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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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お出かけ前の雑談

 二人がのんびりとしていると、その様子に気づいたのか、少し離れた場所からエニシがやってくる。エニシも家事の手伝いをしていなければ、適当にプラプラしているばかりなので、こうしてお喋りでもできそうな場所を見つけると寄ってくるのだ。


「邪魔しても良いか?」

「構いませんよ。ちょうどエニシさんにも話があったんです」

「ほう、なんだ?」



「エニシさんは一緒にリーサの所へ行きますか?」

「北禅国の件か。まぁ、顔を出すか」


 前回の訪問でリーサとエニシはなんとなく仲良くなっている。

 個人としても割と普通に話せるようであったし、これからの活動を考える上でも、付き合いを持っておくのは悪いことではないはずだ。

 一緒に行くことを決めたエニシも、どこか楽しげである。

 大変なことばかりではなく、たまにはこんな楽しいお出かけもいいものだと、ハルカは静かに笑う。


 それからちょっとして、大国の女王に会うことを楽しみに思っている自分に気が付き、随分と今の状況に馴染んできてしまったなぁと、遠くを見つめた。昔だったら会うことですら緊張して、どうしたらよいかと慌てていたはずなのに、すっかり度胸がついてしまったものである。


「その後エルフの森にも寄って行こうかと思っているんですが、大丈夫ですか?」

「構わん構わん、いつ出る?」

「そうですねぇ、三日くらいのんびりしてからですかねぇ……」

「ほうほう、そんなものか。ハルカはよく働く」

「そうですか?」


 ハルカ個人としては、昔と比べるとのんびりと暮らしているつもりだ。

 会社勤めの時は、朝六時に家を出て、夜の九時に家に帰ってくるような生活だった。持ち帰れないものも多く、家では仕事をしないタイプだったので、土日に顔を出すことも割と当たり前。

 内勤族だったので、出張はなかったが、ほとんど毎日のように仕事に出ていたことは覚えている。


 それが今は、長いこと出張で仕事をして、帰ってきてはしばらくのんびりという周期で動くことが多い。

 当時と比べて単純に体が疲れ知らずなこともあるが、個人の所感としては忙しくしている印象はなかった。当時と違って今は、自分の選んだことをやっているという違いもあるのかもしれないけれど。


「ほれ、タゴスがいるだろう? あれが言うには、冒険者というのは金が尽きるまでダラダラと暮らすものが多いのだとか。ハルカなんて相当に金持ちだろう? 一生かかっても使い切れぬほどに金があるのに、随分と忙しくあちこち出かけるものだ、とな」

「あー……、言われてみればそうですね。うーん、もう少しのんびりした方がいいと思いますか?」

「はて、わからん。だがまぁ、ハルカにしかできぬことも多いだろうし、ハルカが嫌でないのならいいのではないか?」

「そんなものですか?」

「うむ、多分」


 納得するようなしないような。

 まぁ、ハルカ自身が忙しく働いているという自覚がないので、おそらくそれでいいのだろう。

 話しているうちに、ユーリたちが訓練を終えてやってくる。

 ユーリの成長は最近緩やかになっており、大体七歳から八歳児、小学生低学年くらいの身長だ。場合によってはこのくらいの年から学校に通わせてもいいのだが、森の拠点付近には当然そんなものはない。

 そういった教育機関に預けるとなると、学術都市と名高い〈ヴィスタ〉に行くのがいいのだろうが、生憎ハルカたちは〈オラクル教〉と微妙な関係だ。ユーリ一人をこの年齢で預けるわけにはいかないし、仮に仲が良好だったとしてもそんなことをするつもりはない。

 ユーリがあちらの学園に通うというのならば、ハルカも近くに居を構える所存である。そもそもお金は十分にあるので、拠点を他の場所に持つこと自体は難しくない。

 問題があるとすれば、その拠点を管理する人材が不足していることくらいか。 

 

 南方大陸の特級冒険者であるリヴは、拠点をいくつか持っており、それを執事のような人に管理をさせていた。そんな風に街中に家を持つのもいいのだが、そうなると今度はナギが近くまで来れないのがかわいそうだ。 

 いつかはユーリに友達を作る機会を、と思うのだが、悩み事は尽きないハルカである。


「ママ、見てた?」

「見ていましたよ。私より上手に剣を振りますね」


 褒めながら撫でてやると、ユーリは満足そうに笑う。

 ユーリも随分と表情が変わるようになったものだ。

 実際ハルカも、持っている杖や剣を使った戦いの訓練をすることがあるのだが、結局叩きつけるような動きしかできず、刃筋を立てることもうまくいかない。

 根本的に運動音痴なのだ。


 下手に繊細な技術を扱おうとするより、有り余る膂力と防御力で、攻撃を体で受けつつ、拳なり、硬い棒なりを叩きつけるほうがよほど強い。そもそも魔法使いであるから、前線で戦うこと自体が間違っているのだが、一応学ぶ意思自体はあるので、時折訓練は続けていた。

 ハルカが使えなくとも、訓練を積むことによって、相手の動きを察する能力は高くなったりする。おそらくまるで無意味なこともないだろう。


 冒険者を始めた当初からすれば、力加減は抜群に上手になっているので、まぁ、一応は進歩が見られるのだけが救いだろうか。


 戦いや魔法に関して面白い話としては、ハルカの杖のことがある。

 この杖、ハルカは本当に杖としてしか使わないのであるが、試しにエリに使わせてみたところ、随分と魔法の威力が増幅されたのだ。ある意味宝の持ち腐れであるのだが、ハルカもモンタナに作ってもらった物なので他人に譲る気は全くない。

 ハルカはちょっともったいないなという気持ちを持ちつつ、真竜の牙と王国の宝玉によって作られた超高級な杖を持ち腐らせているという事実があった。


今日、漫画三巻発売です!

よろしくお願いしまーす!

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― 新着の感想 ―
肉体スペック的に刃筋を立てれたら後ろの山ごと切れそうだからこれで良いのではw
本屋の現存する街まで電車で片道90分 ちょっとした旅だと思って買いに行く ついでに美味しいご飯を行き帰りに 最近うどんが美味しい季節 卵天カレーうどん、釜玉しょうゆバター 生パスタ系のお店も気になる …
3巻神棚に飾っておきます そういえばオランズの規模でも学校はなさげでしたし、いっその事オランズに学校を作ってもいいのかもしれない
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