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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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受け入れる時間

 ハルカは今日のうちに樹人ドライアードにも会いに行こうかと考えていたのだが、樹人たちの領域に、ナギが降りられるような場所はないそうだ。頭の上を越えてから戻る形になるのだが、そうまでして会いに行かなくてもという話だった。


「んーっとね、樹人って皆私たちよりのんびりしてるし、あまりおしゃべりしないの。ゼスト様が言うには、樹人と花人アルラウネってさー、元々同じ種族なんだって。意思を持った植物って意味でね? だから風に香りを乗せて交信ができるんだけど……。樹人たちはさ、静かに暮らさせてくれればハルカの勢力下に入って構わないって言ってたよ」

「なおさら会いに行った方が良くないですか……?」

「どうかなぁ。千年前の戦いって、樹人の方が酷く数を減らされちゃったんだよね。だから若い樹人も多いし、そのせいで怖がりなの。人が苦手、みたいなね。今度来るまでにハルカが会いたがってるの伝えといたげるから、今回は放っておいてあげてよ」

「そうですか……、すみませんがお願いします」


 どうやら彼女たちと人との戦いは、ハルカが想像していたよりもずっと深刻な被害が出ていたようだ。そこまで言うのであれば怖がらせるのは本意でないし、対面はまた次回に持ち越しだ。


「なぁ、花人とか樹人ってどうやって増えるんだ?」


 数が増えるとか減るとかの話を聞いて疑問を持ったのだろう。

 ヨンが深く考えることなく質問をする。


「んー? 逆に人ってどうやって増えてるの?」

「あ、あー……」


 問い返されたヨンは、自分が失礼なことを聞いたことに気が付いたらしく、動揺しながら目を逸らした。花人という種族は、植物なのか動物なのかが曖昧だから、普段ならあり得ない質問を投げかけてしまったのだろう。


「ん? どうやって?」

「いや、なんでもない、すまん」

「ねぇーえ、どうやってなのかなぁ? 教えてほしいなぁ?」

「ごめんって、俺が悪かった!」

「別に謝ってほしいわけじゃないけどねぇ?」


 ニコニコと笑って問いただしてくるエノテラは、おそらくそれを知っていてわざと聞いている。センシティブな話をドストレートに聞いてきたのでやり返しているような形だろう。

 ハルカと同じ姿で若いように見えても、エノテラは千年前後生きている。

 さらりとかわすのはお手の物ということだろう。

 うねうねと動いている蔓はどこか楽し気だ。


「まあ、普通に種とか球根とかで増えるんだけどねー。樹人も一緒。何想像したの、ねぇねぇねぇ」

「あ、くそ、悪かったって言ってんのに……」

「気になるよねぇ、私も結構前に来た獣人に聞いたもん。ハルカの師匠だっけ?」

「あ、はい」

「あー、うける、面白いよねヨン君」


 むすっとした表情をしているヨンとは対照的に、エノテラは蕾の中でけらけらと笑い転げた。完全にからかわれているが、そんなことができるくらいには打ち解けたと考えてもいいだろう。


 あまり話に興味のない面々は訓練をしていたが、ほとんどの者はその場でのんびりと過ごしながら、二人と時折ハルカが混ざる会話に耳を傾けていた。

 ハルカの元からの仲間たちはもちろん既に破壊者たちに対する隔意などもっていないが、ヨンやその仲間たちは、こうして長く話をすることで、同じように破壊者に対するちょっとした壁のようなものが薄くなっていく。

 当たり前に会話ができて、生物としての違いがあってもそれを冗談にして笑い合うことができる。

 同じように生を営んでいると、思い知らされる。


 ただそれは、人族の生活の当たり前との決別でもあった。

 覚悟してやってきて、そうして〈オラクル教〉の熱心な信者でなかったからこそ、比較的衝撃も少なく受け入れている。


 ハルカはこの旅の間で段々と柔らかくなっていくヨンたちの表情を見つめてきた。

 そして逆に、ヨンたちでさえ、受け入れるのにそれなりに時間がかかったこともわかってしまった。


 生まれた頃から教え込まれた価値観を覆すというのは、並大抵のことではない。全体に破壊者たちがこのように分かり合えると周知することよりも、どうやって〈オラクル教〉の指導側との相互理解にいたるかが大事なのだ。

 幸いなことに少し前に、ソリスという柔軟そうな枢機卿と知り合うこともできた。

 改めてコーディと話をする時期なのかもしれないと思いながら話を聞いているうちに、日は沈み、辺りはゆったりと暗くなっていった。


 食事を終えて一応夜の番に立っている間、ヨンがハルカの方へ近づいてくる。

 手前には半分吸血鬼のイーストンが座っており、ヨンはそこで一度足を止める。


「……イースはあまり目が光ったりしないのか?」

「するよ、力を使うとね」


 身体強化をすると、イーストンの目が怪しくぼんやりと光る。

 ヨンはそれを怖がるでもなくじっと瞳を覗き込み、「はー、綺麗なもんだな」と呟いた。

 それを聞いていたコリンが、ぷっ、と息を噴き出して笑う。


「なんだよ」

「いや、なんだか口説いてるみたいだなーって」


 コリンがけらけらと笑い、イーストンもそれにつられて口元に手を当てて笑う。


「うるせぇ、気になっただけだって。勘違いするなよ?」

「しないよ、別に」

「……なんか今日は調子狂うな。んでだ、ハルカ」

「はいなんでしょう」


 ハルカの近くにやってきたヨンは、その目の前に指を突き付けて難しい顔をする。


「お前、なんでゼスト様そっくりなエノテラと同じ顔なんだよ。まさか神様だとか言い出さないだろうな。言っても俺はもう驚かねぇぞ」


 何を言ったって受け入れるという覚悟と、もう驚いてやらないぞという意地のようなものが見え隠れするヨンの宣言に、ハルカも微笑ましい気持ちになって僅かに頬を緩めた。 

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― 新着の感想 ―
ゼスト様にそっくりなお方に、「お前」呼ばわりかよ!!
『あー、実は私、異世界から来た元おじさんなんです。ヒトだったんですよ』
ハルカ「とんでもねぇ、あたしゃ神様だよ!」
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