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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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ノクトとののんびりとした会話

 翌日巨人たちの住む平原へ出向いて、蜘蛛人たちとの話をしたハルカたちは、そのまま真っすぐに森の拠点へ向かい、夕暮れ時には到着することができた。

 いつも通りに状況の共有をしてその日は休み、また暫しの休息の日々となる。

 次は北禅国がどうなったかについて、エリザヴェータと共有しに行くつもりだが、それも一休みしてからだ。


 ハルカはユーリがモンタナと剣の訓練をするのを眺めながら、隣でのんびりと浮いているノクトに話しかける。


「師匠って以前クダンさんと一緒に、〈混沌領〉に行ってますよね?」

「ええ、そうですね。【独立商業都市国家プレイヌ】を建国した頃のことです。すぐ隣の土地に何がいてどうなっているか知らないと困ると思いまして」

「その時って、蜘蛛人と戦ってます?」

「はい、クダンさんが。僕は治しただけですねぇ」

「ああ、やっぱりそうなんですねぇ……。なんだかそれらしいことを、蜘蛛人のプルプワさんが言ってました」

「あぁ、あの大きな」

「はい、あの大きなです」


 二人の会話はどこかふわふわしているが、ノクトはいつも通りだし、ハルカも今日は気を抜いている部分もあるがいつも通りである。切羽詰まっていない時に二人が話をしている時はこんなものだ。


「そうなんですよねぇ、僕は百年くらい前に〈混沌領〉をうろつきましたが、王様にはなりませんでしたねぇ。もちろんクダンさんも。ふへ、ふへへ」


 ハルカをからかうように言って、ノクトはふへふへと気の抜けた笑いを漏らす。


「まぁ、私が断れないから悪いんですけど……。……割と今は後悔していないですよ。話してみれば面白い人たちばかりですし、皆さん素直です」

「そうなんですよねぇ……。彼らは純粋に生きている。人の方が面倒くさいことが多いんですよねぇ……」

「……大きな集団を維持するためには、決め事も多くなります。決め事が多くなると、権力とかが生まれたりもします。仕方のないことなんでしょうね」

「ではなぜ人は群れるのでしょう?」


 突然始まった問答は、緩い雰囲気のまま進行された。

 ノクトもハルカも、雑談の延長でしかなく、何か問題を解決するために話しているわけではないからだ。


「そうですね……、多分、あまり強くないからだと思います。本来、普通に生きている人族は、破壊者よりも獣よりも随分弱いです。だから群れて安全を確保するんだと思います。良く言うのであれば助け合いだと思います」

「そうかもしれませんねぇ。逆にいえば、外敵がいないものは群れる必要がない。群れるとしても家族くらいだったりします。例えば、吸血鬼。それに特級冒険者。じゃあ、強いはずの巨人が集団で暮らしているのはなぜでしょう?」


 言われてみれば〈混沌領〉の巨人たちは、長をてっぺんとした集団生活をしている。ハルカはしばらく首をひねって考えてから、適当に思いついた仮説を述べた。


「ええと、巨人は背が高いじゃないですか」

「はい」

「それで、強さ比べも好きだと思うんです」

「はい、そうですね」

「そうすると互いの姿を発見しやすくて、争いが起こります。それを繰り返しているうちに、自然と一番強かった巨人が長になって、なんとなく集団生活をしているのではないかと」

「おぉ、なるほどぉ……、そうかもしれないですねぇ」


 話しているうちに自分でも納得ができたハルカは、ノクトの肯定に合わせて頷いた。即興で考えた割には的を射ていそうである。


「そしてハルカさんはその長に勝ってしまったから王様なんでしょうねぇ」

「……もしかして、師匠、王様になったことまずかったんじゃないかって思ってますか……?」


 何度かからかわれるうちに不安になったハルカが問いかけると、ノクトはまた愉快そうにふへふへと笑った。


「いいえぇ、それは自由です。ハルカさんの人生ですからねぇ。……ただ、次々と色々なことに巻き込まれていくので本当に退屈しないな、と。ハルカさんは能力的にはすごく強いのですが、押しに弱いですからねぇ。ちぐはぐだからこそ面白いことが起きるんでしょう」

「自覚はあるんですけど、なかなか追いついてきません。もしかすると、ずーっとこうして悩みながら生きていくのかなぁと思ってます」

「そうなんじゃないですかねぇ」


 横向きに寝転がってハルカを見ていたノクトは、ごろりと寝返りをしてうつ伏せになる。ノクトは滅多に仰向けにならない。そのためには障壁に穴をあけて、尻尾をうまいことそこに収納しないといけないからだ。

 肘をつき、ぷにっとした頬を手で支える姿は愛らしいのだが、二つ名は『血塗悪夢』だし、御年百三十歳を超えている。


 ふと先日のプルプワと話したことを思い出してハルカは更に尋ねる。


「前にヴァッツェゲラルドさんから、クダンさんが『至っている』と聞いたことがあるんです。師匠もクダンさんも、カナさんたちも、皆若いじゃないですか。魔素を使っていれば最適な肉体に、という話は伺ったのですが、それにしては若すぎると思うんです」

「そうですねぇ、ようやくそれを聞きますか」

「あ、やっぱり何かあるんですね」

「まぁ、話を続けてください」


 ノクトは楽しそうに話の先を促す。


「プルプワさんは、神様が不老長寿にしてるんだろう、みたいなことを言っていたんですが、どうですか?」

「はい、分かりません。でもそうかもしれませんねぇ。あるいは、神様の領域に一歩足を踏み入れている、という考え方もできるかもしれません。それを『至る』と表現したのなら分かりやすいですね。真竜が長生きしているのと同じ理屈、ということです」

「……では、師匠は年を取らないし死なない、ということでしょうか?」

「いいえ? 殺せれば死ぬと思います。それに、生きるのに飽いたら死ぬのかもしれません。そうですねぇ……、僕たち年を取らない者たちの共通点は多分、神様に出会ったことがあることと、みーんな揃って、すっごく我がままってことでしょうねぇ」


 ノクトの返答は酷く曖昧だった。

 本人も分かっていないのだから仕方のないことだが。


「……よくわかりませんね」

「ゼスト様と話す時に聞いてみたらどうです?」

「思い出したら聞いてみます」

「案外、分かんないとか言いそうですけど」


 ハルカは確かに、と思いながら笑って頷き、それから一つ伝えるべきことを思い出す。


「今度は〈北禅国〉の件の報告に、リーサの下へ行くつもりですから、師匠も一緒に行きましょうね」

「…………まぁ、そうですねぇ。あまり放っておくとまた拗ねますから」


 あまり悩みがなさそうなノクトであるが、エリザヴェータのことに限っては、毎度色々と悩みが尽きないようである。

 ノクトは珍しく苦笑をしながら、ハルカの誘いに頷くのであった。

明日漫画三巻発売ですよ、というと曖昧なので、11/7と表記しておきます。

宣伝宣伝!!


あ、あと、たまに書こうと思っていつも忘れるのですが、ブクマとか評価とかまだだよって人がいたら貰えるとモチベ上がります。たまにはね、お願いしておこうね。

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― 新着の感想 ―
真っ直ぐ帰ってきたのか まず連絡が至急な巨人に話を通してから帰る流れだと思ってたけど
絵が付いて明確にあざとい師匠 桃色ですよぉ
行きますか?じゃなくて行きましょうねっていうのが良い そういうハルカとノクトの距離感が好き
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