決別の定め
白い装甲は光り輝き、その背からは天使の翼が生えていた。神々しいその機体はアルクォーネの前にゆっくりと舞い降りる。
『エクシオン、だと・・・?馬鹿な、そんな鎧神慨装存在するはずがない!』
奏の声。彼自身始めて見る機体に動揺しているのだ。
「ふふふ、数ある世界のすべてを知っているなんてうぬぼれを抱いていらっしゃるの?」
笑いながら問いかける少女。
『ふん、その減らず口を閉じさせてやろう・・・ギャザッシュマグナム!!』
「喰らうものですかっ」
放たれ、複数に分かれる光弾を難なく避ける少女の機体。
「お返しよ!天征亮・華月夜!!」
エクシオンの翼より無数の影が現れて、アルクォーネを襲っていく。ビームフィールドを張り、防御に徹するが影はそれを貫き、肉薄する。そして串刺しになるアルクォーネ。
「やった、のか?」
コウガが呟く。それを見ていたベルナールが答えた。
「いや、あれでは彼は死なない。彼はヒトではないからね・・・」
その言葉通り、立ち上がり修復していくアルクォーネ。半分以上抉られた胴も、斬り落とされた両腕も瞬く間に回復していった。
『この程度で俺は死なない・・・』
「さすが、ですね。でもこれでおしまいにします」
再び出てくる影。放たれたそれを避けるアルクォーネ。
『同じミスはしない!』
「その判断があなたの敗因です!天征亮・爆四散!」
狙いを外れた影が突如爆発する。連鎖して次々と爆発する影。それはアルクォーネを囲み、炎の檻を形成する。
「最終審判・・・」
舞うように飛び上がり、空間よりひと振りのレイピアを取りだす。顔の前で構え、急降下する。
「・・・・・・滅、殺、印・・・!!」
光を纏うエクシオン、魔人の足元に魔法陣が出現する。
『動けぬ・・・!?』
「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
飛び込むエクシオン。斬り伏せられるアルクォーネ。上半身と下半身は断たれている。その傷口はジワジワと焼けていく。
「斬った場所がどんどん燃えていきます。再生は無意味です」
少女の宣告。上半身を両手を使って起こすアルクォーネ。その身体は徐々に消えていく。
『・・・・・・・・・・・・・』
沈黙が辺りを包む。ぱちぱちと燃える音のみがあった。
「さぁ、ここで終わりに・・・・・・」
『フフフ、それは無理だな・・・』
奏の声。
『我が真の力をまだ出してはいない。子供の遊びは終わりだ。行くぞ・・・・・・!!』
宙に浮きだすアルクォーネ。未だ傷口が燃えていたが、それも消えた。そして再生していく魔人。
『再生のみに終わらない・・・より強くなる・・・』
機体の装甲が禍々しく変化する。頭部の角がより伸びていき、背部より、悪魔のような翼が付き出て形を成していく。周囲に満ちる負のパワー。
「まさか今ので・・・?」
呆然とする少女。
『戦えば戦うだけ、この機体は強くなる。我が半身をなめるな・・・』
胸の前に収束するエネルギー。
『消えろ、そして嘆くがいい』
放たれる光線。ビームフィールドを展開するエクシオン。
「くぅ・・・駄目・・・」
力負けしているのは明らかに少女である。このままでは負ける。
廻は自分の力で兄を止めることは無理だとわかっていた。だが、このままでいいわけがないのだ。だから彼は兄に向ってカイザリオンを走らせる。
あんたは僕にとって、最高の兄貴だ。今までも、これからも!だからあんたが間違いを起こそうとするのを止めてやらなければいけない!使命感のようなものが少年の胸の中にはあった。
「兄貴!止めて見せる、あんたを」
『俺の助けなしには何もできないお前には不可能だ!たとえお前が夜剣廻だとしても!』
兄弟の戦い、これも定められた運命なのか。ベルナールは朽ちた機体の中、そう呟いた。