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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
悩みの種

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商売計画

 支部長に許可を取った後、そのままオレークとその周りを引き連れて街を歩く。

 話は食事の時にとしたので、街に出ると今度はオレークの道案内が始まった。

 この街の遺跡の数やら、冒険者の傾向。自分が今どんな暮らしをしているのか、そして街に点在する美味しい飲食店の話。


 冒険者に限らず、人々は自分の行動範囲でしか食事をしないことが多く、オレークのように街中の飲食店を食べ歩く者は稀だ。

 ハルカのためにと紙に特徴などをまとめたものまで作っているらしい。

 オレークのそんな趣味、というよりハルカのための活動は、少しずつ街の冒険者たちに知られるところとなっているらしく、界隈には割と顔が利くようになっているのだそうだ。


 趣味が高じたのか、屋台をやっているような店や、普通に物を売っているような店までチェックを入れているらしく、ハルカが尋ねる前にあの店はこうで、この店はこうで、と教えてくれる。

 三年足らずの間に街の隅々までよく調べたものである。

 しかもこれを冒険者と子育てをしながらやってきたというのだから驚きだ。

 相当忙しいはずだけれど、その表情は生き生きとしていた。


 西門までつくと一度集団と別れて、急いで二人と一匹が待つ場所へ向かう。

 障壁に乗ると、何やら考え事をしていたコリンが腕組みをやめて話し始めた。


「さっきのオレークさんのやつさー、商売になるよねー」


 ハルカもちょっとだけ思っていた。

 あまりに人力の力技だけれど、やっていることは元居た世界にあったグルメナビサイトとかと同じようなことだ。


「街の情報屋、みたいな感じでやってたら普通に暮らしていけそう。裏の話とかじゃなくて、表の商売の話でね。各街に一つずつ作って、飛竜便とかで連携するの。街をつなぐ街道がもうちょっと安全になると、旅する人とかも増えると思うんだけどなー……」

「コリン……?」


 自分の世界に入って一人でつらつらと話し続けるコリン。

 ハルカの声掛けにも反応はない。


「お金持ってる人だったら、飛竜に乗って出かけたりとかもできそうだし……、あー、提案してみようかな、スコットさんに。馬車だと行き来に時間がかかっちゃうから、仕事に支障が出るけど、一カ月かからないんだったらいける人とかもいそうだし……。だったらやっぱりその街特有の名物とか欲しいよね、お土産とか。人だけ運ぶって考えたらやっぱり竜だよねー……。うーん、ハルカ、どう思う?」

「えーっと、かなり先進的な考え方かなと思います。うまくいけば商売にはなりそうですが……。ええっと……、他の街の情報を届けるところからでしょうね。コリンの考える通り、その街に行ってみたいと思わせることが大事になると思います」

「お前らなんの話してんだ?」


 アルベルトは途中からずっと首をかしげていたけれど、ハルカまで話に入り始めてついに疑問を口に出した。


「だからー……、ま、いっか。拠点に帰ってからまた考えよーっと」

「そうですね、落ち着いてから」

「街同士の連携が簡単になると、商売敵とかできるですし、他の国も含めると国にも目を付けられるですよ?」

「その辺はほら、すでに飛竜便してるスコットさんに任せてさー……」


 モンタナが突っついたことで、コリンの話が再開してしまう。

 今度はそっちで真面目な話し合いが始まったので、ハルカはそっと場所を移動してアルベルトのフォローだ。


「私たちは街道を歩いて……、まぁ、空も飛びますが、とにかくいろんな街に行くじゃないですか」

「冒険者だからな」

「街にずっと暮らしてる人も、実は他の街を見てみたいって気持ちはあると思うんです」

「……冒険者になればよくねぇ?」

「うーん……、腕っぷしが強くなくても他の街に出かけられる、ってところが商売になる部分ですから。ほら、例えば岳竜様とか、あんなにでっかい竜、一生に一度くらい見てみたいじゃないですか」

「あー、ちょっと分かったかもしんねぇ。そうだよな、あれ見るだけでおもしれぇもんな」


 スケールの大きなものの話をされてなんとなく理解したアルベルトは、ようやく話に入れたと頷いて納得している。案外この話は、世界をまわって見てみたいと思っている冒険者の方がしっくり来るのかもしれない。

 逆に言えば、街で全てが完結している人たちにとっては、面白そう、どころか恐ろしい、の方が勝りそうだから、すぐに成功するかと言えば難しそうだ。


 話が丁度途切れた頃に、ナギの大きな体が見えてきた。

 ハルカが認識したころにはグイっと首が上がって正面から目が合った。

 どうやら大型飛竜というのは、気配を察知する能力にも長けているようだ。


 障壁からナギの背中に居場所を変えて、やってきた空路をとんぼ返りする。

 北門の外にある平地。

 山の方には間違っても着陸しない。


 言い聞かせればナギはそれでちゃんと理解をしてくれる。


「とりあえず街に着いたらオレークさんと合流します。以前お話しした知人ですね。街のお店全般に詳しいようですので、一緒にお食事をすることになりました」

「ふーん、助かるね」

「……その他にも、十数人と一緒に食事をすることになりますが」

「……え? どうしたらそうなるの?」

「説明します」


 ヨンやジーグムンドとの再会、拗れた冒険者たちの関係から、オレークのでかい声までの説明。

 イーストンとユーリは楽しそうに笑って聞いて、最後に一言。


「本当に、ハルカさんって飽きないね」

「ママ、かわいい」


 ユーリの感想はともかく、笑ってもらえただけよかったかなとハルカは遠い目をするのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 体が大きいから仕方ないけど毎回お留守番させられるナギが可哀そうだなって思ってしまう
[気になる点] ここしばらく感想返信が無いのってやっぱりお忙しいからですかね? [一言] 情報は武器にもなるからなぁ
[良い点] いろんなところに旅に出れる。このレベルの発展度と町の外の危険度だともう冒険者の特権みたいなものですね。
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