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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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贈る言葉

「わかりました。エニシさんがこれからどう生きていくかは、エニシさんが決めるべきことです。私は……、寂しいですが、どこかでこうなることは、最初から分かっていたことですから。出会いは偶然でしたが……、これまで一緒に暮らしてこられて良かったと思っています」


 ありきたりで、でもハルカの心中を、精一杯正直に言葉にしたものであった。

 ハルカは自分の気持ちを伝え、そこで終えずにまだ話を続ける。


「でも、エニシさんがそう決めたように、私たちにも自由に行動する権利があります。それは仲間として、受け入れてください。リョーガさん、エニシさんをお願いします。今預けている【餓狼】は、良かったらそのまま……」


 ハルカは仲間たちの様子を見て、許可が出たのを確認すると頷いて続ける。


「使ってください。それから、後でライゾウさんと交渉をして、〈御豪泊〉にナギが降りられる場所を作ってもらいたいと考えています。〈ノーマーシー〉と、ゆくゆくは〈竜の港〉と交易をしましょう。私たちは【自由都市同盟】にも用事があります。【神龍国朧】の西側を通って、【自由都市同盟】まで向かう航路、コリンはどう思いますか?」

「うん、すっごくお金になりそう!」

「はい。ということですので、いずれは私たちの利益にもなるはずです。きっとライゾウさんも受け入れてくれることでしょう」

「ハルカ……」


 ハルカからここまで具体的な行動案が出てくるとは思っていなかったエニシは、驚いて固まってしまっている。

 エニシが出会った頃のハルカは、まだ〈混沌領〉に乗り出す前で、今よりもずっと頼りなかった。優しく穏やかな性格をしていたが、それが優柔不断さにもつながっていた。

 当時のハルカであれば、ここまで自分の意見を相手に押し付けるような真似はしなかっただろう。

 そしてエニシは、ハルカのこの押し付けのような提案が、言葉が詰まる程に嬉しかった。

 勝手に世話になって、勝手にいなくなる自分に対して、仲間だからといってこれからどう付き合っていくかの未来の話をしてくれている。

 仲間たちと一緒に過ごす間にエニシが少しずつ変わってきたように、ハルカだって少しずつ成長を続けてきた証でもあった。


「……これからも、困った時は頼ってくれていいですから。できること、できないことはあります。でも初めから無理だとか、迷惑だと思わずに、まず相談してください。エニシさんは私たちの仲間ですから。……いつだって元気に、笑ってくれていた方が嬉しいです」


 ハルカのハの字になった眉が、心中を表していた。

 決して離れることが嬉しいわけではなく、エニシが決めたのならば快く送り出してやろう、と一生懸命に言葉を紡いでいるだけであることが、エニシにはっきりと伝わる。


「ああ、まったく我は……、友人に恵まれている……。世話になってばかりだ」

「あ、エニシさんの周りが大きな勢力になったら、貿易が儲かる予定だけどね?」


 エニシが涙を溜めながら言った言葉に、コリンがさらりと現実的な将来の展望を返す。それはコリンなりの、この場が湿っぽくなりすぎないようにという気遣いでもあった。


「うむ、うむ、そうなったら良いと我も思っている!」

「そうでしょ? そうなったらさ、別に私たちはあちこち自由に旅ができるわけ。拠点でのんびりしたり、〈ノーマーシー〉でコボルトたちと遊んだり、こっちに来てお花見したりさ。いろんなところに家があるようなものじゃん?」

「……なるほど、ここも【竜の庭】の一角になるというわけだ!」

「そうそう!」


 コリンが楽しそうに提案をしていけば、エニシも涙を拭って明るい声を出す。

 何やら話が変な方向に進みそうなことは分かったが、前向きな話をしていることは確かであるので、ハルカは止めるに止められず、様子を見ることすらできない。


「リーサが王国をまとめ、ハルカが〈混沌領〉をまとめ、我がこちらでも平和を推し進める。……もしかすると、過去にないほど、世界が穏やかになるかもしれぬなぁ、ハルカ」

「え、あ、それは、そうですね、はい、確かに」


 エニシはハルカの反応を見て笑う。

 頼りになるようになったとはいえども、百面相をしながら相手の意見に合わせてしまうくらいが、ハルカらしいと言えばハルカらしい。


「ああ……、なんだか少し気が楽になった……」


 エニシは立ち上がると、深々と頭を下げる。


「拾ってくれたこと、世話をしてくれたこと、あちこち連れて回ってくれて、仲間として真剣に向き合って、手を貸してくれたこと。返しきれぬほどの恩義があって、これからもまだ増えるかもしれぬ。我の今できることは、こうして頭を下げて礼を言うことくらいだ。本当にありがとう……、そして、これからもよろしく頼む」

「おう」


 アルベルトを皮切りにそれぞれが返事をしていく。

 そうして最後に、窓に腰かけていたレジーナが、相変わらず不服そうな顔をしながらも口を開いた。


「弱いんだから勝手に死ぬなよ」

「……うむ、気を付ける!」


 暮らす場所は遠くなる。

 しかしエニシはこれからもハルカたちの仲間に違いなかった。

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― 新着の感想 ―
ハルカのハは、ハの字眉のハ それはそれとして、なんかちゃんとまとめ役っぽい!
弱いならしねっって言ってたレジーナがッ!
地図見ながら鵬にも帝国にも行けるなぁと思ってたら大渦の魔物なんて居るのね…。
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