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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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プルプワとおしゃべり

「うおぉお、でっけぇ……」

「蜘蛛人ってこんなに大きくなったかな……?」

「横に小さいのいるです」

「小さいって言っても……でっかくない?」


 森から抜けたところで、木の上に待機する二人の蜘蛛人を見て、仲間たちがそれぞれ反応をする。無言だったレジーナは武器を握りしめて、じろりと睨みつけただけだ。こういう警戒心の高いところは出会った頃から変わらない。


「人ね。私は人にあまりいい思い出はないのだけど、ま、千年も時が経てば反応も変わってくるか」

「当時はどんな反応だったんです?」

「大体の人は怖がるか、どこか蔑むようだった気がする。記憶なんてもう朧気だけどね。こんな好奇心たっぷりに、楽しそうな反応をされるとは思わなかった。一人は随分と警戒してるみたいだけど」

「あ、レジーナは人相手でもあんな感じなので、あまり気にしないでください」

「そう?」

「ハルカ、もっと近寄ってくれよ。おー、かっけえな……」


 アルベルトは初めて見た蜘蛛人に感動しているのか、あるいはその黒々とした鋭い足の機能性に驚いているのか、やっぱり楽しそうであった。

 プルプワもそんな純粋な反応をされると楽しいのか、どこか表情が緩んでいる。


「しかし知らなかった。いつの間にか人族と仲良くできる時代が来ていたとはね。もしかしてこれから人族がたくさん出入りしたりするの?」

「あ、いや、えーっと……。その辺りの話もしていなかったですね」


 話をしていなかったうえに、仲間たちの反応があまりに普通だったせいで、プルプワは勘違いをしてしまったらしい。今の時代の人族は、むしろ昔よりもさらに破壊者ルインズに対して敵対的であることが多いので、その間違いはかなり危うかった。


「あら、違うの?」

「はい、違います。一般的に人族はこの辺りに住んでいる種族の方々のことを破壊者ルインズと呼んで、敵対種族として認識しています。私は……、私たちは色々とあってそんな考え方に疑問を抱きました。ええと……、とっかかりはここにいるイースさんなんですけど……」


 ハルカがすぐ横にいるイーストンを手で指し示すと、イーストンが話を受け継ぐ。


「僕は吸血鬼と人の混血でね。人族の住まう地域で悪さをする吸血鬼を倒して回ってたら、ハルカさんたちと仲良くなってさ」

「へぇ、吸血鬼と人族? 私の父親は巨人族よ」

「え? あ、そうなんですか?」

「そうそう。そもそも蜘蛛人は女しかいないから、他から婿を取るの」

「あぁ、ラミアの方々と同じですね」

「そうそう。私も巨人族との間に子供を産んだから、この森に棲む蜘蛛人は普通よりも大きなものが多いのよね。この子くらい世代を重ねると、ちょっと小さくなるけど」


 プルプワは爪の先でルージュを指さすが、ルージュは緊張しているのかだんまりのままだ。生来の気質である臆病さが出ているのかもしれない。


「私が生まれた頃は、人族との子がいたりもしたんだけどね。ま、昔の話」


 それに対してどんな感情を持っているのか、表情からはわからないが、プルプワは肩をすくめて話を続ける。


「それで? なんでそのイース君と会ってから、こうなっちゃったの?」


 こうなっちゃったというのは、この辺りの王様になっちゃったという意味であるが、それに関してはハルカとしてもなんとも説明しがたい。


「本当に成り行きです。まず、話ができる相手と意味もなく殺し合いがしたくなかったというのが大前提です。森の向こうにある山脈を越えると、またしばらく森が続きます。そこに、つい少し前までアンデッドが溢れていたんです」

「アンデッドっていうと、あれ? 死んでるのに歩き回って襲ってくるの?」

「はい、そうです。それが山ほどいて、こちらとあちらを分けていました。だから千年もの間、こちらに人族がやってこなかったのだと思います」

「あれもねー……、人族が争い始めてから増えたのよね。まぁ、たくさん死人が出たからかもしれないけど」


 本当はそうではないが、そこを説明するとまた長くなるので省略。

 ハルカは話を続ける。


「そのアンデッドが街の方にやって来たので、討伐したんです。そうすると、それがたまっていた場所が、ちょうどぽっかりと空き地になりまして……。アンデッドがいなくなったことでリザードマンが様子を見に来たんです」

「そうそう、そんでリザードマンの里に行ったハルカが、何かしらねぇけど王様になったんだよな」

「ふーん、リザードマンって相変わらずそんな生き方してるんだ」

「昔からなんですか?」

「昔からよ。どうせハルカがリザードマンと手合わせして勝っちゃったんでしょ? 昔それで巨人族とか、ケンタウロスとか、吸血鬼とかを一族の長にして暮らしているリザードマンもいたわよ」


 歴史の生き証人に聞けば、面白い話も出てくるものだ。

 随分と長い時間が経って、リザードマンはリザードマンの中で王を決めるのが当たり前になっていたが、昔はもっと柔軟だったのだろう。別種族として王になったのはハルカが千年ぶりとはいえ、初めてのことではなかったらしい。


「それで……ええと、リザードマンのことがあったり、ナギの暮らす場所の都合があったりして、私たちはその跡地に住むことにしたんです」

「アンデッドを大量に殺した場所に?」

「あ、はい……」


 そう言われるとなんだか変な奴に思われてしまう気がして、ハルカの返事のトーンが少しだけ下がる。

 実際傍から見れば変な奴には違いないのだけれど。

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― 新着の感想 ―
確かに気持ちのいい場所ではないし、それが普通の反応だよなぁw
巨人属とやっちゃたんだろうが…まともに出来るのか? 小さいんだろうか? 小柄な体格だったのかな つか蜘蛛の後尾なんて知らないがw
蜘蛛人が他種族と子供作れるなら、巨人族がたまに来てるのはそういうつもりなのかもしれんね。 ハルカの傘下になったら更に増える可能性が出てくるかも? 婆ちゃんモテそうだし…。
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