彼方からの使者
昼の授業。廻は上の空だった。ベルナールがどうなったのか、気になって仕様がない。なんだかんだ言っても彼も自分の味方なのだから。その廻に小声で話しかけてくるコウガ。
「もしかして何か来たのか?」
「・・・あぁ。今、ベルナール先生が戦っているんだ」
「助けに行くか?」
「この状況で?」
「気で幻影を作る。これでしばらくは・・・」
何か念じるように目を閉じるコウガ。その瞬間、コウガと廻は二人になった。その隙に廻はカイザリオンに転移を頼む。二人の本体が転送され、幻影のみが教室に残った。
二人とカイザリオン、アークセイバーは荒野に立っていた。見飽きた風景。滅んでしまった世界の名残。
「おい」
コウガが指差す先で行われていた戦闘。赤い翼をもつものに一方的に嬲られるグランマッシヴ。大地に沈むその機体。
「助けるぞ、コウガ!」
「承知!」
二人が己の機体に乗り込む。目を光らせて走り出す、二機。その二機を認めると、赤い翼の敵が寄ってくる。
「待て!今の君たちではそいつには、グラシャスには・・・!」
ベルナールの焦った声。普段は出さない彼の声から、危険を感じるが、このままでいいわけがない。カイザリオンが両腕より、刃を出し斬りかかる。挟み打ちをするように、後ろに回り込み、爪を振りかざすアークセイバー。
両手を広げ、バリアのようなものを張る、グラシャス。二機の攻撃はそれの前に阻まれる。
『怨』
それは何かを発する。同時に、弾き飛ばされる二機。駆け寄る、ぼろぼろのグランマッシヴ。
「大丈夫かい、二人とも」
「あぁ」
「はい」
立ち上がる二機。三機を前にしても微動だにしないグラシャス。
「あれは?」
廻が問う。
「グラシャス。僕らの戦う次元破壊者の一体。ヴァーウルの右腕」
『フフフ、未熟だな、貴様らは』
喋りだすグラシャス。
『ゆえに取り込みやすいのも事実』
グラシャスの両腕に収束する力。
『螺旋を終わらせはしないぞ・・・!』
放たれる、エネルギー。三機を襲おうとしたその時。ビームの膜がそれを阻んだ。
『・・・・・・アルクォーネ。ナイトブレイドか・・・・・!』
上空より飛来した白い鎧神慨装。
「無事か、廻、コウガ、ベルナール」
「この声…兄さん!?」
「やっと来たか」
「・・・・・・」
三者三様の反応。忌々しげに顔を歪めるグラシャス。
「さて、ここで芽を摘ませるわけにはいかない。行くぞ、グラシャス。とくと見るがいい。運命に背きし我が姿、業の深さを味わうがいい!」
空を奔るアルクォーネ。迎え撃つグラシャス。上空を自由に飛び回る二体。
「ギャザッシュマグナム!」
放たれた攻撃を受け止めるグラシャス。瞬時に駆けよるアルクォーネ。それを察知し、避けようとするが、
「遅い!」
両腕取り刃を出して、繰り出される斬撃に圧倒されるだけである。止めとばかりに、足で蹴り飛ばし、地に叩きつけるアルクォーネ。
『くくくくく・・・・歴代最強とはいったものだな』
呟く怪物。
『無数の世界。その中でも、特に貴様だけがその異能に至った。我々にはその異能が必要だ…』
笑いだすグラシャス。
『和つぃの命を引き換えにでもなぁ!!』
飛びつくグラシャスを斬り伏せようとするアルクォーネ。身体は裂かれ、首の身となったグラシャスは口を大きく開き、アルクォーネに噛みつく。
「いけない!奏、叩き落とせ!奴は君とそれを取り込むつもりだ・・・!」
ベルナールが叫ぶ。
『ふはははははははは!もう、遅い。融合はすでにはじまっている!』
頭を抱え出すアルクォーネ。首がその身体に溶け込んでいく。最悪のシナリオが幕を開けようとしていた。