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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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同じ経験

 新年の本当に忙しい時期にお邪魔するのも〈北禅国〉に迷惑だろうと、ハルカたちはしばらくの間拠点でのんびりと過ごすことになった。

 ハルカは年が明けたところで、不意に米が食いたくなって、皆が忙しくしていない時間を見計らって台所へ向かうことにした。

 米は美味しいのだが、どう扱えばいいのかよく分からないという事情から、ハルカが自分で炊くようにしているのだ。


 髪を結んで、腕まくりをしてやって来たのだが、途中でコリンに見つかってしまった。


「そんなに気合い入れて、なにしてるのー?」

「あ、いえ、ちょっとお米を食べようかなと」


 別に悪さをしているわけではないのだが、急に声をかけられると驚いてしまう。


「あ、そうなんだ。髪、もっとちゃんと結んだほうがいいよ?」

「あ、駄目ですかね?」

「うん、やってあげるから」


 鏡も見ずに適当にまとめたものだから、うまく束ねられていないものもある。

 本人は気にしていないけれど、見ている方からしたら気になるだろう。

 コリンからしても合法的にハルカの髪の毛をいじれるチャンスだ。見逃すわけがなかった。


 ハルカを椅子に座らせて、鼻歌を歌いながら後頭部にお団子を作っていく。

 何が行われているかわからないけれど、ハルカとしては、好きにやらせてあげたほうが機嫌がいいのでなされるがままだ。コリンが自分の髪の毛をいじることが好きなのはハルカも把握している。


「ハルカさー、あれからお風呂行かないよねー」

「あ、ええ、まぁ、別に気分の問題で」

「一人で入りたい?」


 ハルカはしばし視線を泳がせてから、「まぁ、そうですね」と素直に答えた。

 二人きりで話している時に言葉を飾っても仕方がないだろうと、本音を漏らしたのだ。本当はそうやってちゃんと言っても、コリンが変な勘違いをしないことくらいは、ハルカだってわかっている。

 雰囲気に流されてしまうこともあるが、真面目に話せば、ちゃんと本音で話すことだってできる。


「恥ずかしいから?」

「恥ずかしいというより、相手の肌を見るのがちょっと」

「やっぱそっちかー……。気にしなくていいのになー」

「気になりますよ、やっぱり」

「そう? 正直私、モン君とかに見られても気にならないけどなー」

「それはなんか、ちょっと、モンタナに失礼なような……」

「え、そうなの?」

「男性的には、多分、まぁ、なんか、いや、やっぱりどうなんでしょうね」


 男として見られていない、を悔しいと思うかは個人差があるので微妙なところだ。

 考えてみると、モンタナはあまり気にしないタイプであるようにも思える。

 ただ、一般的にはあまり良い発言ではないことは確かだ。


「ふーん、じゃあハルカもそれが嫌だったとか?」

「あ、それはないです。私はそういうの感じたことないので」


 正直体が完全におじさんであった時ですら、気にすることはなかっただろう。

 それはそれでどうなのかとは思うが、大人になってからは特に、恋愛関係を築こうとしたことも、対象となるための努力をしたこともなかったので、気にする権利もないと思っていた。


「ふーん? ……私はさ、ハルカのこと家族みたいに思ってるからさ。一緒にお風呂入るのも面白いかなーって思ってるだけなんだよね。レジーナも全然気にしてないし、それとあまり変わらない感じ?」

「あー……、レジーナは確かに、全然気にしてませんね」

「でしょー?」


 髪はもう結び終えたのか、コリンの手は止まっている。

 でも、コリンはハルカの後ろに立ったまま話を続けていた。


 ハルカとしても顔を見ないで話しているほうが、少しだけ本音で話しやすい。

 顔が見えていると、どうしても相手の表情を窺ってしまう。


「私も無理に入ったりしないからさ。レジーナが壊した閂直して、ちゃんとお風呂入りなよ。好きなんでしょ?」

「そうですね……」

「それでさ、気が乗ったら一緒に入ろうよ」


 ハルカはぐるぐるとコリンの言葉を考える。

 特に家族みたいに、という言葉がしっかりとハルカの心に刺さっていた。

 なんとなくだけれど、コリンが一緒にお風呂に入れないことを寂しがっているような気がしたのだ。

 その上で自分の考えは尊重してくれようとしているのだろう、と思う。

 ハルカはゆっくりと大きく息を吐いて、小さな声で答える。


「…………入っても、私は壁の方を向いてるだけですよ」

「……いいのいいの、別にそれで。あったかいねーって、外寒いけど、お風呂はいいねーって、話ができるだけでもいいし。なんか、いいじゃん、そういうのも」


 言ってしまった、という気持ちと、コリンの声が少しだけ浮かれたような気がして、これでよかったのかもしれないという気持ちで半々だ。

 多分コリンは、好きな人や家族と同じ経験を一緒にするのが好きなのだ。

 アルベルトの冒険についてきている時点で、多分それは間違いない。


「まぁ、そうですね……。……とりあえず、お米炊きましょうか」

「あ、うん、やろうやろう! ええっと、まず量を計るんだっけ?」


 コリンはすぐに楽しそうに動き出して、〈北禅国〉から持ってきた升を探し始める。いつもハルカが使って勝手に片づけているので、どこにあるのかわからないのだろう。

 どうやったらコリンたちにも米を美味しく食べてもらえるかなぁと思いつつ、ハルカは棚の奥にしまっておいた升を取り出すのであった。

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― 新着の感想 ―
もう数年以上女体なんだからさすがに頑なすぎるかなあとは思う
物凄い引っ張るよね。いつになったら普通に一緒に入れるようになるんだ?
壊してたのか…www
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