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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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戦いの性質

 レジーナが〈アラスネ〉を振りかぶりながら駆け寄っていくと、プエルもがっしゃんがっしゃんと音を立てながら距離を詰めていく。

 隠密行動には向かないなぁと思ったハルカだが、その勢いは重い鎧を着ているとは思えぬほどに素早かった。


 アラスネが振りかぶられると、プエルは左半身を前に出してそれを受け止める構えをとる。そうは言っても勢いが緩むことはなく、〈アラスネ〉と盾がぶつかり合った時の衝撃は計り知れない。

 レジーナが〈アラスネ〉を左から右へ思い切り振り抜く。

 激しい衝突音、ではなく、金属のこすれる音がして、〈アラスネ〉が地面を叩いて爆ぜさせる。

 それと同時にプエルの体が見事なまでに横に一回転。

 意味のない行動ではなく、レジーナの攻撃の衝撃を受け流したのだ。

 盾で滑らせたというのに、体を回転させなければ受け流せないほどの一撃だったと考えればすさまじい。


「おぉおぉおお?」


 回転する間プエルは驚いたように間の抜けた声を上げていたが、ピタリと足で着地する。足元が爆ぜて凹んでいるせいで少々よろけたところを、レジーナの二撃目が襲い掛かる。


 下から上への一撃であったが、これは体を傾けて鎧で受け流す。

 角度によってはちょっとした動きで攻撃を受け流すことができてしまうらしい。

 再び金属が悲鳴を上げた。

 耳に響く戦いだ。


 三撃目。

 縦の攻撃をバックステップで回避。

 四撃目、今度は盾のない左側面を狙った攻撃。

 プエルはこれをランスの側面を滑らせるようにして防御したかと思うと、その勢いに乗ってぐるりと回転。レジーナに背中を向けた後、カウンターを仕掛けるように体ごとランスを突き出してくる。

 これが初めてのプエルの攻撃であった。

 鋭い突きはレジーナの修道服を破り、わき腹を擦って肌を引き裂く。


 十分に身体強化されていたはずだったのに肌を破るほどの攻撃だった。

 凄まじい摩擦によるものか、肌を割いた痕は火傷のように赤く爛れている。


「むむ!」

「ぼけがぁ!!」


 その瞬間大上段に振り上げていたレジーナの一撃がプエルの脳天を襲う。

 流石にまずいのではと思って腰を浮かしかけたハルカだが、プエルはきちんと首を傾けて攻撃を受け流した。

 それでも肩に滑るようにして〈アラスネ〉が衝突する。

 ランスを手放したプエルは、素早く数度バックステップして距離をとる。


「むむむ、やりますね」


 プエルの左肩部分の鎧がへこんでいるところを見ると、衝撃を受け流し切れなかったのだろう。だらりと左腕が垂れて動かなくなっている。

 一方でレジーナも右わき腹の一撃は、見た目以上にダメージを受けているようで、舌打ちをしながら大きく息を吐き出して呼吸を整えているようであった。


「そこまでだ」

「まだやれる」


 テロドスの制止に対して、レジーナがすぐさま反論する。


「やれるにしても、治してからにしましょう」


 しかし続けてハルカが声をかけると、レジーナは舌打ちしながら渋々中断を受け入れた。

 このまま続けていればどちらが勝ったのか想像つかないが、訓練なのだから怪我をした状態でずっと続けるのもどうなのだろうという話である。もちろん、いざという時の隠し玉がたくさんあるタイプは、ここからが強かったりするのだろうが、レジーナもプエルも、見たままの戦い方をする。

 きっとここから始まるのは泥仕合だろう。


 ハルカは治癒魔法をかけてレジーナの傷と服を、そしてプエルの鎧と怪我を治していく。


「次俺な」

「なんでだよ」

「順番だろ、順番」

「まだ勝負ついてねぇだろ」

「引き分けで、次俺の番!」


 レジーナとアルベルトはしばし睨み合っていたが、やがてレジーナが折れたようだった。前までだったら意地でも譲らなかっただろうが、集団で生活するのにも慣れてきたのだろう。

 むっとした顔で見学席へ向かい、ドスンと腰を下ろした。

 

「プエルさんは大丈夫ですか?」

「次は勝ちます!」


 ハルカが心配をして尋ねると、元気にそんな返事をしてくれた。

 そんなことは聞いてない。


「言いやがったな」


 おかげでアルベルトが盛り上がってしまっている。

 ハルカがため息を吐いて見学席へ戻ると、コリンが互いの間合いを離して戦いの準備をはじめていた。


「モンタナはいいんですか?」

「相性悪いです。戦うと……、本気で仕留めに行かないと勝つの難しいですよ」

「なるほど……」


 段々と戦いが極まってくると、そういうふうになってくるのかとハルカは思う。

 特にモンタナは体の大きさなどもあって、じわじわ削るか、一瞬で命を奪うかという戦い方をすることが多い。

 そうなるとどうしても全身鎧相手の手合せというのは、難しくなってくる。

 ただ、だから黙って見ているだけかと言えばそうではなく、モンタナはじっくりとプエルの隙のようなものを探っているようだった。

 実力のある全身鎧騎士の戦いを見られる機会など早々ない。

 見ることができるだけでもいい経験である。


「アルは勝てますかねぇ」

「…………多分、アルの方が有利です。相性です」

「え、そうなんですか?」


 ハルカがモンタナの想定に驚いているうちに、コリンが「じゃ、はじめー」と声をかけて手合わせが始まった。

 アルベルトが大剣を振り回し、先ほどのレジーナと同じように攻撃をすると、盾が衝突の音を鳴らす。

 アルベルトの攻撃は滑らず、余すことなく衝撃を盾に伝えているようで、すぐさま次の攻撃に移っていく。


「む!? むむむ!? むぅ!?」


 その度プエルは攻撃を受け止め、妙な声を上げ続けている。

 アルベルトの攻撃はやむことがなく、プエルは防戦一方だ。


「ほう……、やるな」


 テロドスが驚きの声を上げていたが、なぜこんなことになっているのか、ハルカにはさっぱりわからない。レジーナとアルベルトの違いはいったいなんなのか。

 ハルカは首をかしげながら経過を見守ることしかできなかった。


明けましておめでとうございます!

本年もよろしくお願いいたします!!!!

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― 新着の感想 ―
ハルおじの場合身体の丈夫さとあまりある魔力でゴリ押しで終わるからなぁ またしても何もわかってないハルおじ
今さらですが、明けましておめでとうございます。 新年から、レジーナ、アルベルトとの腕試し回。みんなの成長ぶりが感慨深いですね。
面の攻撃は受け流せるけど、重い一点集中の攻撃は喰いこんじゃう感じか たしかにレイピアやナイフの軽い斬撃は、隙間を突く感じにしないと駄目だな 急所を突く感じになるんで致命傷負わせちゃうわ
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