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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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男のタイプ

 ライゾウは一通り喜びの表情を見せた後、またきりっとした顔に戻って立ち上がる。今更できる男感を出されても、もうみんなその正体を知っているので、微妙な気持ちにしかならない。


「ってことは何か……。大陸の偉い人らしいあんたが、エニシ様を助けてくれたって話か?」

「まぁ、たまたま出会いまして……、とりあえず怪我治しますね……」


 額からどくどくと血を流しながら、当たり前のように話しかけてくるライゾウに、気持ち的にはかなり引きながらハルカが治癒魔法をかけた。

 ちょっと血の気が多すぎるので流血してるくらいでちょうどいいのではないかとも思うのだが、それでいきなりバタンと倒れられても困る。


「これまでの話が聞きてぇな。俺にできることがあったら協力させてほしい」

「申し出はありがたいんだけどさ、そろそろ街の方へ戻った方がいいんじゃないかな。そうじゃないとまた、〈西園国〉の人たちが様子を見に来るかもしれないよ」


 このままライゾウのペースで話を進めていては、いつになったら話が終わるのか分かったものではない。

 すごく面倒くさそうな雰囲気をかなり序盤で察したのか、気配を消して冷静に事の推移を見守っていたイーストンが、呆れながら忠告してくれた。

 やはり冷静な大人がその場にいることは大事である。


「確かにそうだな……。確かエニシ様は今〈北禅国〉の世話になってるんだったな?」

「うむ、そうだ」

「それじゃあ後で俺たちも宿をそっちへ移すことにするぜ。何、俺たちは少人数だからな、ちょいと宿を変えるくらい簡単なことよ。じゃ、先戻るぜ!」

「そ、そうか……?」


 本当にそれでいいのだろうかとエニシが考えている間に、返事も待たずにさっそうと去っていくライゾウ。場合によっては断られるかもしれないというのを、こっそりと察しており、約束だけ取り付けて逃げ出したような風もある。


「いやぁ、熱心な信者がいるね」

「う、うむ。リョーガ殿から聞いていたが……、あそこまでとは」

「どう、嬉しい?」


 コリンが半分意地悪で聞くと、エニシは困ったように笑って答える。


「それが……、嬉しくて困っておる。明らかに変なやつなのだが、気持ちは真っすぐであったし、何より自分の帰還をあれだけ強く望んでくれている者がいるというのは……、あれだけ変でも嬉しいのだ」

「だよねぇ、なんかそんな気がした」


 エニシが歓迎しているのなら、ハルカたちから言うことはない。

 少なくともライゾウは、予備動作なく発生した巨大な水球から脱して、直後ハルカに反撃までするほどには凄腕だ。

 おそらくもう一度一対一で戦うことがあれば、視線やハルカの細かな動作を目ざとく拾って、魔法を回避しながら接近をしてくることだろう。単純な動きを見る限り、相当な実力者である。

 変人であるという大きなデメリットにさえ目をつぶれば、実力があり、大国と渡り合えるほどの国としての戦力も持っている、大変頼りになる男である。


「とにかく……、行成さんたちと合流しましょうか……」


 未だ勢いと熱に精神的に押されまくっていた感覚から立ち直れないハルカが、ライゾウの去っていった方を見ながら街へとふらりと歩き出す。

 すると仲間たちもそれに従ってすぐに元来た道を戻り始めた。

 さり気なくハルカの横へやって来たモンタナが、ぽつりと呟く。 


「なんか、すごかったです」

「すごかったですね……」

「あの人、最初からずっと真っ赤だったですよ。怒ってたり、興奮してたり……。変だけど正直な人です」


 その人がまとう魔素の揺らぎや色によって、感情がなんとなくわかるモンタナにとっては、ライゾウはとても単純で分かりやすい人物に見えたらしい。

 裏表のない人物と思えば、確かに悪くないのだろうが、ハルカにとっては面食らう相手であった。

 嫌いとかではなく、性質の違いのようなものをもろに浴びせられた感覚である。


「おもしれーおっさんだったよな」

「それに手練れだぞ」


 アルベルトが前向きに評価をすると、タゴスも頷いてにっかりと笑う。

 どうせこの二人は手合わせをすることを考えているのでご機嫌なのだろう。

 これから宿を移してやってくるということは、それが実現する可能性は十分にある。


 一方で、いつもだったら同じように何かを期待しているであろうレジーナの反応は、ちょっと微妙な感じだった。

 眉間にはいつもより深めの皺が寄っており、むすっとしているようにも見える。


「どうしたのかしら……?」


 カーミラが心配をして顔を覗きに行くと、肩を押してカーミラを遠ざけながら呟く。


「なんかあいつきめぇ」

「うーん……、私もちょっと、相性は悪そうだと思いましたわ。その、なんといったらいいのかしら……?」

「他人の飼い犬っぽい?」


 コリンがふざけて尋ねると、それがどんぴしゃりだったようで、カーミラは手を叩いて頷く。


「あ、そう! それにあの、言うことをちゃんと聞かなかった、辺境伯に似ているというか……。お姉様、覚えていらっしゃるかしら?」


 カーミラの言う辺境伯とは、ゲパルト辺境伯のことである。

 王国の南に位置する場所に領地を持っており、一時は吸血鬼たちによって支配されていた男であるが、これがまた腕の立つ自我の強い男であった。

 あれ以来一度も会っていないけれど、どうやらカーミラには、ライゾウがそれとよく似ているように見えたらしい。


「あぁ、なんとなくわかるような……」

「確かに似てるっちゃ似てるか……?」


 ぼんやりとした印象しかないハルカが同意すると、同じくしばらく会っていないことですっかり忘れていたアルベルトが、首をかしげながら同意する。


「強引で人の話を聞かない人が得意じゃない、ってことでしょ」

「まぁ、そうなのかもしれないわ」


 イーストンが話をまとめると、カーミラは納得したように頷く。

 腕が立って強引で一途、となればもてそうなものだが、どうやらこの陣営の女性にはあまり受けが良くないようである。

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― 新着の感想 ―
イーストンさん、それはきっとみんなそうではないしょうか…w(^◇^;)
コリンの表現が的確すぎるw
ゲパルト辺境伯懐かしい。あっちは一途とは正反対な男でしたがね。『強引』を『リードしてくれる』『男らしい』と感じるかどうかで評価がわかれそう
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