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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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鬼人の嫁取りの詳細

「クダン殿はその……、その昔神龍様とお話しされたことがあるとか?」


 エニシが恐る恐る尋ねると、クダンは少しだけ面倒くさそうに他所を見たが、「ああ、まあな」と答えた。

 知らないと言わないあたりが、人からものを押し付けられるところなのだろう。


「神龍様の望みは伝承の通りなのだろうか。その時は、どんなお話をしたのだろうか?」

「その伝承ってのを知らねぇんだけど、なんだそれ」

「クダン殿は、【神龍国朧】の出身ではないのか……?」

「伝承なんて誰でも知ってると思うなよ。元はと言えば、俺はただの野菜売りの息子だぞ」

「え、そうなのか? なんかすげぇ血筋とかじゃないのか?」


 驚きの声を上げたのはアルベルトだった。

 憧れの人だからこそ、何か特別なものがあると思い込んでいたようだ。


「ちげぇよ、なんだそれ。兄弟が多かったから、これじゃあ食っていけねぇと思って、戦に出たり、出稼ぎしたりしてるうちに冒険者になっただけだ。まぁ、性格的に向いてたんだろうな。で、伝承ってなんだよ」

「う、うむ……。元々【朧】は一つの島だったそうだ。当時も神龍様に寵愛を受けた月の巫女がいたのだが、争いの果てにその命が奪われたのだ。それを嘆き悲しんだ神龍様が、島を割り、人を分かったそうだ。そうして、『すべての島を統べ、我に勝った者を天なる王と定め、未来永劫の若さと命、そして忠誠をくれてやる』とおっしゃり、人々を戦いの地獄に叩き落としたのだと。以来千年以上、【神龍国朧】は争いに満ち満ちている」

「ほー、なんだか大層な話だな」


 クダンは特別感銘を受けた様子もなく、するりと伝承を聞き流した。


「巫女が集められるのは神龍島の管理をするため、と言われていて……」

「それに関しては聞いた。元々は能力を持ったものを、戦に利用されないよう保護するためだったらしい」

「それは神龍様が……?」

「おう」

「そうか……、神龍様は我らを守ってくださっていたのか……」

「そんな大層な奴には見えなかったけどな」


 エニシが何やら感銘を受けているところに、クダンが水を差す。


「そ、そうなのか? そもそも、クダン殿はなぜ神龍様の下へ行ったのだろうか? 我が聞いた話によれば、当時の巫女総代を嫁に取る為と……」

「結果的には間違ってねぇけど……、世話になった奴がよく分かんねぇ場所に捕まってるって聞いたから助けに行っただけだぞ」

「そ、その話詳しく聞いてもいいだろうか?」


 単純にエニシが気になった部分もあるが、アルベルトやコリンがワクワクしているのを見ての質問だ。

 エニシの知っているその話は『鬼神の嫁取り』として語り草になっている。 

 巫女の間では大層人気な昔話であった。


「だから、俺が戦で出稼ぎに出てる時、そこの姫さんが弓の名手だったんだよ。一緒にあちこちの戦場に出てたんだが、数年で国が安定して戦がなくなった。稼ぐ場所がねぇから、大陸にでも行こうかってなった時船の手配もしてくれてな。そんで戻ってきたら、なんか巫女だったからとかいって、そいつが神龍島に連れていかれてた。元々の家も没落してるし、どうなってんだと思って殴り込みに行くことになった、ってのが事情だな」


 だいぶはしょられているが、やはり聞いた話と大差ないようだ。


「もう少し細かく!」


 コリンが声を上げると、クダンは嫌そうにコリンを見てため息を吐いた。


「お前、最初に会った時から、本当に図々しいよなぁ……。テトと同じぐらい図々しいぞ」


 コリンは行けると思ったらぐいぐい行くタイプだが、なかなかクダン相手にその判断をする者がいないのだろう。

 ハルカはぼんやりと、体術使いってそういうものなのだろうか、と思いつつ話に耳を傾ける。


「つまり、そいつが……、巫女だったわけだ。トゥホーク家はそれを隠して戦に利用していた。それを怪しまれて、神龍島の規則を盾に、弓の名手が奪われて戦力が落ちた。結果攻め滅ぼされかけた。まぁ、俺はそいつとだけ仲が良かっただけだから、没落してんのはどうでも良かったが、一応世話になったし恩もある。だから助けに行った。そうしたら諸国連合に邪魔されたからぶっ殺した。いざ神龍島に着いたら、世話好きだったのもあってか、巫女総代ってのになってた、ってだけだ」

「それでそれで、そのお姫様を奥さんにしたんですよね?」

「いや、だから、結果的にそうだけどよ……。そもそも、巫女の力を使って領土争いをさせるのは困る、連れてくなら国外まで行けって神龍のやつに言われて連れてった結果、まぁ、そういうことになったってだけだ」


 クダンができるだけ感情が入らないように話しているのが分かる。

 あまり話をするのに器用な方ではないのだろう。


「でもあなた、あの子に頭上がらないじゃない」

「うるせぇよ」

「父ちゃん、お母さんのこと大好きだもんな」


 ユエルの突っ込みには即座に反論したクダンだったが、娘であるノーレンに言われると、そのままぐっと黙り込んだ。

 どうやら娘にもかなり甘いようだ。


「そのお姫さんってそんなに強かったのか?」


 なんだかかわいそうになったのか、タゴスがクダンに問いかける。

 クダンは気持ちを落ち着けるように、深くため息をついてから答える。


「弓を持たせたら大したもんだ。あいつは戦場を俯瞰してみる目を持っている。弓の届く範囲なら、まず狙いを外さない」

「それは……、天性の弓使いだぁ……」


 コリンが思わず感嘆の声を漏らす。

 巫女の能力にもどうやら色々とあるようである。

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― 新着の感想 ―
今さらだけどこれクダンて名前じゃなくて苗字だったりします?
うーむ。やっぱりうっかりハルカさんが神龍殴り倒して現人神になる展開を期待してしまうなぁ。
そのうちハルカが朧を統一して神龍を倒すんですね。 そして永遠の若さと命を与えようとしたら既に持っていて神龍を困らせるんですね、分かります。
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