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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
暗闇の森とリザードマン
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小さくて怖い

 夕食を終えた後に、ノクトが『楽しみに』と言っていた小屋へハルカと仲間達が向かう。後ろからついてきているノクトは楽しそうにしているが、つまり妙なことが待っている可能性を、流石のハルカも予測していた。

 ちなみに夕食時には合流していたレジーナも、ノクトと並んで後ろについてきている。レジーナは割と一人で行動することが多いので珍しいことだった。


「ハルカは何があると思う?」

「うーん……、なにか本当に楽しいものだといいなぁと思っています。燻製小屋とかだと嬉しいですけど」

「他の建物より優先して燻製小屋は作らないよね」

「まぁ、そうでしょうね」


 小屋の前に着くと、ノクトが前に出てドアをノックする。


「今からドアを開けますからねぇ」


 返事はなかったけれど、時間を少しおいてからノクトが扉を開ける。ハルカ達が覗き込むまでもなく、中に数人のリザードマンが座っているのが見えた。


「…………師匠、これは?」

「はい。一昨日の夜にあっちの森からこちらの様子を窺っていた方々です。他の方々に見つかると不味かろうと思って、全員レジーナさんにのしてもらいました」


 ハルカはなるほどと思う。それが理由でレジーナは今回ついてきたのだろう。他人に興味を持つのはいいことだ。ハルカがレジーナの方を見ると、意見を求められたと思ったのか、レジーナが口を開く。


「前に来た奴の方が強かったぞ」

「あ、そうですか。何をしに来たんでしょう」


 その質問には答えが返ってこなかったので、ハルカはノクトの方を見たが、首を横に振られてしまった。


「そういうのはあなた達が戻ってきてからしてもらおうかなと思いましてぇ、障壁で囲ってここまで連れてきたわけです。大工さん達に壁と屋根を作ってもらいましたが、珍しい魔物を捕まえたと言ったので、小屋ができてから誰も近づいてませんよぉ」

「あー、そうですか。それはありがとうございます。お食事とかは?」

「一応毎日水と携帯食料は渡してますね。食べるものは私達とそう変わらないので問題ないはずです」


 リザードマン達は扉が開いても襲ってくるわけでもなし、黙って静かに床に座っている。騒ぎ出したりしないところを見ると、話の通じない相手というわけではないらしいと判断して、ハルカは一歩前に出て声をかけた。


「静かに出て、森の方へ行きましょう。他の人に見られてしまうと混乱が起こるので」


 こくりと頷いたリザードマン達は立ち上がる。それに合わせてハルカは小屋の前に障壁の箱を作った。おそらくノクトがここに運んできた時と同様、障壁に黒く色をつけて中が見えないようにする。


「中に入ってください、運びます」


 リザードマン達は警戒したように動きを止め、中に入ろうとしない。おかしいと思いハルカはもう一度声をかけた。


「大丈夫です。あなた達をここに運んだのと同じものですから。何も危害を加えたりはしません」


 互いに目配せをして、諦めたようにリザードマン達が障壁の中に入るのを確認してから、ハルカは入り口を閉めて、そのまま障壁を森の方へと移動させた。


 ゆっくりと移動することしばらく、暗闇の森の端まで辿り着いたところで、ハルカは周囲を確認する。


「モンタナ、周りに人はいませんか?」

「大丈夫です。誰もいないです」


 確認をとって障壁を解除すると、リザードマンが三人、中から姿を現す。三人ともが妙に緊張していて、障壁を解くとホッと息を吐いたのがわかった。


「居心地が悪かったですか?」

「いや、とんでもねぇ!」


 三人一緒に首を振る様子はちょっと滑稽で面白い。


「多分ですねぇ、僕が連れていくときにちょっと脅したせいですねぇ」

「脅した?」

「ええ、ちょっとうるさかったので。騒いだら壁をぎゅーっと狭めて、プチッと潰しちゃいますよぉって言って、ちょっとだけ実演してあげたら静かになりましたねぇ」


 道理で言う通りにして大人しかったはずだ。たまにチラチラとノクトの顔色を窺うような仕草が見えたのも多分そのせいだ。


「えーっと、イルさんと話がついていたはずなのですが、皆さんは何をしに?」

「人間を見てみたくなってこっそり来たらばれたんだ。その、俺たちのことイルさんには言わないでくれねぇかな」

「……行くなと言われたのに勝手に来たということでしょうか?」

「……そうだ。俺たち人を見たことなかったから。イルさんに勝つなんてどんなでかい化け物かと思ったんだけどよ。小さいのに馬鹿みたいに強いし、変な魔法使うやつもいるし、もう二度とこねぇよ」


 確かに本人達は反省しているし、もう来ないのだろうけれど、この様子だと他にも好奇心旺盛な者がいないとも限らない。ハルカ達が先に見つければまだいいけれど、散歩をしている街から来た人なんかに見つかった日には大騒ぎだ。

 あまり軽く見すぎてはいけないと考えたハルカは、少し難しい顔をして口を開いた。


「あなた達はともかく、他にもこういうことをしそうな人はいますか?」

「……いないとは言い切れねぇ」

「そうですか……ちょっと待ってくださいね」


 ハルカは振り返って仲間達に問いかける。


「ちょっと彼らについていって、直接リザードマンと話した方がいいと思うのですが、誰か一緒に来てくれますか?」

「お、俺行くぜ。面白そうだからな」


 真っ先に名乗り出たのはアルベルト。冒険が好きなアルベルトならそう答えるだろう。


「私はー、今回残ろうかな。サラちゃん達も来たばっかりだし」

「じゃあ僕も残るです。この辺の警戒して、他のリザードマンが来ないか見張っておくです」

「僕もパスかな。変に他の破壊者ルインズに接触したくない」

「あたしは行く」

「ええっと、それじゃあ行くのは私と、アルと、あとレジーナさんですね。……大丈夫でしょうか」


 脳筋二人と押しの弱い自分。この旅が無事に済むのかどうか心配になって、ハルカはポツリと最後に呟いた。


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― 新着の感想 ―
何か面白い事が起きそうと言うか、ワクワクするメンツだw
[良い点] 更新お疲れ様です。 ···以前のリザードマンさん達はクソ真面目で融通が効かなそうな印象でしたが、今回のは若いというか軽いというか(笑) 思ってたより多種多様な性格が揃ってる可能性が高そう…
[良い点] おっきなお子さん二人が付いてきてくれるなんて頼もしいですね。 行き帰りにお菓子を買ってあげたくなります。
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