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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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たまにはのんびりお散歩も

 元々冒険に出るようなレベルの冒険者は、一年にそう何度も何度も依頼を受けて出かけたりしない。多くの者は命を懸けた冒険をして帰った後は、しばらくのんびりと休息をとるものなのだ。

 いくら気軽に遠方に出かけられるとはいえ、実はハルカたちの外出頻度は相当高い。


 しかしそれが当たり前だと思って育ったサラは、気合いを入れて次々と仕事をこなしているらしい。それに触発されてパーティのリーダーであるアルビナや仲間たちも、気合いを入れて仕事をこなすものだから、なかなかハードな毎日を過ごしているようだ。

 エリやカオルも、経験を積むために活動をしているものだから、これまでよりもかなりハイペースで仕事をこなす。トットも負けてられないと毎回ともに出かける。

 新婚だから問題があるのではとハルカは心配していたのだが、気の使えるエリはかなり初期の段階で、きちんとトットの奥さんと話をしにいったらしい。


 まずトットには一切興味がないこと。

 このハードな仕事の分け前をトットに多めに渡すこと。

 そしてこの頻度で依頼を受けるのは、長くとも精々一年前後であること。


 上級冒険者がハイペースで一年間本気で働けば、それだけで街で暮らす人が十年暮らすだけの金を稼ぐことができるのだ。エリが出した条件ならば、数十年は安泰だ。

 それらの条件を理解した奥さんはにっこりと笑い、トットの背中を叩いて送り出してくれるようになったそうだ。


 やはり話し合いは大事である。


 やってきていた者たちは、数日のんびりと過ごし、それから自分たちの足で〈オランズ〉の街まで帰って行った。

 ハルカが送ると申し出たのだが、これも冒険者の訓練、という事らしい。

 実際どこで何に出会うかなんてわからないから、急いでいないのならば森を歩くのも良い経験になる可能性はある。

 自分もたまには森をうろつこうかな、と思いつつ、ハルカは彼らを見送った。


 一日たって、思い立った通り、ハルカは珍しく一人でふらりと〈黄昏の森〉へと足を踏み入れる。いつも通る道から外れ、うろうろとしてみると、なかなかどこを歩いているかわからなくなるのが森の怖いところだ。

 昔だったらばすぐにでも元の道に戻るところだが、ハルカは後戻りせずに、本当にプラプラと森の中を散歩する。

 今のハルカならば、空を見上げ、季節の風を感じていればなんとなく方角は分かる。食べられる草も木の実も分かるし、動物を捕まえて捌いて食べることだってできる。


 そもそも、空高く飛びあがってしまえばそれでどちらに行けばいいかは一目瞭然なので、心配する必要なんてかけらもなかった。


 当てもなく歩いて、時折動物の観察などをしていると、不意に空に影がかかる。

 見上げると、どうやらハルカを発見したらしいナギが、ぐるぐると上空を旋回していた。

 何をしているのか気になって見に来たようだ。


 少し開けた場所を探して歩いていくと、どうやら以前にナギが着陸したらしき場所を発見する。

 木がなぎ倒されているのでとても分かりやすい。

 おそらくここで魔物の狩りでもしたのだろう。


 そこで上空に向けて手を振ると、ナギが数本の木をなぎ倒しながらゆっくりと着陸する。まったく同じ場所にはうまく収まれなかったようだ。

 首をぐるっと回して近づけてきて、何やら喉を鳴らしているのは『何してるの?』という問いかけだろう。

 口の辺りをポンポンと叩きながら説明をしてやる。


「今日は森の中を散歩しているんです。ナギもお散歩ですか?」


 ハルカの問いかけに、ナギは喉を鳴らして返答をする。

 しばらくそうして喋っていたが、このままではずっとそうしていそうだと気づいたハルカは、苦笑してナギにお願いをする。


「たまには一人でお散歩もしてみたいので、ナギも今日はご飯さがしたり、ユーリに遊んでもらったりするといいですよ」


 ナギは特に粘ったりもせず、納得した様子で返事をしてそのまま空へと去っていく。ハルカたちの言うことはちゃんと理解しているのだ。

 もしおしゃべりができれば面白いかもしれないとも思うが、そもそも喉の器官が人の言語を発するようにできていないのだろう。

 真竜たちのお喋りは、どうやら魔法によるものだ。

 長年生きたからこそ身についた技術なのだろう。


 ナギももしかすると、いつか必要に駆られれば習得するのかもしれないが、現状互いに困ったことは全くない。

 ハルカたちが話し、ナギが理解して行動をする。

 ナギの行動も単純で、何がしたいのかはハルカたちが大体理解してしまう。

 だからもしかすると、この先もずっと習得しない可能性だってある。


 面白いかも、と思えども、ハルカもどちらでも構わないというスタンスだ。

 喋っても喋らなくとも、かわいい家族の一員には違いない。


 そんなことを考えながらまたふらふらと森の中を彷徨っていると、木々の隙間から、ハルカ同様ふらふらと森の中を彷徨っている人影を見つけた。

 こんな森の奥で何をしているのか、何者なのか、とハルカは警戒して足を止めたが、それはあちらも同様でぴたりと動きが止まる。


 身長は自分よりも少し小さいだろうか、とハルカが目を凝らした瞬間、その人影が消え、鼻と鼻が接触するほどの距離に、それが突然出現した。

 ハルカは驚きのあまり声も出ずに、そのまま数歩後退する。


「……見たことある綺麗な人。こんなところで何をしているのかしら」

「お……、お久しぶりです、ユエルさん……」


 そこにいたのは、ハルカがこの世界において最も何を考えているかわからないと思っているエルフの美女。特級冒険者の【致命的自己フェイタルアクシデント】こと、ユエルであった。

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― 新着の感想 ―
森を歩けば特急冒険者に出会う・・・・新しい諺の誕生に出会えてうれしい(白目
うわ出た
1番ダメなエンカウント
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