んでいることはわからないけど、廻の望んでいるようにやればいいと思う」

そして一息入れるナツキ。

「それはきっと、間違ったことなんかじゃ、ないから・・・」

はっきり言うと驚いた。彼女という人間を僕は知らなかったのだ。まさか、こうも彼女が考えているとは。

「ありがとう、ナツキ」

お陰で決心がついた。

 君と、この日常を守るために僕は戦う。相手がたとえ、兄であろうと。


 彼が家に戻ると、少女とベルナール、コウガがいた。

「決意は決まったようですね」

「これからが厳しいけれど」

「俺たちが付いているよ!」

三人が言う。自分には仲間がいる。共に闘う仲間。そして、守るべきものがある。理由なんてそれでいい。



 宿命も、螺旋も関係なく、己の意思で。少年は歩み出す。



アルクォーネ・・・形式ナンバーκ―T1Δ+∀。カイザリオンの負の姿。能力的にはほぼ変わらないが、ギャザッシュカノンよりも射程の短く威力の高いギャザッシュマグナムを使用する。

アルクォーネΧ(カイ)・・・アルクォーネがグラシャスと融合した姿。能力的にも大幅にパワーアップしており、修復能力が高い。詳細は不明。

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