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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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御殿へ乗り込む

 ライゾウについていく人選で、真っ先に候補から外れたのはエニシだった。

 顔を隠したまま会いに行くことは難しく、いくら髪の色を変えたところで顔立ちまでもは変わらない。会えばそのまま決戦になってしまいかねない。

 続いて外れたのはイーストン。

 イーストンは過去に【夜行国】の代表として、御殿に足を踏み入れたことがある。

 〈御豪泊〉の使者として同伴して、余計な詮索をされたくない。

 そこから順当に、まずいことを言いそうなレジーナ、アルベルト、それからついでにタゴスを外す。


 残った中から武器を持たなくても対処能力が高い二人、ハルカとコリンが同行することに決まった。

 ハルカは空間把握能力が高いため、一度内部を歩けばその順路くらいは覚えることができるはずだし、コリンならばいざという時の機転が利く。

 それにコリンの場合、目鼻立ちがかなり【神龍国朧】の人たちに近いのだ。

 髪を下ろして衣服を整えれば、【朧】らしい美少女が誕生する。

 何かを聞かれた時のカバーストーリーとしては、リョーガのように大陸に見聞の旅に出ていた小鈴こすずが、そこで護衛のダークエルフを連れて帰ってきたので、今回の挨拶に同行させたというものである。

 それから、お付きの侍を一人外してリョーガも同行することになった。

 リョーガならば、【神龍国朧】のことも、大陸のこともよく知っているから、ぼろが出てもうまくカバーしてくれることだろう。


 夕食を摂りながら予定が決まったところで、翌日に備えてそれぞれ休息をとる。

 念のためハルカたちは二人ずつ見張りを立てて休んだが、夜間に様子を見に来るような者はいなかった。

 レジーナが捕まえた女中が相当怖がっていたので、何かあってもそうそう声をかけにきたりしないだろう。かわいそうに、食事の時間を告げに来た女中も、レジーナが捕まえてきた娘であったのは、他の女中たちに押し付けられてのことである可能性が高かった。


 翌朝、衣服を用意してもらい、エニシや日隠に協力してもらっておめかしを終えたコリンは「ちょっと待っててね」と言って、わざわざアルベルトの前まで歩いていく。

 腰に手を当てて、少しばかり顎を引いて流し目で「どう?」と尋ねると、アルベルトはしばらく訝しげにコリンを観察。

 それからおもむろに口を開いた。


「動きにくそうだな……、大丈夫かよ」

「あのさぁ、もっと他にないの。似合うとか、可愛いとかさぁ!」

「お前、なに着ても似合うだろ。でも俺はいつもの方がいいと思うぞ」

「……ふぅん、あっそ、ふぅん」

「なんだよ、殴んなよ」


 コリンはアルベルトに近付いて肩をごすごすと拳で殴ってから、振り返って満足そうに笑いながら「じゃ、行きましょっか!」と言った。

 どうやら欲しかった返答は貰えたらしい。

 アルベルトの方は困惑気味だ。


 余計な詮索をされないようにするためお見送りはなし。

 ライゾウと二人の侍、そしてハルカとコリンだけで宿を出発して、街の中心にある目抜き通りを御殿に向けてまっすぐに進んでいく。

 途中には大きな壁が設けられており、そこに設けられた小さな出入口から、御殿が立つ山の方へと進んでいく。

 一応他の方角からも御殿に近付くことはできるのだが、鼠返しのような構造になっているので、内部に潜入するのは少しばかり難しくなっている。空を飛ぶハルカには関係のない話だけれど。

 御殿に繋がる長い階段を案内人について登りながら、コリンが笑う。


「これ、運動不足の人がきたら大変そうだね」

「そうですねぇ……」


 この体になる前のハルカであったら、階段の下にたどり着いて見上げた時点で、登頂を断念するほどの高さだ。しかし案内人も含めた今一緒にいる全員が、息も乱さずにひょいひょいと階段を上っていく。

 皆、元の世界の人とは比べ物にならないほどの体力自慢ばかりである。


「でももう少しすると、花が満開になってきっと気持ちがいいでござるよ」

「あー、確かにそうかもしれません」


 リョーガの言葉にハルカは周囲を見回しながら同意する。

 花というのは、例の人の血を啜って色づく花だ。

 この山の花もまた、薄桃色に色づいているらしいので、この山で命を落とすものもそれなりの数存在するのだろう。

 そう考えるとそこはかとなく心霊スポットだ。


 無難な会話しかしないようにしているのは、既に御殿の領域に入っており、場合によってはサイカに話の内容を聞かれている恐れがあるからだ。今日の面会時間は決まっているのだから、やって来た客人の会話に耳を澄ませていたって、何らおかしなことはない。


「サイカ様にはどのようなご挨拶をされるんですか?」


 ハルカのぶしつけな質問に、この集団の長、ということになっているライゾウが答える。


「そうだなぁ、一応ざっとした近況報告をして、奉納するもんの目録を伝えて、あちらからの質問に答えるってとこだな。ま、こっちから何か聞いたりはあまりしないもんらしいぜ」

「そうなのですか」

「この期間に限っては、俺たちは戦も禁止されている。ま、神龍様に認められたきゃあ、卑怯な真似はするなってな」


 数年前にその期間を終えてすぐに攻められたことを根に持っているのだろう。

 ライゾウは忌々しそうに話す。


「神龍様にはお会いできないのですか?」

「とんでもねぇことを言うなぁ。巫女総代様以外が会う時は、願いをかなえてもらう時と決まっているらしいぜ? 間違ってもそんなこと聞かねぇようにしてくれよ。小鈴から聞いてねぇのか?」

「すみません、それについては初めて聞きました」

「ごめんねぇ。帰って早々〈神龍島〉に来ることになるとは思わなかったからさぁ」


 コリンが笑いながらライゾウに謝罪した。

 ちなみにこの辺の話も、あらかじめ決めてきた問答である。

 もしサイカが聞いていれば、勝手にハルカが大陸の何かであると思い込んでくれることだろう。

 ハルカの演技力は中々に大根であったが、緊張して硬直した表情も含めて、こういう人っているよねという感じの丁度よさである。


 そんな具合に無駄口を叩かずに案内をされたハルカたちは、やがて御殿へたどり着く。御殿の朱色に塗られた柱や床は、いかにも神聖な場所であるように見えた。

 階段の突き当りで左右に分かれた道を左へ進み、山の本体を右手に置くような形で、長い廊下を進む。

 途中で山の内部に入り込むような分かれ道もいくつかあったが、案内人はその全てをスルーして、最初に左へ曲がった場所にあった部屋で待機するようハルカたちに伝え、去っていった。

 今ハルカたちがいる部屋は、御殿から外へせり出したような形になっている離れのような場所であった。

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― 新着の感想 ―
今更ながら、願いを叶えてくれる神龍ってことは7つの玉を集めなきゃなヤツ繋がりなのか?
神龍の方が凸って来そうな予感しかしない
ハルカに会わせろっていうお告げが神龍から来るフラグ〜?
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