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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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秘密秘密

 さて、食事は思ったよりもずっと穏やかに進み、ユエルがとんでもない人物だと直接知らない拠点の仲間たちは、彼女のことを恐れることなく普通に受け入れた。

 ちょっと変わった性格をしているけれど、拠点には変わった性格をした人ばかりがいるので、今更気にする者なんていない。


 翌日からも、アルベルトは当然のように訓練の相手をしてもらえず、ユエルは本当にただの客人のように、プラプラと拠点を歩き回っているだけであった。

 何事もなく数日が過ぎたある日、河原でボーっと座っていたユエルを見つけて、ハルカは隣に行って腰を下ろす。

 本当に何も問題を起こさず、普通に会話をするだけだったので、最初に警戒していたのが馬鹿らしく、すっかりユエルがここにいることに慣れてしまっていた。

 川をじっと眺めているので、何かあるのかと同じ場所を見てみると、小魚が集団で泳いでいるのが見える。


 この川はハルカが掘って開通させた川の一つだ。

 数年たった今、すっかりちゃんとした生態系ができており、こうして見ているだけで感無量である。植えた木や草花も、しっかり根付いて、拠点の周りを彩っている。

 街に比べると自然の多い、平和な景色であった。


「ハルカちゃんは魚が好きなの?」


 ハルカが目的も忘れて泳ぐ魚を眺めていると、隣から話しかけられる。

 隣に座ったかと思ったら、黙って魚をじっと眺めているハルカも、ユエルから見ればかなり奇妙な人物である。

 そもそもユエルは人から避けられることが多い。

 特に目的もないのに、わざわざやってきて隣に座るハルカは、やはり変なやつである。


「あ、いえ、魚が好きというか……。ああ、そうでした。ユエルさんに話があったんです」

「なにかしら?」

「はい。ユエルさんって、クダンさんたちが、なんであんなに若々しいか知っていますか?」

「なんとなく」

「あ、やっぱり何か特別な理由があるんですね」

「そうね。でも秘密」

「あ、そうですよね」


 別に内容まで教えてもらえると思っていなかったけれど、先回りして秘密と言われてしまった。ユエルは何かと秘密主義である。


「長生きしたいの?」

「いえ、単純な疑問です」

「そうよね、あなたもダークエルフなら長命でしょうし」

「そうですねぇ……」


 つい先日行ってきた、【夜光国】のテネブの言葉を思い出す。

 長命だと、たくさんの人を見送りながら生きていくことになる。

 まだまだ先のことだから、今から考えすぎて落ち込むつもりもないけれど。


「うーん、ユエルさんって神様を見たことありますか?」

「どっち?」

「あ、見たことあるんですね」

「秘密」


 やっぱり秘密主義だった。

 しかしハルカの姿を見て特に何も反応がないということは、きっとオラクルの方なのだろう。そして神を見たことがあるからこそ、ゼストも実際に存在すると知っている。

 ユエルの場合は、もしゼストを見たことがあった上で、ハルカに何の反応も示さなかったのだとしても不思議ではないけれど。


「秘密、たくさんありますね」

「教えてもらうより、自分で見たほうが楽しいでしょ」

「……確かにそうですね」


 ユエルは案外しっかりと冒険者らしい気質を持っているようだ。

 それが分かってきて、ハルカは段々とユエルと話をするのが楽しくなってきていた。


 ぽつりぽつりと一問一答のような会話を繰り返していると、珍しくユエルの方から質問が飛んでくる。


「ここ、クダンが来たことあるでしょ」

「あ、はい、あります」


 質問というよりも、確信しているような言い方であった。


「やっぱり。露天風呂があるもの」

「入ります?」

「そうね、入ろうかしら」

「クダンさんって、昔からああいうの好きなんですか?」

「【朧】の文化なのかしら。結構気持ちが良いのよね」


 目を細めるユエルは、露天風呂が割と好きなようだ。

 そう考えると、クダンとユエルは互いの趣味なんかも案外理解し合っているのかもしれない。

 喧嘩するほど仲が良いというやつだろうかと、ハルカは首をかしげる。


「……お二人って、仲が悪いわけじゃないんですね」

「さぁ? 喧嘩はするけど。うるさいし」

「喧嘩ですか……、私たちはあまりそういうことがないので……」

「毎日本気でやり合ってるじゃない」

「あ、あれは訓練なので」

「そう? 普通じゃないけど」

「まぁ、確かにそうかもしれませんが……、ほら、一応治りますし……、殺し合いはしていませんから」


 ハルカが治す前提で、大けがをしても平気で訓練を続けるのは普通ではない。

 ユエルから見てそうなのだから、本当に異常な訓練模様なのであるが、すっかり慣れてしまったハルカたちはあまり自覚がない。


「ハルカちゃんって、変」

「そう……、ですかね」


 面と向かって言われるとちょっとショックはあったが、ユエルが僅かに笑っているのを見て固まるハルカ。


「うん。面白くていいと思うわ」

「あ、そうですか……」


 なんだか褒められたような気がして恐縮していると、ユエルが不意に振り返ってじっと拠点の入り口の方を見つめる。

 しばらくして立ち上がると、「行くわよ」と言って勝手に歩き出す。

 事情の説明も何もないが、当然ハルカがついてくるものだとばかり思っているようだ。


 期待を裏切るのもまずいかと、ハルカが立ち上がって追いかけると、ユエルは無言でそのまま歩き続ける。


「あの、何かありましたか?」

「来たから」

「誰かいらっしゃったんですか?」

「そう」

「魔法で分かったんでしょうか?」

「秘密」


 また教えてもらえなかった。

 しかし歩いていくうちに、確かにタゴスの小屋の前に人が立っているのが見えてくるのであった。

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― 新着の感想 ―
「教えてもらうより、自分で見たほうが楽しいでしょ」 なるほどね^_^
あのユエルすら大人しく過ごす。 誰もがユルくなる、これぞハルカ空間・・・!
何であんなヤバいのとパーティー組んでたんだクダン達って思ってたけどこんなに印象変わるもんなんだな
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