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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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とりあえず勝ちに行く

「どれ、先にこっちから!」


 先に駆けだしたのはライゾウであった。

 ハルカの方にではなく、刀を抜いている強面の侍の方へ、である。


「望むところ!」


 望むところならば二人だけでやってくれればいいのになぁ、と思いながらハルカはその動きを黙って見送る。

 自分の方に来ないのならば動きを見させてもらった方がいい。

 隙を見て攻撃をしてもいいけれど、なんとなくそれも卑怯な気がする、などと考えていると、かなり遠い間合いから、ライゾウが棒を振り回す。


 強面の侍が大きくとびのいて回避をすると、それに合わせてライゾウが大振りで次々と追撃していく。その振りの勢いはすさまじく、ただの棒とはいえ体で受ければ骨の数本は平気でへし折られそうだ。

 強面の侍はぎりぎりで回避を続けていたが、ついにライゾウの棒を刀で受け止め、衝撃を殺し切れずにゴロゴロと地面を転がった。


「はっは、それが本気か!」

「ぐっ、くっ……!」


 ライゾウは慌てて立ち上がる侍に対して追撃をしなかった。

 侍の実力も高いのだろう、とび上がるようにして着地。

 そのすぐ近くにはハルカが立っていた。


「〈北禅国〉の者よ!」

「あっ、はい、私ですね」


 ハルカがそろりそろりと距離を取ろうとしていると、侍が盛大に眉間に皺を寄せながら声をかけてくる。そんな呼ばれ方をしたことがなかったハルカは、一瞬自分が呼ばれたことに気付かず、慌てて返事をする。


「なぜ戦いに混ざらぬ!」

「お邪魔してはと思いまして……」

「わははっ、なんだそりゃあ!」

「ぐ、ぐぐ……、ええい、気の抜ける……!」


 ライゾウが笑い、侍が地団太を踏む。


「気にしないでかかってこいよ……!」


 ライゾウがくるくると棒を振り回している間に、侍が小声でハルカに話しかける。


「恥を承知で頼み事だ。奴は強い、儂と手を組まんか? 決戦は奴を倒してからだ」

「……良いんですか?」

「あ奴、儂を舐め腐っておる。槍の穂先がついていれば、今頃儂はズタボロだ」

「なるほど……」


 大ぶりの攻撃が多いのは、それをこの強面の侍にわからせるためだったようだ。

 ライゾウは中々に性格が悪いようである。


「勝負事は勝たねば負けよ!」


 侍はハルカの返事を聞かぬまま、刀を肩に担ぐように構えると、姿勢を低くして走りだした。


「サイオン家のやつにしちゃあ、潔いじゃねぇか!」

「ほざけ!!」


 こうなると困ってしまうのは、なんだか勝手に仲間のような雰囲気にされてしまったハルカの方である。

 どちらかというとハルカはライゾウの方に縁がある。

 だがハルカの感覚からすると、今回の争いに関して悪いのも、ライゾウの方である。

 正直なところ、強引すぎてちょっと嫌だなぁと思っていたのも事実だ。

 とはいえ、あの強面の侍がそれに便乗して戦い始めたのもまた事実である。

 色々と考えているうちにハルカは段々、彼らが争っている間に横槍を入れるくらい別にいいんじゃないかなと思えてきた。


 ハルカはふわりと空に浮かび上がる。

 背中を向けていた侍の方は気が付いていないようだったが、こちらを向いているライゾウは目を見張った。

 直後、ライゾウと侍の武器がぶつかり合う。


 ハルカはその瞬間を狙って、二人を包み込むようにして巨大な水球を発生させた。

 ライゾウは視線から何かを察したのか、慌てて飛びのく動きを見せたが、その最中に水の中を通り抜けることになる。

 水から抜けた瞬間、ライゾウは棒を構えてハルカに向けて思いきり放り投げる姿勢を取った。しかし、直後体がビリリとしびれて、その場に膝をつき、棒を取り落とすことになる。


「なっ、こ、りゃ、ぐ」


 言葉にならない言葉を出しながら、無理やり動こうとしているうちに、ハルカが魔法で石を飛ばして、ライゾウの棒を弾き飛ばす。

 それと並行して、ハルカはライゾウの周囲に炎の球をぐるりと浮かべた。


 ゆっくりと地面に降りて、水を消したときには侍の方は溺れて意識はなく、ライゾウも身動きを取れなくなっていた。


 ハルカが強者だと判断して争いに巻き込んだくせに、戦うことを楽しみにするあまり後回しにしたのは、とても良くない判断であった。

 ライゾウは体のコントロールが戻ってきて、それを痛感していたが、もう勝負は決まったも同然である。

 ライゾウと侍が武器を手放し、戦いの続行が難しいのだから、これはもう、誰がどう見たってハルカの勝ちであった。

 不意打ちをさせたら、ハルカに勝てる者など、そうそういるわけがないのだ。


「私の勝ちでいいでしょうか?」

「……降参だ」


 ライゾウから返事があったところで、ハルカは炎の球を消して、倒れている強面の侍に近寄った。サイオン家の侍たちはざわついたが、ハルカは「治療するだけです」と言って、そっとその体に触れて治癒魔法を施す。


 がばりと起き上がった強面の侍が、慌てて刀を握って周囲を見回したが、その雰囲気から自分が負けたことをすぐに察したようだった。

 そしてライゾウの方を向いて忌々しそうに吐き捨てる。


「儂の負けか……」

「俺も負けたけどな」


 ライゾウが答えると、強面の侍は驚いたように振り返ってハルカを見る。


「……なんと! ……お主、やるようだな」


 そうして初めて、称賛の言葉と共ににやりと笑ってみせた。


 ハルカは思う。

 なんかやっぱり、【神龍国朧】の侍の人とはあまり気が合いそうにないな、と。

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― 新着の感想 ―
ハルカさん電気ショック覚えてね?
巨人の王達はハルカの魔法見たら何も言わずに協力しだしたことを考えるとまだまだですね
ブロンテスの時に初めて出てきた電撃魔法が、やっと日の目を見てちょっと嬉しかったです。 何か、朧の侍って頭巨人族じゃなかろうか? ここで手合わせしていれば、朧の統一も夢じゃないかも。
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