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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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ライゾウと言う人物

「新年の間に攻め込んできた、でござるか?」

「そうだ。正しく言やあ、新年の期間に戦争の準備を整えて、明けると同時に攻めてきた。しかも〈神龍島〉にいる他国の連中に、俺たちの足止めまでさせてだ。大事な相談があるってな」

「卑怯、でござるな……。拙者が国を離れているうちに、サイオン国との関係がさらに悪化していたでござるか?」

「ま、色々あってな」

「ううむ……」


 リョーガが考え込んでしまった隙に、ライゾウがハルカに話しかける。


「それであんたはなんて名前なんだ?」

「ハルカ=ヤマギシと申します」

「へぇ、大陸の出身なんだろ? うちの国っぽい名前してんだな」


 それは名乗るたびに言われることなので今更だ。

 ハルカは、「はぁ……」と曖昧に返事をして頷く。

 事情は聞いて分かったのだけれど、今のところライゾウに対する印象は、まだ苦手が勝っているので仕方がない。


「領地の失陥はなかったでござるか?」

「小競り合いが続いてるが今のところはねぇな。戦争の終結を願って、こっちから攻め込まねぇでいるが……。いよいよ周りが敵だらけとなると、積極的に動かねぇと駄目な時も来るかもしれねぇなぁ……。今は亡きエニシ様のことを考えりゃあ、避けてぇところだが……」


 ライゾウはため息を吐きながらつまらなそうにつぶやいた。

 そういえばこの男、エニシの【神龍国朧】から戦を無くしたいという思いに応えて立ち上がった男である。

 リョーガによれば見てられないくらいの、かなり強火なエニシファンであるらしい。


「……サイオン家が外交で戦を仕掛けてきているということでござるか」


 リョーガが話を逸らそうと質問を続ける。


「そういうことだ。こっちが攻め込まないことを良いことに、別方面に圧力をかけたり、領土を切り取ったり、好き勝手やった上に二年前の件だ。ハルカ殿たちがささっと帰ってくれてりゃ、あいつら全員皆殺しで証拠隠滅してやったのによ」


 さっきは『重要人物の一人や二人』と言っていたのに、話しているうちに腹が立ってきたのか、本音が漏れたようだ。実に殺伐とした話である。


「なんか、すごく恨みがある割には、さっぱりと帰したし、気も合ってそうだったけどなぁ」


 コリンが後ろで呟くと、ライゾウはにやりと笑う。


「おう、あいつら本人に恨みがあるわけじゃあねぇからな。西陣真鉄っていやぁ、サイオン家の中でも頑固な外戚爺で有名だ。うちへの侵攻の件も反対したようだが、糞サイオン家の方針に逆らえなかったんだろうな。とはいえ、あの糞爺がいるからこそ、サイオン家が北を気にせずに行動できるのも事実だ。恨みはねぇが、あいつらがまとめて死ねば、サイオン家が弱体化するのは確か、って寸法よ」

「あー、ハルカ、私なんか侍の考え方分かって来たかも……」

「私もなんだか少し……」


 これまでハルカが出会ってきた侍は、大陸に馴染んだ者と、国を失って逃げてきた者たちだった。だから侍たちの考えを正確に理解できていなかったのだ。


 侍たちは正しく戦乱の真っただ中にいる。

 人の命、人の価値観、好き嫌い、それを凌駕するところに、国の維持、勝ち負けがあるのだ。こんな理由があるから殺さない、ではなく、こんな理由があるから殺す、ができる人たちだということだ。

 冒険者にもその傾向はあるが、彼らは基本的に個人の判断を優先することが多い。

 大陸の冒険者が理解するために何がより近いかと言われれば、クランなどの集団の動きがそれに近いのだろう。

 集団のために動き、集団のために犠牲になり、集団のために殺す。

 価値観の規模が違うのである。

 情がないのではない。

 情があっても通用しないのだ。


 殺し殺され、という面では冒険者に非常に近しいが、価値観をどこに置くか、という面においては限りなく遠い存在であると言えよう。


「なんだか妙な納得のされ方をしている気がして、背中が痒くなるぜ……」


 一応ハルカがどこぞの偉い奴と言う認識は持ったのか、ライゾウは少しばかり遠慮しつつ、リョーガに近寄っていく。


「そんでお前、見聞は十分に広げられたのかよ。もう帰ってくるのか?」

「まぁ、今の状況が落ち着いたら、そうするべきかもしれんでござるな……」

「状況ねぇ。それにしてもそんなお偉いさんがなんで……」


 ライゾウはハルカたちの集団の方へ目をやり、途中でぴたりと動きを止めた。

 そうしてじょりじょりと顎鬚をさすりつつ、「んー……?」と声を上げて一点に注目する。

 注目された本人、エニシは、静かに横移動してカーミラの後ろに隠れた。


「ちょっと悪いがそこに隠れた嬢ちゃん、顔を見せちゃくれねぇか?」


 そう言った瞬間アルベルトとモンタナ、それにタゴスまでもが目配せをしてカーミラの前にずらっと移動する。


「あ、後ろの方にいるのは戦わない人たちなので、あまり威嚇しないでくださぁい」

「いやいや、威嚇とかじゃなくてだな」

「ライゾウ殿、年若い女子おなごを無理やりに観察しようなんて、あまりいい趣味とは言えないでござる。やめるでござるよ」

「いや、そういうんじゃなくて」

「やめてください」


 ハルカまでもがぴしゃりと言ったところで、ライゾウは妙な顔になってその顔を見つめた。


「あんた、あんまり人にはっきりと物を言うのが得意じゃねぇよな?」


 脳筋の癖に妙に察しの良い男である。


「ってことは、よっぽど俺に会わせたくない相手……。リョーガがいるってこたぁ……。まさか、エニシ様じゃねぇよな? 俺は目がいいんだぜ。一度見た人間なら、多少体格が変わっていても大体わかる。それに身長も体重も体つきも、パッと見る限りほとんど同じだ。なぁ、そこに隠れているのはエニシ様じゃぁねぇのか?」

「キモイでござる……見たくないでござる……」

「流石にちょっと気持ち悪いかも……」


 リョーガやコリンの言葉にお付きの侍やアルベルトたちが頷き、カーミラが表情をひきつらせながらエニシを見せまいとしっかりとガードを固める。

 ここに来てハルカたちは、ライゾウの新たな一面を無理やり見せつけられようとしていた。



あ、あと一日で『わたおじ』小説・コミカライズ発売!

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― 新着の感想 ―
そういえばファンクラブのおじさん達でしたっけ……?
オタクが推しの顔を忘れる…ましてや見間違えるなんてことはあり得ないんだよなあ! いい話のようですごいキモい
きもいけど、達人のそれでしょwかわいそうにw
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