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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
拠点付近の大わらわ

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鶏肉

 レジーナには政治的な話がわからない。

 というか、建物の中に入って座って会話することに、なんらかの意義を見出すことができない。

 そのためハルカに断りを入れて、外に残ることにした。


 建物の外にはハーピーを閉じ込めた檻がたくさんあって、周りには血気盛んなリザードマンの兵士たちがいる。

 場合によってはちょっとした手合わせが発生したり、トラブルによりハーピーたちを叩きのめすような必要が生じるかもしれないと思っていた。

 どう考えたってこっちにいる方が有意義だ。


 ニルに負けてからというもの、レジーナはちゃんとリベンジのための計画を練っている。力量が著しく離れていたわけではなかった。

 今なら勝てるような気もしている。

 その前座として、リザードマンの兵士と是非一戦交えたい。

 リベンジをしっかり果たすためには、尻尾を使った独特な闘い方に慣れておくのも一つの手段だろう。


 そんなことを考えながらぷらぷらと歩いていたが、うろついているやつをじっと見つめてみても、ハーピーの檻に近づいてみても、なぜかリザードマンの兵士たちは喧嘩を売ってこない。

 冒険者相手だったらとっくに声をかけられていそうなものなのにおかしい。


 そう思いながら、レジーナは険しい表情で檻の前で腕を組んでいた。


 リザードマンたちからしてみれば、レジーナは王の連れだ。その上この特徴的な服装の小さな女性が、ニルといい勝負をしたという話を聞かされている。

 好戦的な目で見られようが目は合わせたくないし、檻に近づこうが、暴れない限り放っておくつもりだ。


 レジーナがしばらく檻の中をじっと見ていると。先ほど地面に叩きつけたハーピーが目を覚まし、辺りを見回してからキッとレジーナを睨んだ。


「ミアー起きタ!」

「ミアーも捕まっタ……」


 周りのハーピーたちが騒ぐ中、ミアーと呼ばれたハーピーは腕を縛られているというのに器用に立ち上がり、レジーナに歯を剥いてみせた。


「人間が、不意打ちデかっタト思うなよ」


 檻の中から威嚇されても何もできやしない。脅威でもなければ、敵にもならなそうなミアーの言葉に、レジーナはただちょっとだけイラッとしただけだった。

 舌打ちをしてよそを向くと、何を勘違いしたのか、ミアーは足で檻を蹴り飛ばして罵る。


「開けろ! アタシはまダ負けテないぞ! このチビ、バカ、アホ!」


 手を出されないからって言いたい放題だ。実際実力の差を理解できていないらしく、というか、何が起こったのかもよくわかっていないミアーは、鉤爪もなければ翼もない、同じくらいの体格の人間なんかに負けるはずがないと思っていた。


 レジーナの首がゆっくりと戻ってきて、真正面からミアーの目を睨みつける。


「悔しかっタら、正々堂々と、もう一度勝負しろ! べろべろばー」


 挑発して開けさせて、そこから逃げ出してやろう、そんなつもりのミアーはレジーナをバカにして舌を出した。


 レジーナは一歩前へ出てミアーに近づく。檻スレスレに近づいたレジーナに対して、ミアーは噛み付くような仕草をして幾度か歯を鳴らし続ける。


「お前らなんかここから出タら食っテやるからな! 臆病者の卑怯者!」


 そう言ってまた檻を蹴り飛ばしたミアーの足の鉤爪の一つをレジーナが掴む。


「何すんダぁあああああ」


 そしてレジーナは迷うことなくその爪を上方向に折り曲げた。

 ミアーの悲鳴が上がり、ハラハラと見守っていたリザードマンが慌てて近づいてくる。


「食ってみろよ、鳥が……! その前にお前ら全員あたしが食ってやる、ピーチクパーチク囀りやがって、こっちに来やがれ!!」


 檻の中に無理やり手を突っ込んだレジーナは、檻の中で転げたミアーの足首を掴み、外へ引き摺り出そうとする。

 ミアーは無事な方の足を使い、全力で何度もレジーナの手を蹴り飛ばすが、びくともしない。それどころか締め付けがさらに強まり、骨が嫌な音を立てて軋む。


 そこでミアーはようやく目の前にいる小さな人間の女性が、恐ろしい生き物であることに気がついた。

 ボキッと決定的な音がして、ミアーがまた高い声で悲鳴を上げる。


「やめろやめろ! 食わない、嘘! アタシ人食べない! タすけテ、タすけテ! ああああ、タすけろ! 痛い、いタぁああい!」

「やめテ! ミアーが死んじゃう!」

「許しテ! 人食べない! 食べないデ!」


 うつ伏せになって必死に仲間たちに助けを求めるが、仲間たちは懇願するばかりで動こうとしない。

 体が無理やり細い檻の隙間から外へ引き摺られていく。体が外へ引かれるたび、体の表面が柵で削られる痛み。


「れ、レジーナ、ちょっと待ってください、何してるんです?」

「あ? 食うんだよ、こいつ」


 聞かれたことに正直に答える。

 破壊者ルインズなんて、それも人に極めて近い形をしているハーピーなんて食べたことはなかったが、あちらが食べるというからには、こっちだって食べてやる気だ。

 おふざけや冗談で言っているつもりはない。


「待って待って、待ってくださいね、ちょっと事情を聞かせてください、お願いですから、一度その手を放して」


 まずは話を聞くと言っているハルカを見て、レジーナは仕方なく指示に従ってやることにした。

 ミアーの足を放り捨てるように放して、やめてやめてとうるさいハーピーたちに向けて、歯をカチンと鳴らして威嚇する。

 先ほどミアーがやってきたことをそのままやり返してやっただけだ。ハルカとの話の如何によっては泣こうが喚こうが、まだ本当に食べるつもりでいる。


「レジーナ? 何事でしたか? なんか嫌なことされました?」


 怪我をしているハーピーの方ではなく、まず自分の方に来たハルカに、何故か少し気分が良くなったレジーナは、ふんといつも通り鼻を鳴らして、事の次第を語ってやることにした。

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― 新着の感想 ―
正直、可哀想は可愛いし興hゲフンゲフン。とにかくかわいい。
[一言] さすが鳥頭w
[良い点] 私は唐揚げがいいと思います。
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