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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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1500/1507

長老の合流

 ロルドは他にもいくつかノクトの話をした。

 例えば、【フェフト】の東には、〈氷竜のうろ〉と呼ばれる山岳地帯がある。そこの調査のために開拓して拠点を構えていた場所が、発展し〈ノクトール〉の街になった、とか。

 おそらくヴァッツェゲラルドと知り合って、そこに住まう竜もまた真竜であろうと推測し、【フェフト】に危害を及ぼさないか調べていたのだろう。

 つい先日、あまりの寒さにクダンですら行かなかった、というような話を聞いたばかりのハルカたちとしては、成程と思うところである。ノクトが何を考えどのように生きてきたのか、ロルドの言葉からなんとなく見えてくるものがあった。

 きっとそこにも何かしらの物語があるのだろうけれど、ノクトは語らないのだろうし、ロルドもまた詳細は知らないようだ。


 さて、そんな話をしているうちにナギががうがうと声を上げた。

 目的の森が見えてきたことを知らせてくれたらしい。

 お迎えに行かなければならないということで、ハルカは立ち上がり、仲間たちに告げる。


「迎えに行ってきます。ここに戻ってくるか……、直接ご案内することになるかは分かりませんが……」

「んー、ハルカに連れて行ってもらいたがるんじゃないかなぁ」

「あの爺さんたちハルカのこと気に入ってたしな」

「そですね」

「実は私もそう思います」


 全員揃って、おそらくそうなるだろうと思っているから妙な笑いが漏れてくる。


「みんなママのこと好きなの?」

「まぁ、分からんでもないが」

「うーん……。エルフの里では若い子が少ないみたいで……。一応私も若いエルフという大枠に入れてもらえたみたいです」


 エニシとユーリが首をかしげるので、誤解のないようにハルカは言い訳をする。


「エルフの長老共はすぐ人を子ども扱いするからな」


 ロルドがあきれ顔で肩を竦めた。

 特に子ども扱いされやすそうな王様が言うと説得力があった。

 

「師匠、行ってきます」


 ハルカは実は起きているのではないかと思っていたノクトに声をかけてみると、小さな手が挙げられてひらひらっと後ろを向いたまま振られた。多分話もちゃんと聞いていながら止めなかったのだろう。

 ロルドとハルカたちの交流を邪魔したくなかったのかもしれない。


 ハルカが普通に宙に浮かび上がると、ロルドの「おお……?」という困惑した声が上がる。障壁で飛ぶのはノクトで見慣れているが、使わないで飛ぶ人は初めて見るのだろう。


 ハルカはそのままナギの背から飛び出して、まっすぐにエルフたちの陣地へと向かった。

 振り返れば反乱軍たちが暮らす山が見えるが、特に動きは見えない。

 ぎりぎりまであそこで時間を稼ぐのが彼らの仕事なのだろう。


 降りていく途中で、エルフたちが慌てて弓に矢をつがえる姿が見えたが、それがハルカであると気が付いたのか、矢が放たれることはなかった。

 エイビスが先に戻ってきて、ハルカの来訪を知らせていたのだ。

 障壁に乗ってナギの背に戻っていく姿は一度確認しているので、空からの来訪もあり得ると知らせてある。


「すみません、ハルカ=ヤマギシと申します。長老の皆様のお迎えに上がりました」


 地面に降りてすぐに頭を下げると、エルフたちがほっとした様子で「ちょっと待ってくれ」と返事をくれる。

 ハルカの姿を確認した時点で既に知らせが走っていたようで、言葉の通り、間もなくエイビスと長老が一人、姿を現した。


「お早いですわね。お爺様方が話し合った結果、ベイベルお爺様が一緒に来てくださることになりましたの」

「うむ、ハルカ殿。会談には最も古きものである我が付き添おう」

「どうぞよろしくお願いいたします」

「うむうむ」


 ハルカの丁寧な態度に、ベイベルは満足そうにうなずく。

 元々一番しっかりした態度をとっていた長老だ。

 ハルカとしてもこの人が来てくれるのが一番安心であった。


「ではご案内します。地面に障壁を張るので空から行きましょう。上空でナギの背に乗せてもらおうかと」

「ふむ。どちらにせよ空を飛ぶのであれば、そのまま向かっても良いのでは?」

「あらお爺様、竜の背に乗ってみたくないのですか?」


 予想通りの提案はあるが、それに対してエイビスがさらりと他意のない質問を投げかける。ここ数日ですっかりナギとも仲良くなったエイビスとしては、ベイベルにもナギと仲良くしてほしい。

 それだけの話だった。


「む……、確かに……、竜の背に乗って案内してもらうのも一興か」


 しかしベイベルからは、エイビスがナギの背に乗りたがっているように見えたのだろう。あっさりと予定を変更する。


「ではまず、ナギの背中までご案内します」


 ハルカは静かに微笑んで、二人が障壁に乗り込んだことを確認してから、ゆっくりと空に浮かび上がる。

 ナギに近付いた時は、長命のベイベルも流石にその迫力を受けて動揺していたが、二人の若いエルフの娘の前でそれを見せまいと、堂々と背筋を伸ばして虚勢を張った。

 意地の張り方というのは、何歳になっても変わらぬものである。


 そうしてナギの背中までたどり着くと、仲間たちが「おー……」と少しばかり驚きながらハルカたちを迎え入れた。長老がわがままを言わず、予想が外れたことに驚いたようだ。

 若いエルフ娘に甘いせいで、すっかり【竜の庭】の仲間たちには侮られているエルフの古老である。


1500話で偉い

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― 新着の感想 ―
祝1500話!めでたい!!! 2000話は再来年あたりかな?ちゃんと続いてるところしか想像出来ない。
1500!偉い! しかもまだまだ先が広がってる!
偉すぎです!凄い!
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