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結果発表

 翌日新加入者の公表がされる。

 そこには喜び、手を取り合う者たちと、黙ってその場を立ち去る者たちがいた。すぐにでも騒いで暴れ出しそうな面々が、何も言わずにぞろぞろと連れ立って去っていく姿は不気味だった。いかにもこれから何かをするぞと言わんばかりだ。


 ちなみに今日もハルカの前後にはユーリとナギが引っ付いている。しばらくノクトの仕事に付き合って缶詰していたので、あまり触れあえなかったのだ。その間寂しかったようで、朝からずっと一緒にいる。ナギはユーリと一緒にいるのが当たり前だと思っているのか、どこに行くにもくっついているという。いつの間にか大きめのイグアナくらいになっていて、廊下を歩いているのを初めて見た人はぎょっとした表情を浮かべることが多い。

 ただ大人しいし、悪さもしないので、拠点内では割と人気者になっているそうだ。モンタナが頭や肩にトーチを乗せ、二人と一匹で並んで歩いている姿は確かに可愛らしい。


 相変わらずモンタナは他の獣人たちと、特別親交がなさそうなのが、ハルカは少し心配だった。


 よく晴れた空の下。

 芝生に座り込んで、加入発表に湧く人々をぼんやりと眺めているハルカだったが、その周りにはぽっかりとスペースができている。

 ハルカの前にはかわいいユーリがいて、背中には珍しい竜がいる。隣ではモンタナが作業をしており、その頭の上でトーチが日光浴。

 平和な光景なはずなのに、新しく『月の道標』に加入した人々は、明らかにハルカのことを避けているように思えた。その証拠に、ダグラスやノクトの周りには人だかりができている。

 確かにハルカは部外者ではあったけれど、避けられるほどのことをしたつもりはなかった。挨拶くらい貰えて、喜びを分かち合えると思っていたのに、予想外の反応に少し寂しい気分だ。


 ちなみにアルベルトは今日も裏の訓練場で、戦闘に明け暮れていた。意外なことに、コリンもそれに付き合っている。体術が得意な相手が多いので、いい訓練になるのだそうだ。ノクトの仕事に付き合ってる間も、時折泥だらけのまま執務室にやってきて、ハルカから治癒魔法を受けて、訓練場に戻っていっていた。

 そうだからこそ、モンタナとユーリたちがセットで動いていたわけであるが。


 広場にいる人たちと目が合わないながらも、その様子を眺め続けていたハルカは、一人、結果を貼りだした掲示板の前にたたずむリオルを見つけた。難しい顔をして、腕を組んでいる。

 受かっているはずなのに、何をそんなに悩んでいるのだろうかと、ハルカは首をかしげた。


 わざわざ国の外までノクトを探しに来るほどだ。結果は絶対に嬉しいはずだ。


「モンタナ、ちょっとリオルを見てきます」


 立ち上がろうとすると、背中のナギが羽をバタバタと動かした。動きに合わせて飛んだ気でいるのかもしれない。

 それを感じながら、ハルカはふと考える。飛び方をおしえるものがいなくても、竜というのは飛べるようになるのだろうか。イーストンの言葉を思い出しても、それについては触れていなかった気がする。特別注意しなかったということは、きっと問題ないのだろうが、心配ではあった。

 今度背負ったまま走って飛ぶ訓練でもしてあげようかと思いながら、ハルカは掲示板の方へ歩いていく。

 なぜか辺りがざわめいたのが見えたので、ハルカは向きを変えて人のいないところを歩くことにした。後ろからモンタナが追い付いてきて、声をかける。


「皆、ハルカのこと気にしてるですね」

「……避けられてません?」

「気になるけど声かけられないでいるですよ」

「何がいけないんでしょうか」




 その疑問にモンタナはすぐには答えない。


 単純に見た目が近寄りがたいことに加えて、ユーリとナギがくっついてるせいで、疑問要素が多すぎるのだ。一つくらい人より抜けているものがあるとそれを理由に声をかける者もいるのだが、盛られすぎてて何から話しかけたらいいかわからない。


 他にも理由はある。


 ずっと執務室にこもっていたせいで、初日以来街中に顔を出していない。街の人間でないのに、面接に立ち会っていた。面接を受けた者は、リオル以外、誰一人として声を聞いた者がいない。

 性格がわからない相手に声をかけるのは勇気が要る。それも特別美人ときたら、なおさらだ。


 色々と思いつく理由はあったが、面倒になったモンタナは、何も言わずに尻尾でとんとんと腕を叩いてやった。

 それに対してハルカは目を細めて、表情を柔らかくする。何も解決はしていなかったが、モンタナは別にそれでいいと思っていた。自分がどう思われてるかわからなくても、ハルカが困ることはないからだ。

 そんなことよりも、ぐるぐると思い悩んでいるらしいリオルの様子が、モンタナも気になっていた。


「リオルさん、合格おめでとうございます」

「あんたか。なんで俺受かったんだ?」

「……あの、私あの場にいただけなので、そういうのは全然わからないです。すみません」

「あんな顔していただけかよ……」

「そうですけど……」


 二人が気まずくなって黙り込むと、ユーリがハルカの頭を撫でる。


「ママ、げんきだして」

「あ、はいはい、元気ですよ。そうでした。私のことより、リオルさんが元気がなさそうなので、様子を見に来たんですよ。どうかしましたか?」


 リオルは、あーとかうーとか言いながら、新人に囲まれているノクトの方を見て、乱暴に頭をかいた。



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